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浜辺の歌の話

気が付けば、9月最終週。
毎日楽しみにしていた「やすらぎの郷」と「ひよっこ」が終わってしまう。
寂しい……。
10月何を楽しみに生きて行けば……とか言いつつ、きっと新しいドラマを楽しみに生きて行くのでしょう。

それはさておき。
何週間か前の話ですけれども、「やすらぎの郷」で八千草薫さん演じる姫が、死ぬ直前、浜辺で着物を引きちぎりながら「浜辺の歌」を口ずさむと言うシーンがありました。
恥ずかしながら、私、この歌のタイトル知らなかったのです。
それで、ぼんやり「なんていう歌なのかな」と思いつつ、調べもしなかったんです。

でも、9月8日に横浜の「なごみ邸」で開催されたライブペインティング兼コンサートを観に行った時、ピアニストで作曲家の上畑正和さんが、オルガンで「浜辺の歌」を弾いてくださったんです。
その時に初めて「浜辺の歌」と言うタイトルを知って、上畑さんのオルガンなのに、八千草さんの歌声が聞こえて来る気がして、浜辺で、着物を引きちぎっている姫がいるような気がして、姫の過ごして来た何十年と言う時間を思ったら、涙が出てきてしまいました。
姫は、人生で唯一愛した「先生」を戦争で亡くし、それでもその思いひとつを抱きしめて生ききったのです。

人生ってなんて長くて、なんてあっという間で、なんて豊かで、なんてちっぽけなんだろう、と思って、涙が止まりませんでした。

姫のように、別に特別忘れられない人がいるわけでもないのに、愛して愛してやまない人がいるわけでもないのに、どうして私は姫に共鳴しているのだろうって不思議で仕方ありませんでした。

そして、ここまで生きてきて、姫のように愛する人の一人もいない自分の人生の浅はかさに絶望してまた泣けてきました。

人は、愛する人がいなくても、人を愛すると言う想像はできるようです。
それって、本能として「愛する」と言う気持ちを知っていると言うことなのでしょうか。
難しいことはわかりませんが、私はきっと「浜辺の歌」を聞くたびに、「やすらぎの郷」と姫のことを思い出すのでしょう。

ドラマの力、脚本の力、芝居の力って、本当にすごいなって思うシーンでした。

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