おれのかーちゃんのがいちばんうめぇ。
いつのまにか「おにぎり」は、「コンビニで買うもの」になったらしい。
かのセブンイレブンでは、年間22億個ものおにぎりが売られているらしいし、コンビニ業界全てを合わせれば、年間数十億個ものおにぎりが販売・消費されているという。
およそ40年前、70年代後半にコンビニおにぎりは誕生したらしい。生まれたころにはすでに店頭に並んでいたということで、自身も幼少期からお世話になることはあった。
パリパリの海苔、絶妙な硬さ、味のバランス、豊富なバリエーション・・・。家庭のものとは、一味違った、再現することは難しい作品だ。
「コンビニおにぎり」は、業界が産み出した偉大なるカルチャーの一つであろう。
我が幼稚園では、毎週金曜日を「おにぎりの日」と定めている。粗食としてのコメの味、家庭の味を味わうように、また園外保育をしても気軽にどこでも食べられるという理由からだ。
おにぎりは、たとえ、同じ釜の飯、海苔を使って作っても、その人の握りや塩加減、大きさなどによっても味が変わってくる。いわば、作り手の味がよく伝わるもので、かあちゃんおにぎり、とうちゃんおにぎり、ばあちゃんおにぎりと作り手それぞれの味があっていい。
今日は、とうちゃんが作ってくれたという、爆弾おにぎり。
年長組ともなれば、自分で作ってみたという子もでてくる。
具もそれぞれ。定番のゆかりやタラコファンの子から、からあげやウインナーが好きな子、ミートソースなどの変わり種で攻めてくる子。近頃は、こだわりの塩で握った塩おにぎりも人気のようだ。味噌おにぎりに海苔の代わりに大葉でくるんだのが大好きという渋めの子もいた。
と同時に、コンビニおにぎりを持参する子も近年現れた。特別禁止しているわけでもないし、それも一つの選択肢とも思うのだが、上記のような思いを持っている自分からすると、複雑な思いも起こる。まして、「開けれないから開けて」なんていわれるとさらになんだかなぁとなる。
以前、子どもたちが毎日のようにコンビニに行くというので、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、とかいろいろコンビニあるけど、どのコンビニのおにぎりが一番うまいと思う?と質問したことがあった。
すぐさま答えた男の子の言葉を忘れたくない。
「おれのかーちゃんのが、いちばんうめぇ。」
食を取り巻く環境は、劇的に変化している。近い将来、家庭では料理するということ自体が少なくなるのでは、とさえ思うことがある。おふくろの味がコンビニの味という子供たちがでてくるのもそう遠くない。いや、現にそうなっている人たちもいるだろう。
多種多様な世の中で価値観も様々。どんな社会になっていくのかも想像がつかないけれど、それでも、生きることを楽しむ生き方を、いつまでも追い求めたい。
ダーウィンの言葉にこんなものがある。
生き残る種とは、
最も強いものではない。
最も知的なものでもない。
それは、変化に最もよく
適応したものである。