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こそだてにおける良い雰囲気の作り方
「人に頼ることは恥ずかしいことではない」
先日、こそだて公演の際に、わたしが参加者の父親たちに伝えたことばです。
人に頼ることは、こそだてにおいてプラスに作用することがおおいのですが、「男らしさ」を求められてきた現代の父親世代にとっては、「人に頼る」ことのハードルが高いように思います。
現代の父親のこそだて環境課題と、「人に頼る」ことのたいせつさについては前回の記事をご覧ください。
では、なぜ「人に頼る」ことがこそだてにおいてだいじなのか。
今回はそのことを具体的な例を挙げながらお話しようと思います。
また、「人に頼る」こととセットで行ってほしいおすすめアクションプランもあります。
最後まで読んでいただければ、こそだてがすこしラクに、たのしくなるきっかけが見えてくると思います。よろしければおつきあいください。
「人に頼る」ってこんなかんじ
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では、今からあるシーンをイメージしてもらいます。
あなたは、ひとりで生後6か月ぐらいの赤ちゃんといます。
あなたは赤ちゃんを寝かせつけようと抱っこしている。しかし、赤ちゃんは30分経ってもまったく眠らず泣いています。
あなたはそれでもがんばって赤ちゃんをあやして、なんとか1時間後に赤ちゃんを寝かせつけることに成功しました。
ここで、その子の周りにある笑顔の数を数えてみてください。
もしあなたが1時間かけてやっと寝たらうれしくて笑顔になっているかもしれませんが、1時間も抱っこしていたら喜びよりも、「疲れたなぁ」という倦怠感のほうが上回っているかもしれませんね。
その時の笑顔の数は「1」もしくは「0」です。
では、次に別の場面をイメージしてみましょう。
同じシチュエーションであなたが赤ちゃんを寝かせつけようとしています。
たまたまそこに2人の大人が近くにいたとします。
30分抱いても寝ない赤ちゃんと困っているあなたを見て、ひとりが代わりに抱っこをしようかと提案してきます。そこであなたはその人に頼って赤ちゃんを抱いてもらうことにしました。
すると、その人は赤ちゃんを縦に抱きはじめ、しばらくすると少しずつ落ち着いてきました。しかし、まだ赤ちゃんはモゾモゾと動き落ち着きのない様子です。
そこで、近くにいたもうひとりの人が赤ちゃんを抱くことになりました。
その人は赤ちゃんが泣いているのはおむつが濡れているからだということに気づきました。
すぐにおむつを替えてあげると、赤ちゃんは無事に眠りにつき、あなたはその二人と喜びあいました。
さて、この時の赤ちゃんの周りの笑顔の数はいくつでしょう?
そう、3つになります。
はじめのケースでは「1」もしくは「0」だった笑顔が、あなたが人に頼ることによって「3」にまで増えました。
たった少しの差ですが、このちいさな変化が子どもにとはとてもおおきいのです。
子どもは雰囲気を食べておおきくなる
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子どもは赤ちゃんであってもよくまわりを見ています。
まわりがあんしんできる環境であれば、子どもはどんどん冒険しようとします。
新しい玩具で遊んだり、はじめて見た虫に触れようと思ったり、はじめてあった人とかかわろうとしたり。
あんしんできる雰囲気が環境のなかに内包されていると、好奇心が湧き、新しい発見から学びをえることができます。
しかし、固い雰囲気の中で過ごしていると、子どもはあまり冒険しようとしません。その分、好奇心も育たないですし、学びも限定的になりがちです。
子どもは雰囲気を食べておおきくなる。
いかに子どものまわりに良い雰囲気を作れるかが、こそだてにおいてとてもだいじなのです。
では、どうすれば良い雰囲気をつくることができるのか?
それは子どもの周りに笑顔を増やすのです。
では、どうすれば笑顔が増えるのか?
勘のいい方はお気づきかもしれません。
そう、「人に頼る」ことです。
「人に頼る」ことは実は子どもの発達を後押ししてくれるのです。
こう考えると、人に頼りたくなってきませんか?
父親だからしっかりしないといけない。
デキる父親でありたい。
家族の期待に応えたい。
そう思うのはとても素敵なことです。
ですが、人に頼ることもおなじぐらいたいせつなことなんだと心の片隅に覚えておいてほしいです。
あなたはうまくできないことがあったとしても、立派な父親です。大丈夫。
思ったよりもあなたを助けてくれる人はまわりにいるものです。
すこしずつでいいので人に頼ってみましょう。
恩を送ろう
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ここまで、「人に頼る」ことのたいせつさをお話してきました。
ここまでで、もしかしたらこう思われた方もいるかもしれません。
「そんなに人に頼ってばかりでいいの?」
「それって父親としての責任放棄じゃないの?」
たしかに、親としての責任を考えるとそう感じることもあるかもしれません。
ですが、わたしはこの「人に頼る」ことにある行動をプラスしていくことをすすめています。
それは
「恩を送る」
ということです。
もし自分が助けてもらったら、その恩を複数の人に返していきましょう。
先ほどの例でしたら、赤ちゃんの寝かせつけ方を職場の同僚、友人、子育て支援センターで出会った新米パパなどに教えてあげましょう。
そうすれば、あなたが受けた恩が何倍にも広がって社会に還元されていきます。
わたしは、父親のこそだて支援において、「人に頼る」「恩を送る」の流れをつくることが最もだいじだと考えています。
この流れが社会にうまれると、もっとこそだてがたのしくなると思います。
しかし、現状では父親が「人に頼る」ということがむずかしい現状にあります。
詳しくお話しするとながくなるので、父親のこそだて環境についての過去の記事をご覧ください。
父親が人に頼れて、その恩を社会に還元できるようなこそだて環境ができると、父親の周りの母親も子どもも地域も、もっとゆたかになると思います。
なので、まずは父親が人に頼れる雰囲気をつくる。
そのためには、父親が自分のことを話せる場も必要だと思います。
父親のためのこそだてサロン「Dadlogue」
「まず父親がじゆうに話せる場が必要だ」
父親が「人に頼る」きっかけとして、こそだてパパのわ『ちくわ』は新しいプログラムをスタートします。
父親のためのこそだてサロン「Dadlogue(ダッドローグ)」です。
「Dadlogue」では、夜に父親たちが集まって、こそだてや自分のことをコーヒーを飲みながら対話をしていきます。ちょっとした特別感も味わいたいので、リラックスできるカフェのような落ち着いたスペースで実施します。
「Dadlogue」では子どもは参加せず、ゆったりと父親と進行役のスタッフのみで行います。
あまりこういったイベントで父親むけのものは見たことがなく、わたしたちも試行錯誤しながら開催の準備を進めています。
「父親たちの話を聞こうとしている人たちがいる」ということだけでも開催する意義はあると思っています。当日は会場に来てくださった方との出会いをだいじにして作り上げていきたいと思っています。
たくさんの方のご参加をお待ちしています。
参加ができない方も近くの方に周知いただけるとうれしいです。
詳細は以下のチラシの通りです。
参加申し込みはこちらからできます。(オンライン開催ではありません)
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最後に
前回に続いて「人に頼る」ことにフォーカスをあててお話してきました。
いかがだったでしょうか?
なかなか「人に頼る」ことはむずかしいこともありますが、やってみると案外すんなりできることもあります。わたしも以前はそうでした。
もっとこそだてがたのしくなるような雰囲気を子ども達のまわりに作っていけるといいですね。
それでは今回はこのあたりで
さよなら あんころもち
またきなこ!!
こそだてパパのわ『ちくわ』
坪田 しょうへい