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境界。
薄暮、という時間帯が好きだ。昼と夜の境界が溶けて、全てが曖昧になる感じ。あの絶妙に暗い癖に明るい、あの時間の匂いがたまらない。
つい2週間ほど前に大学を卒業して、今日から社会人になる。とは言いつつもそんな実感は全くない。
昨日は遠足前の小学生みたく、よく眠れなかった。それが緊張からなのか楽しみからなのか、日が上り始めた公園で考えてみたけど、結局わからないままだった。
ただ一つわかっていることは、ただでさえ目立つクマが、より際立った状態で社員証の写真を撮らないといけないということだった。この先しばらくクマ顔の社員証をぶら下げて社会人生活を送るのはちょっと残念な気がする。
ひと様に見せられた容姿ではないと自分では思っていても、まだマシな状態であってほしいと思うのは至って普通の願いだと信じたい。
そういえば、朝の満員電車に揺られるのは大学一年生ぶりだな、と思った。その頃から何か変わったかと言われれば、おでこと目尻の皺が増えて、自分への期待が減ったぐらいしか変わっていない。
改めて言おう。今日から社会人になる実感が全くない。こんなにもぬるっと自分の肩書きだけが変わっていくものなのか、もっと劇的な変化があるモノなんじゃないのか、そんなふうに思ってしまう自分もいる。
田んぼに囲まれたあの田舎の実家で思い描いていた社会人はこんな感じではなかった、ということだけはわかる。あの頃はまだ自分が凡人ではないと自分に期待が持てていた。あの若々しさと無知が今となっては羨ましい。
でもこうも思う。これまでどのライフステージにおいても、境界なんていつもぼんやりしてて滲んだ絵の具みたいだった気がする。
自分が「大人になった」と実感するのは一体いつになるだろう。その頃には過去の自分に胸を張っていられる自分でいたい。そんなことを朝の千代田線に揺られながら思った。