みんな自分のせいで死にたくないし殺したくないしそう思われたくない
コロナコロナうるさいですね。
日ごろ日本人は平和ボケしてるだなんだ煽ってる皆さんが、未知のウイルスを正しく怖がることも出来ず徒に死を避けようとしているところを見ると、君たちの方がよっぽど平和ボケした日常を送っていたんだなあと感心せざるを得ません。
僕は14の頃から、人はいつだって死ぬし、誰だって死ぬと思い続けて生きています。そして同時に、そうだからこそ、人は案外死なないし、残念ながら死んでくれないことも実感し始めています。憲法が自分の生活やら命やらを守ってくれているなどと思ったことは一度もないし、自分が自分の力で今日と明日を生き抜いているとも思ったことはありません。ただ今日も「死ななかったし死ねなかった」と思いながら眠れない夜を終えていくだけです。
自分のことが可愛くて仕方のない、自分こそは幸福に生きられることを信じて疑わない、だけれどもどんなに恵まれていても自分を不幸側に置いておきたい方々は、突然目の前にせり出してきた「死」という存在自体に戸惑っているように見えます。毎日の出来事に忙殺されているのか、されているつもりになっているのかは知らないけれど、今日を生きていることを当然視して、あれもこれもしたい自分はあれもこれも出来ないと駄々を捏ねていれば良いと思っていたところに、突然敵襲がやってきたようなイメージでしょうか。あまりに哀れで笑ってしまう。
どうせ人は死ぬ、けっこう思いがけず死ぬ、ということを、忘れきってしまっていること自体が現代の最も罪深い平和ボケだと思うんですよね。この勘違いが産みだすものは何かと言うと、「死ぬことは悪いことだ」という価値観です。そんなことしたら死んじゃうよ!!!などと言いながらその実、そんなこと起こるはずないだろうと思っている人間がどれほど多いことだろう。そして実際大半は生き延びてしまうから、自己を否定するには至らないんでしょうね。
人が突然死を怖がるのって、何をすればその死を防げたのか、分かってしまうことが悔しくて、そういう思いをしたくないからだと思うんです。死はどこまでいっても、「どうしてそうなったのかは分からない」方が受け入れやすくて、どうして死んだのか分からないまま死んでいきたいと、結構誰もが思っている。それこそが死に対する畏れだし、その分からなさ自体に神が宿るわけです。しかし医学が発達して情報が爆発して、様々なことがわかるようになってしまったから、どんどん死は、畏れるものではなくて怖がるものになってしまった。これは大変に息苦しい。自らの生き死にこそが自己責任的で、全くの個人競技と化してしまうからです。
そして世論は少しだけ、自分の知覚できる範囲だけ、その性質を広げていく。すなわち、身の回りの人が死んだのは自分のせいだと思いたくない。しかしあらゆることが分かってしまうため、今度は責任の所在を他に探し始める。本当は人が死ぬことに責任など生まれないはずなんです。なぜなら人は死ぬから。でもそれを忘れてしまったから、みんな、人間が死ぬと、それが自分の責任ではない在処を探し始めるのです。それが天災だろうが人災だろうが政治だろうが社会だろうがどうでもよくて、結局は、「自分のせいじゃなけりゃなんでもいい」んでしょう。ほんとキツいわ。
責任を求められやすい大きな枠組みになればなるほど、過剰にそれを避ける行動を続けなければならなくなってくる。これはあまりにも悲しいことです。ついには実体のない被害者の責任を逃れるために、みんな何もしなくなる。そして何もしないことが出来ない人たちが騒ぎはじめる。誰が悪いんですか?誰のせいなんですか?そうやって探し求める。自分がそうであることは自分のせいじゃないと思いたいがために。そして最悪の展開はぐるぐると、ループを続けていく。
科学や医学を何も知らないのに、社会や政治を何も知らないのに、自分に心地の良い情報だけを手に取って手に取ってたくさん抱え込んで周りが見えなくなって、なおも自分以外に、本当は存在しない「責任」を擦り付ける。そこに真実などひとつもなくて、しかしそれこそが現実になってしまっている。そして酷いことに、ひとたびブームが過ぎ去れば、そうしていたことも忘れてしまうんです。そんなに死が身近に迫っていたと思っていたことすら忘れてしまうんです。そして次の脅威が訪れた時、全く同じことをして、中身のない奔走を続けるのでしょう。
一人で走っているならいい、しかしこんなにも沢山に走られると邪魔ですよ。騒ぐ前に黙って厚生労働省のホームページを見てください。肺炎の代表的な症状を読んでください。体調が悪ければ自分の症状と見比べてください。不安なら直接医者に行くのではなくて、各自治体が設置した相談センターに電話してください。災害時にこそ、規律を守って欲しい。正しく静かに畏れて欲しい、未知を、無知を。
人間は自然に抗うことは出来ない。そんな当たり前のことを、少しでも思い出して欲しいなあと思っている今日この頃です。
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