関西吹奏楽コンクール2022 高校の部A(1~3ブロック) 感想記録
8月28日(土)に行われた関西吹奏楽コンクール 高校の部Aについて、第1~3ブロックまで現地で鑑賞したので、これも備忘録的に感想を残しておく。会場でパンフレットに所感を走り書きしているのだが、これが少し恥ずかしい。すべてを頭にとどめられれば良いのだが。
各団体文末のA/B/Cは僕の好み。(第4ブロックを聴けなかったので絶対評価)団体名の横に金/銀/銅賞。
なおこの文章はもちろんすべての結果を知った後に書いているが、各校に対する感想はできる限り、その当時に感じたテンションを記している。
第1ブロック
ともかく会場が綺麗で感心した。これが姫路市の財政力。
席はかなり端のほう、まずはホール全体の響き方に慣れたいが・・・。
1.京都府 京都両洋高等学校 銀賞
課:Ⅲ 自:クロスファイア・ノーヴェンバー22 作曲:樽屋 雅徳
課題曲は非常に落ち着いてやわらかい雰囲気で好感。楽譜上では同じなフレーズも、色味をつけており考えられている。
自由曲への流れも良い。ところどころボロが出そうになるも全体的な雰囲気がとても上品。朝一でいい基準になった。これが銀賞ならレベル高い1日。(B)
2.京都府 洛南高等学校 銅賞
課:Ⅰ 自:組曲「火の鳥」より 魔王カスチェイの凶悪な踊り、子守歌、終曲 作曲:I.ストラヴィンスキー 編曲:G.デュカー
昨日の浜の宮中学でも思ったが、少人数だとどうしてもミスが露骨に目立つ。音の入りや処理が全体的に甘い。しかしそれを押して余りある独自性。これが仕上がったらどういう形になるのか・・・。池内先生の頭の中には何がある?
この人数で火の鳥はさすがにきつい。曲のバランスが崩れかける場面もあり、つらさのある演奏。しかしそれを押して余りある独自性。少なくとも2009年とは全く違う曲になっているのが面白い。エンタメ。(C)
3.大阪府 近畿大学附属高等学校 金賞
課:Ⅲ 自:われらをめぐる海 ~レイチェル・カーソンに捧ぐ~ 作曲:阿部 勇一
両洋とは対照的に、非常に快活で硬質な課題曲Ⅲ。元気はいいが、少し粗いか?音のきらめきは秀逸。
こちらも自由曲への雰囲気のつなぎがいい。終始圧倒的なエネルギー感で押し切った形。一昔前の東関東勢のような爆音演奏とも少し違うが、少し開き気味な音色で作り切った。(A)
4.奈良県 天理高等学校 銀賞
課:Ⅰ 自:ハンガリー狂詩曲 第2番 作曲:F.リスト 編曲:井澗 昌樹
木管の音色がどこか少し硬い。すべての音の入りが少しだけ甘く感じる。しかしこの課題曲にあるミニマルミュージック的な積み上げ感は非常に丁寧に作られており感心した。
ダイナミックなつくりの自由曲。少し綻びも見えたが、後半のユニゾンは圧巻。両洋と同じ色になりそう。(B)
5.大阪府 箕面自由学園高等学校指揮 銀賞
課:Ⅱ 自:巨人の肩にのって 作曲:P.グレイアム
課題曲の難易度が低いだけに、音程や響きに若干若さがあり、評価が分かれそう。
自由曲も同様に、響きが少し開き気味。大阪でもこの音色感が流行りだしているのか?個人技パートはいずれも見事。コンクール経験者としてはただただ尊敬。(B)
6.兵庫県 尼崎市立尼崎双星高等学校 金賞
課:Ⅱ 自:楽劇「サロメ」より 7つのヴェールの踊り 作曲:R.シュトラウス 編曲:齋藤 淳
サックス主体の木管アンサンブルに新鮮味を感じた。舞台真ん中の男子君が響きをコントロールしている感じ。ただテンポ感はどうだったか。
つなぎの部分に少し違和感があるものの、全体の響きはとても良い。オーボエがとても上手。全体的にそつのない演奏。(B)
第2ブロック
今度は2階前方。なんと隣が審査員席という超良席。しかしこのブロックはほとんど明浄学院のためのブロックなんだよな、と思いつつ。第1ブロックのレベルが全体的にB+な感じだったのもあり、このブロックの団体は少しきついと思う。
7.滋賀県 滋賀県立膳所高等学校 銅賞
課:Ⅴ 自:月下に浮かぶひとすじの道標~3.11超克の祈り~ 作曲:樽屋 雅徳
はじめての課題曲Ⅴだが、こんな曲だったか?おそらくまだ曲として完成しておらず、この時点で評価は終わってそう。
自由曲も鳴りが少し非力か。第1ブロックがかなり高水準だったため、はっきりと見劣りしてしまう。(C)
8.京都府 京都共栄学園高等学校 銅賞
課:Ⅱ 自:マードックからの最後の手紙(2021年版) 作曲:樽屋 雅徳
昨日の中学の上手なところくらいの演奏。テンポ音程ともにあと一歩。シンバルはあれでいいのか?楽譜が悪いような気もする。
マードックを高校でやって、いい評価もらうのってかなりの完成度が必要だと思う。その点、この「2021年版」を初めてコンクールで演奏した玉名女子なんかは素晴らしかった。あれが基準になってしまうのはつらい。(C)
9.和歌山県 和歌山県立向陽中・高等学校 銅賞
課:Ⅲ 自:ラッキードラゴン~第五福竜丸の記憶~ 作曲:福島 弘和
この課題曲、中間部が退屈に聴こえてきてしまうとジエンド。一本調子になってしまい、リズム感が失われてしまう。
自由曲は休憩・・・(すまん)(C)
10.兵庫県 兵庫県立西宮高等学校 銀賞
課:Ⅴ 自:クロスファイア・ノーヴェンバー22 作曲:樽屋 雅徳
Ⅴとしての輪郭は見えた。最低限でもこれくらいまで作ってこないと審査員も困ってしまうのではないだろうか。
自由曲は両洋より少し陽キャ的な演奏。指揮者や学生の性格が如実に表れていそう。僕は両洋のほうが好きでした。(B)
11.滋賀県 立命館守山高等学校 銅賞
課:Ⅱ 自:バレエ音楽「青銅の騎士」より エフゲニーとパラーシャ、踊りの情景、偉大なる都市に捧げる讃歌作曲:R.M.グリエール 編曲:石津谷治法
結構独特な配置で面白い、が演奏は平凡。洛南と同じ色になりそう。
自由曲も、その配置のおかげでまっすぐ音が飛んできた。このホールの正解がまだつかめない。(C)
12.大阪府 明浄学院高等学校 金賞
課:Ⅱ 自:吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」 作曲:J.マッキー
京都共栄の時に感じた打楽器への違和感と同じ違和感を小野川先生も感じたのではないか。ここまで昨日、今日と聴いてきた中で断トツに「打楽器の音を絞っている」。スネアを中心に、すごく繊細で神経を使った演奏。しかしそれにより低音パートとの連携が怪しくなってしまった。これは代表危うい。
自由曲の響きはまだ発展途上。メロディーの作り方はとても良い。近年の日本人作家曲とは一線を画した音作りに挑戦した意欲を買いたいが。(A)
第3ブロック
今度は3階席。となりの男性は結構玄人っぽい。前半の所感を一生懸命同伴の女性に伝えていたが、あまり伝わっていないようだ。尼崎高校の音が好きらしく楽しそう。
そして目の前に明浄の生徒と小野川先生!また一回り小さくなったんではないか・・・?この間2011年の映像を買って見たら、先生の恰幅がよくてびっくりしてしまった。あの課題曲を本人、どう思っているのだろうかと気になりながら・・・。
13.滋賀県 滋賀県立石山高等学校 銅賞
課:Ⅳ 自:彩雲の螺旋 -吹奏楽のための 作曲:中橋 愛生
全国大会で正解のⅣを聴けるのを楽しみにするしかない。
自由曲も、中橋サウンドを作り切れなかったか。個人技はとても良い。全体のスケール感に課題が残る。(C)
14.兵庫県 甲子園学院中学校 金賞
課:Ⅱ 自:バレエ音楽「中国の不思議な役人」 作曲:B.バルトーク 編曲:佐藤 正人
課題曲は良くも悪くも卒なし。楽譜自体に課題がきっとあるのだろうから、悪く聞こえない、というのがこの曲は重要なのかもしれない。
自由曲は迫力満点。細かいパッセージは怪しいが、どこまで許容されるだろうか。「役人」ってこうやって作って金賞取れる曲なんだよな・・・。(B)
15.兵庫県 尼崎市立尼崎高等学校 銀賞
課:Ⅱ 自:歌劇「トゥーランドット」より 作曲:G.プッチーニ 編曲:後藤 洋
これまでになかった豊かな響きの演奏。テンポ感のゆらぎやパッセージの綻びがどのように評価されるか?またラストの処理も斬新。羽地サウンド顕在。
自由曲も同様にとても品のあるサウンド。前団体が曲に合わせいい意味で下品に鳴らしていたからとても対照的。響きで個々の力をカバーしている印象。しかしさすがに最終盤は疲れが見えたか・・・。とても好印象だが惜しい。(B)
16.大阪府 浪速高等学校・中学校指揮 銀賞
課:Ⅲ 自:バレエ音楽「中国の不思議な役人」より 作曲:B.バルトーク
編曲:萬波 弘和
この課題曲で音程が怪しいと一気に終わってしまう。整理しきれていない印象。
自由曲も甲子園に比べて力感が不足している。音の入りや切りって大事なんだなあと、昨日今日で強く感じさせられた。(C)
17.大阪府 大阪府立淀川工科高等学校 金賞・代表
課:Ⅱ 自:大阪俗謡による幻想曲 作曲:大栗 裕
まず楽器搬入、セッティングから異様な雰囲気。生徒も生徒だし客も客。みんなの期待と不安がホール全体に充満した状態でいつもどおり、審査員ガン見静止。最初に鳴る音がどんな音か、それで代表が決まると思った。
結論、素ん晴らしい!!いい音、これに尽きる。確かに音程は怪しいが、あまりに響きが良すぎてなにも気にならない。これ配信だとどれくらい伝わるんだろう・・・。僕の中では淀工が一音目を鳴らした瞬間「淀工>明浄」となり、代表枠がひとつ決まった。緩急も素晴らしい。これで全国大会では音程が合ってくるんだろうから恐ろしいことになるぞ。
「俗謡」はNEO淀工。とくに最初2分間はこれまで無かった解釈を取り入れており、新指揮者の気概を感じる。もちろん丸谷リスペクトは随所に感じられ、きっと丸ちゃんは1ミリも満足していないのだろうが、それにしてもやはり響きがかっこよすぎる・・・。10余年前に聴いたあの頃の煌びやかな、下品で粋な「大阪俗謡」が確かに、ここに帰ってきた!!(AAA)
18.奈良県 奈良県立郡山高等学校 銅賞
課:Ⅲ 自:ワンス・モア・アントゥ・ザ・ブリーチ 作曲:S.メリロ
本当に可哀想。淀工が帰って行った後も会場は騒然としていた。誰も話していなくとも、この課題曲が流れている間、みなの頭には俗謡がリフレインしていただろう。
メリロの曲はアメコミっぽくてとても好きなんだが、これ難しいな。いつか名演が聴けるだろうか。(B)
【全体の感想】
全体のことをまとめようと思ったが、とにもかくにも淀工の音が素晴らしく、それを堪能できたというのが一部であり全部だった。そしてこの段階で僕は「明浄だいじょうぶだろうか」と心配していたのであるが、その心配は残念ながら杞憂ではなかったのだった。
高校は金賞を取れる団体の絶対条件として「音色がクリアであること」というのがあるのですごく分かりやすい。その点さすがに近大附属、明浄学院、淀川工科はそれぞれオリジナリティのある「クリアな音色」を持っており、聴き映えも良い。
ちなみに全国大会の現地に用意された席は各部「1,200席」ずつ。またえらい倍率になっていくんだろうなあ・・・。今回聴くことのできなかった大阪桐蔭、大阪仰星を、願わくば現地で楽しみたいが、かなわなくとも必ず配信で。
それにしても今年はなんだか、10年前に戻ったような自由曲の選曲だったなあ。全国的にもそんな流れができているようだし、懐古おじさんにはありがたいですね。
(以下、チケットを取れなかった第4ブロック)
19.和歌山県 和歌山県立星林高等学校 銅賞
課:Ⅰ 自:マードックからの最後の手紙(2021年版) 作曲:樽屋 雅徳
20.大阪府 大阪桐蔭高等学校 金賞・代表
課:Ⅰ 自:宇宙の音楽 作曲:P.スパーク
21.京都府 龍谷大学付属平安高等学校 銅賞
課:Ⅱ 自:アニマ・メア・ルーチェ 作曲:福島 弘和
22.大阪府 東海大学付属大阪仰星高等学校 金賞・代表
課:Ⅲ 自:ドラゴンの年(2017版) 作曲:P.スパーク
23.兵庫県 滝川第二高等学校 金賞
課:Ⅱ 自:いにしえの時より 作曲:J.ヴァンデルロースト
24.兵庫県 兵庫県立加古川東高等学校 銀賞
課:Ⅲ 自:宇宙の音楽 作曲:P.スパーク
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