#2 地方での非心理的安全性がもたらすもの
心理的安全性が低いと何が起こるのか?
心理的安全性が低い場合について、エイミー・C・エドモンドソンは著書「恐れのない組織」の中で、医療現場や航空機、スペースシャトル事故。フォルクスワーゲングループやウェルズ・ファーゴ銀行の不正スキャンダルなどを例に挙げており、それら事故やスキャンダルは心理的安全性が低い環境も原因の一つにあるそうです。
例えば、
・医師の医療ミスに看護師が気づいていても指摘できない。
・離陸前の不安事項を発言できず起きてしまった航空機事故。
・厳しい基準を達成したと錯覚させるための不正測定
・高すぎる目標を達成するための不正行為
など。
これらの事故やスキャンダルは規模が大きすぎて、僕たちとは関係なさそうな事例ですが、これらを引き起こした心理的安全性の低さは僕たちにも関係があります。
地方で心理的安全性が低い場合に起こることは?
心理的安全性では無い状態とは健全な衝突が起こりにくい環境です(#01 地方にも必要な「心理的安全性」とは)。先の事例でも、健全に意見が言える組織であれば起きなかったかもしれません。
地方で心理的安全性が低い場合に起こるこりそうなことを考えてみたいと思います。(地方に限ったことではないかもしれませんが。)
まず前提として、現代の変化の激しい時代をVUCAと呼ぶそうです。Volatility(不安定性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった略称です。VUCAは都市で起きていることではなく、地方にも関わることです。
・変化の激しい時代に選択肢1択
以前は経営者一人の手腕で企業が存続していくことはできたかもしれません。しかし現在は多くの意見を取り入れて、最適な手段を取る必要があります。多様性が重要だと叫ばれている背景には価値観やアイディアを豊富に交差させた方が良い。というところにもあるのです。
地方企業の多くは経営者の判断で方針が決まります。経営者を取り巻く環境で健全な衝突が起きない場合、変化に対応する判断は経営者の価値観やアイディア一択になります。これは経営者が判断することが問題というわけではなく、意見やアイディアが出ない心理的安全性が低い環境では、経営者の判断(前提)に誤りがあった場合、リスク回避の選択肢が少なくなることが問題なのです。
・「問題」が起きた時にすることが「助け合い」でなく「責任の追求」
心理的安全性によって「問題」が起きた時の対応も変わります。心理的安全性が低い組織で多くみられる対応として、問題が起きた時に「責任」が誰にあるかを追求しようとします。
しかし本来、問題が起きた時にするべきことは助け合って、問題の解決と次回の予防策を講じることのはずです。
心理的安全性が低く責任の追求をしすぎる文化がある場合、問題が起きた時、隠してしまう可能性すらあります。
組織として重要なのは、責任を追求することなのか、助け合うことで早い解決や組織として学習すること。どちらでしょうか。
・新しい技術やサービスは…
挑戦することはただでさえ怖いことです。心理的安全性が低いとなおのことです。多くの技術やサービスがリリースされる昨今において、挑戦しないことにもリスクが伴います。
挑戦しようとする時、挑戦している時、挑戦し終わった時。健全な衝突が起こる環境を作ることはVUCAの現代においてとても重要なことです。
地方の特徴として「出る杭は打たれる」と言われたりします。僕たちに出る杭を打っている暇はないはずです。
・グローバル化は知らないとこで起きているわけではない
社会の変化の中で起きていることとしてグローバル化があります。
これは日本と世界だけでなく、地方と全国(世界)。とも言え、今後は多くの優秀な人や多様な価値観が交差することになる思います。
心理的安全性はこれから地方に流入するであろう、多様な人を活かせるかどうかにも関わってきます。
多様性は遠心力になります。しかし遠心力は求心力がないと離散してしまいます。
組織の求心力として、心理的安全性は重要な一つの要因になり得ます。
非心理的安全性が地方に与える影響は他にもあると思います。
もし具体的なこれって心理的安全性が低いからじゃないか?と思う事象があれば教えてください。
次回は、心理的安全性を作るにはどうしたらよいかについて記載します。
参考図書
参考図書を載せます。
心理的安全性のつくりかた
チームの心理的安全性についてわかりやすく書かれています。
また、エイミー・C・エドモンドソンが海外で行った研究での心理的安全性の因子を日本版に置き換えられているなど、より身近な例として考えられる良書です。
恐れのない組織―「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす
心理的安全性という概念を提唱したエイミー・C・エドモンドソンが書いた本です。
豊富な事例をもとに、心理的安全性がなぜ重要なのか、心理的安全性の低い会社はどんな失敗を起こしやすいのかなど、より深く知れる良書です。
チームが機能するとはどういうことか──「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
心理的安全性という概念を提唱したエイミー・C・エドモンドソンが書いた本です。
「チーミング」(動的なチームワークの活動)という造語で、長期的なチームだけでなく、即席のチームを機能させるためにどのようにアプローチすれば良いか書いた良書です。
宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話
「宇宙兄弟」を例に、4つのリーダーのスタイルと出番をチームの成長段階と合わせて説明されています。わかりやすくリーダー像が分類されており、自分がどのリーダー像に近く、どのようなアプローチでリームを率いることが向いているのかがわかる良書です。
心理的安全性は成長段階の第1ステージ(フォーミング(形成期))に登場します。ページ数は少ないですが、わかりやすくまとめられています。
問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術
高い心理的安全性を担保するためには、「問いかけ」は非常に重要です。問いかけ一つ一つで、相手への印象や引き出される内容は変わってきます。この本は、チームのポテンシャルを引き出す「問いの作法」を学べる良書です。
現実はいつも対話から生まれる
社会構成主義は、心理的安全性を高めるために重要な考え方かもしれません。本書曰く、社会構成主義の考え方は、私たちが「現実だ」と思っていることは全て「社会的に構成されたもの」だそうです。
心理的安全性が低いチームも、心理的安全性が高いチームも、誰か一人の性格のせいでそうなっているわけではなく、社会の中の「対話」から生まれているのです。
より深く心理的安全性を学ぶために、社会構成主義の入門書をぜひ。