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神戸餃子楼の無人餃子店が繁盛する理由を考える

 ある日ポストを空け、チラシの仕分けをしていたら、「無人餃子店開店!先着順でキャベツ1玉プレゼント」という記載が目に飛び込んできた。40個1000円という魅力的な価格と、「無人餃子店」という響きが気になったので、さっそく土曜日に行ってきた。

7月10日(土)10時15分

 どうせなら「一番初めの客」になりたい、と思い、開店45分前には店の前に到着。同じ時間くらいに、スタッフの方が到着して、店内の清掃や、最終的な設備の確認を始めた。やはり「無人」といっても、開店時には人がいるらしい。そりゃそうだ。扉は透明だったので、中の様子は良く見える。冷凍庫にズラリと並べられた餃子。タレも購入できるらしい。蒸し暑い日だったが、不思議と待っている時間が苦痛ではなかった。

7月10日(土)11時

 いよいよ開店。目の前の餃子を1セット取り、レジに向かう。と、金色のピラミッドのような物体が目に入る。どうやらそこにお金を入れるらしい。マジですか。そばには「お釣りは出ませんのでご注意ください」の文字が。どうやら、貯金箱よろしく、そこにお金を入れる仕組みのようだ。ちょうど持っていた1000円札をピラミッドに吸い込ませて、店を出た。

7月10日(土)20時

 さて、買ってきた餃子を食べる時間だ。調理方法は極めて簡単で、フライパンに油をしき、餃子を入れて水を入れて、蓋をして蒸し焼きにするだけ。水がはけたら、強火で2分程度焼いて焦げ目をつければ完成。羽になるので油もほとんど残らず、洗い物も簡単だ。肝心の味は、とてもおいしい!正直、スーパーで冷凍餃子買うくらいなら、無人販売所に駆け込むだろう。焼き加減をマスターすれば、店よりもおいしく食べれるかもしれない。これからも利用すること間違いないだろう。

7月11日(日)11時

 さて、昨日のことを思い出しながら、コーヒー片手にnoteを書いている。軽く調べてみたが、冷凍餃子店は結構ウケているようだ。その理由を、マーケティングの視点から見てみたい。

無人餃子店が満たすニーズ

 当然ながら、無人餃子店が提供する冷凍餃子は、「美味しいものでお腹を満たしたい」食欲にアプローチしているわけなのだが、これについてもう少し考えてみたい。ニーズとは、人々の心の中にある程度普遍的に存在する欲望のことだ。そこから「●●が欲しい」というように具現化されたものをウォンツという。ニーズからウォンツが生まれる過程には、様々な付帯条件が存在する(それは個々人の状況・背景・文脈によって異なる)。その付帯条件を読み解くことは、マーケティング活動において重要なことの一つであり、世の中のトレンドや環境変化は、その付帯条件の重要度を変化させたり、新たな付帯条件を生み出したりする

 コロナ禍で外出の頻度が減り、必然的に外食の頻度も落ちている人が多いだろう。そんな人が「食欲」ニーズを持った際に、おそらくは「最近外食していないし、ちょっとおいしいものを食べたい」「でも手間のかかる調理はしたくない」といった付帯条件が浮かんでくるだろう。その結果「家まで持ってきてくれるデリバリーを頼もう」「気軽に食べられる冷凍食品を買ってこよう」「なんだか今日は魚の気分」「昨日は中華だったから、今日はさっぱりしたものが食べたい」といったカテゴリが連想され、そこから具体的な商品・サービス名だったりブランド名だったりが想起されるわけである。

 話がそれてしまったが、昨今の環境では「家で手軽に美味しいものを食べたい」という付帯条件が大きくなっている。その環境下で冷凍餃子は、一つの有力な手段として挙げられている、ということなのだろう。ではなぜ、数ある冷凍食品のなかから、無人販売所の冷凍餃子が選ばれるのだろうか?いくつか理由はあると思うが、

●神戸餃子楼という、餃子に特化した店舗が作っている(から、美味しいのではないか)という期待
●餃子専門店口コミ人気1位といった実績
●「無人販売」という物珍しさ

あたりが、主な理由ではないだろうか。ここで注意したいのは、「簡単に焼ける」という簡便さは、「冷凍食品のなかで冷凍餃子を選ぶ理由」にはなっていない、ということだ。商品の特長を羅列することを差別化とは言わない。差別化とは、消費者が(あるニーズと付帯条件から)想起するカテゴリにおいて、他ではなくその商品やサービスを選ぶ理由を作ることである。つまり、同じ消費者でも「なんだか今日は中華の気分!」という「中華料理」カテゴリを想起している人にとっては、「簡単に作れる」というポイントは差別化要素になりえる。どのような消費者に対して、どのようなポイントが差別化要素になりえるのかーこれを踏まえたうえで、消費者に提案することが重要だろう。

 もちろん、「ある差別化ポイントがすべての消費者に”刺さる”」ということはほぼなく、様々な人に合わせて、コミュニケーションを変えていく必要がある。今後、無人餃子店がどのような消費者に狙いを定めるのか、注視したい。

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