コトラー/ケラー 「マーケティング マネジメント」15版を章ごとに要約してみた
0. はじめに
2019年の中ごろから本格的に実名でのTwitterアカウントを始めた。Twitterでは、様々な人が様々なように「マーケティングとは〜〜」「マーケターとは〜〜」と語っていた。その中には、共感・納得できるものもあれば、違和感を覚えるものも多くあった。たくさんの意見を読んでいるうちに、自分の中で「マーケティングとは何か?」というお題に対する答えを持っておきたい、という思いが強くなってきた。そのことが、仕事での成果に直結するわけではなかったとしても、学ぶことで、有象無象の「マーケティング論」を正しく吸収/棄却できるはずだ。そんな思いで、2020年の年末から2021年の年始にかけて、「コトラー/ケラー マーケティング・マネジメント第15版」を読むことにした。日本語版だと第12版が最新だったので、困難を予想しながらも、英語版にチャレンジした。この本には、各章のはじめに、「この章では、こんな質問について考えます(In this Chapter, We will Address the folloing questions)」という囲みで、いくつかの質問が記載されている。なので、各章のはじめに記載された質問に(本の内容を要約する形で)回答を記すことが、自分自身の理解を整理するために良いのでは、と思った。せっかくなので、noteにも公開してみる。間違いや、記載内容との齟齬等があれば、ぜひご指摘いただきたい。gmailかtwitterで連絡いただけると幸いだ。(※このnoteの趣旨は、あくまでも本の要約を試みることなので、私見はできる限り書かないようにしている。)
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第1章: 「新しい現実」におけるマーケティングの定義
Q: なぜマーケティングが重要なのか?
A: ビジネスにおいて最も重要なことは、商品・サービスに対する需要が十分に(=利益が出るくらいに)存在することであり、それは、マーケティングによって達成されるから。また、マーケティング活動を常に継続して改善していかなければ、あっという間に他社に取って代わられ、ビジネス活動が不安定な状態に陥るから。
Q: 何がマーケティングの範囲といえるのか?
A: マーケティングとは、「人間や社会の需要を、定義し、それを満たすこと」である。マーケティング・マネジメントとは、「目標とする市場を選択すること、ならびに、より優れた顧客価値を創造し、届け、伝えることで、顧客を獲得し、維持し、育てることに関する、理論と技術のこと」である。マーケティングの対象はひろく、商品・サービス・行事・体験・人・場所・資産・組織等にわたる。マーケターの役割は、彼らの商品の需要を刺激するだけにとどまらない。需要の程度や時期、構成要素にも、影響を与えようとする 。需要の状態の原因を特定し、より理想的な状態に需要を変化させるための計画を策定しなければならない。
Q: 核となるマーケティング・コンセプトはなにか?
A: 下記の通り。
●欲求(needs)・要望(wants)・需要(demands) - 欲求は、衣食住などの基本的な人間の欲望である。欲求が、それを満たす具体的なモノとして描かれると、要望になる。要望は、私達の社会によって形作られるので、場所によって異なる(同じ食という欲求を満たすのに、アメリカではフライドチキンが要望され、アジアの国ではお米が要望される)。需要は、要望のうち、それを手に入れることができるもののことを言う。「ベンツが欲しい」という要望は多くの人が持つが、ベンツの「需要」(=ベンツを変えるだけの余裕がある人)は少ない。優位に立つためには、企業は、顧客が何を欲しているのかを学習させる必要がある。一方、欲求(needs)は、気づかせることはできても、創造することはできない。
●ターゲティング・ポジショニング・セグメンテーション - マーケターは人々を、地理的要素や行動要素など様々な軸で分割し、セグメントを作成する。そのうえで、どのセグメントに最も機会が存在するのかを決定する(ターゲティング)。ターゲットとなった各セグメントに対して、購入者の頭の中に、重要な提供価値を届けられるように、商品の位置づけを提供する(ポジショニング)
●提供物とブランド - 企業は、バリュープロポジション(欲求を満たす便益の集合体)を提供することで、顧客の欲求に応えている。目に見えないバリュープロポジションは、提供物によって具現化される。ブランドは、「すでに知っていること」からくる提供物だ。
●マーケティング・チャネル - ターゲット市場に到達するために、マーケターは3つのチャネルを使う。ターゲットとなる購入者にメッセージを伝え、また、彼らからのメッセージを受け取るコミュニケーション・チャネル。実際の商品・サービスを購入者・利用者に届けるディストリビューション・チャネル。潜在的な購入者との取引を実施するためのサービス・チャネル(倉庫や輸送業者など)。
●ペイド・オウンド・アーンドメディア - ペイドメディアは、費用を払って、広告を見せたりブランドを露出したりできる。オウンドメディアは、マーケターが所有しているメディアのこと。アーンドメディアは、第三者が口コミ等で、自発的にブランドについてコミュニケーションしてくれる流れのこと。
●インプレッションとエンゲージメント - 「どれくらい視界に入ったか?」というインプレッションではなく、「コミュニケーションに対してどれくらいアクティブに関わってくれたか?」というエンゲージメントを、コミュニケーションの指標とするべきだ。
●価値と満足度 - 価値は、「有形便益 + 無形便益 - 費用」で考えられ、品質や提供内容が良いほど高くなり、価格が高いほど低くなる。満足度は、価値と期待のギャップである。価値 < 期待なら失望し、価値 = 期待なら満足し、価値 > 期待なら感動する。
●サプライチェーン - サプライチェーンは、原材料から、最終購買者へ届けられる完成品までの流れとして捉えられる必要がある。サプライチェーンの問題は、ビジネスにとって死活的に重要になる場合もある。
●競合 - 競合は、顕在的に、また、潜在的に、買い手が考慮しうる提供物や代替品をすべて含んでいる。
●マーケティング環境 - マーケティング環境は、内部環境(task environment)と、外部環境(broad environment)に分かれる。内部環境は、マーケティングの実行における様々な関係者のことである。外部環境とは、人口や経済、技術など、マーケティングに大きな影響を及ぼすマクロトレンドのことである。
Q: どのような要素が、マーケティングの新しい現実を定義しているのだろうか?
A: 3つ上げるなら、技術・グローバリゼーション・社会的責任の3つだ。技術の発展は、Eコマースの台頭、モバイル・インターネットの進化、新興国におけるインターネットの発達等をもたらしている。技術のトレンドをマーケティングに活かす必要がある。また、グローバル化が進展し、「文化の多様化」が進んでいる。また、ある国で成功したアイディアを別の国に持ち込んで成功するケースもある(また、新興国で成功したアイディアが先進国に持ち込まれて成功する例もある)。商品がコモディティ化するにつれて、社会的責任を企業・商品がどうやって果たしているかが、消費者にとっての差別化要素になりつつある。
Q: 技術・グローバリゼーション・社会的責任によって、顧客・企業は、何が可能になったのだろうか?
A: 顧客にとっては、インターネットでの情報取得や比較、手軽なコミュニケーションや検索・購買、ソーシャルメディアによる意見の表明、企業との積極的な交流、不適切だと思うマーケティングの排除、ができるようになった。企業にとっては、インターネットの販売チャネル・情報発信チャネルとしての活用、顧客や競合に関するより豊富な情報取得、SNS等のデジタル技術を使った顧客への素早い接触、コミュニケーションの改善、さらなるコスト効率化が可能になっている。
Q: 「ホリスティック・マーケティング」という考え方は何を含んでいるのか?
A: 4つの要素を含んでいる。
●リレーションシップ・マーケティング: 顧客・従業員・協力会社・株主と、相互に利益のある関係性を構築すること。
●インテグレーテッド・マーケティング: あらゆるマーケティング活動が、それぞれで価値を創造すると同時に、他と連動し、一貫性を保っている状態にすること。
●インターナル・マーケティング: 社内の他部署関係者やマネジメントを、顧客への価値提供という一つのゴールに向かわせるように(意識を)統合させ、マーケティング活動を強化できるようにすること。
●パフォーマンス・マーケティング: マーケティング活動によって得られる財務的・非財務的な利益を、ビジネスに対しても、また、社会に対しても、正しく理解し、測定すること。
Q: マーケティング・マネジメントを成功させるには何が必要だろうか?
A: (※各章で詳しく説明されるらしいので、ここでは概略に留める)
①市場の経験や自社の強みを踏まえて、潜在機会を特定する
②市場環境に関する情報や、マーケティング活動に関するデータを収集する
③ターゲットとした市場の顧客と、強固で、利益が確保でき、長期的に維持できる関係性を築く方法を考える
④市場や競合のことを考慮しつつ、強固なブランドを構築する
⑤価値を創造する(商品開発・価格設定etc...)
⑥価値を届ける
⑦価値を伝える
⑧長期的な成功のためのマーケティング組織を作り上げる
第2章: マーケティング戦略と計画を立案する
Q: マーケティングは、どのようにして顧客価値に影響を与えるか?
A: マーケティングは、「提供価値を選択する」「価値を提供する」「価値を伝える」という3つの段階がある。戦略を考える際には、事前に、「どのように市場をセグメントし、どのセグメントに対して、どのようなポジションを取ろうとするのか」を考えなければならない。マーケティング計画は、狙いを定める市場や、そこにおける会社そのものの位置づけが含まれる戦略的マーケティング計画と、商品や販促の計画といった、戦術的マーケティング計画に分かれる。
Q: 戦略計画は、全社レベルで、また、各部門のレベルで、どのように実行されるか?
A: 主に4つのステップで行われる。
①全社のミッションを定義する: 自社のビジネスを、「顧客を満足させるプロセス」として捉えて、ミッションを定義する。絞り込んだ目標に集中させること、会社の価値観を強調すること、競争市場を定義すること、長期的な視野に立つこと、長すぎず覚えやすいこと、も重要。
②ビジネス部門(Strategic Business Unit)を設立する: いくつものブランドや市場を抱えている会社は、それぞれに独立した戦略が必要になる。それを立てやすくするために、SBUを設立する。
③各ビジネス部門にリソースを割り振る: 各ビジネス部門を一定の方法で評価し、リソースを分配する(例: BCGマトリクス)。
④成長機会を評価する: 現在の市場成長予測と、理想とする成長予測に乖離があった場合には、それを埋める必要がある。既存のビジネスを強化する、既存の市場における上流や下流に進出したり、同業の競合を買収する、または、現在のビジネスとは異なるビジネスを展開する、という、3つの方針が考えられる。
上記の実行の際には、企業文化 -組織を象徴するような価値観、物語、共有された経験- を考慮することが重要だ。
Q: 戦略計画は、各部署のレベルで、どのように実行されるか?
A: 以下の手順で実行される。
①ビジネスミッションを定義する: 全社的なミッションと一貫性を保った形で、各部署におけるミッションを定義する。
②外部環境・内部環境を分析する: 外部における機会・脅威はなにか、自社がもつ強み・弱みは何かを整理する(いわゆるSWOT分析)。機会は成功可能性と魅力度、脅威は実現可能性と危険度で分類する。
③目標を具体化する: 最も重要なものから順に述べる。できる限り数値化し、現実的で、一貫性があること・矛盾しないことに留意する。
④戦略を具体化する: 戦略には大きく分けると「コスト・リーダーシップ(業界最安値)」「差別化」「(ニッチへの)集中」の3つがある。また、他の会社と提携することで新たな価値を生み出すこともできる
⑤施策を具体化し、実行する: 戦略が立派でも、実行されなければ意味がない。実行するために、組織構造、システム、文化、技術、人員、共通の価値観等にも留意するべきだ(7S)。
⑥計測し、改善する: 市場環境の変化により、ある時点では効果的・効率的だったものが、効率的だけれども効果的ではなくなってしまうことがある。効果的であることは、効率的であることよりも重要だ(Doing right things is more important than doing things right)。なので、常に効果をモニターし、上記の戦略を修正する必要がある。
Q: マーケティングプランには何が含まれるか?
A: 基本的には上記の戦略計画が反映される。具体的には、状況分析(SWOT)、マーケティング戦略(ミッション、数値目標、ポジショニングetc...)、マーケティング戦術(いわゆる4P)、財務上の予測(利益率、黒字化見込み、リスク分析etc...)、実行にあたっての目標値(例えば四半期ごとの予算と目標)。
第3章: 情報収集と需要予測
Q: 現代的なマーケティング情報システムの要素はなにか?
A: マーケティング情報システムは、マーケティングの意思決定者がその時に必要である正確な情報を収集・整理・分析・評価・伝達するための、人・装備・プロセスからなる。
Q: マーケティング情報システムにとって有用な社内記録はなにか?
A: 受注から支払いまでの一連のプロセスや、売上情報、様々な機械から得られる多種多様な情報。
Q: 何がマーケティングインテリジェンスシステムを構成するのか?
A: マーケティングインテリジェンスは、意思決定者に対して、日々の情報やマーケティング環境の進展に関する情報を提供する仕組みとリソースのことである。マーケティング情報システムは、「すでに起きた結果」の情報を供給するのに対して、マーケティングインテリジェンスは、「いま起きていること」の情報をシェアする。情報の獲得には様々な方法があるが、特にインターネットは、現在起きているナマの情報を獲得するために有用だ。
Q: 影響力のあるマクロ環境の発展にはどんなものがあるか?
A: 6つの大きな要素がある。
①人口: 人口・年齢層・民族・教育レベル・世帯etc...
②経済: 消費者意識や消費動向・収入・借金動向etc...
③社会文化: 自分自身に対して、他人に対して、組織に対して、社会に対して、自然に対して、普遍的真理(宗教)に対しての考え方・核となる文化的価値観・サブカルetc...
④自然環境意識: エコに対する人々の意識(affordability)
⑤技術: 新しい技術や、技術に対する規制(緩和)etc...
⑥政治・法律: 政府や機関、圧力団体の動向・特別利益団体の主張(特に個人情報保護について)etc...
Q: どうすれば企業は正確に需要を計測・予測できるか?
A: まず、潜在市場・リーチ可能な市場・目標とする市場・すでに攻略済みの市場の規模を理解する。その上で、市場レベル・企業レベルで、最大需要値、何もしなかった場合の予測需要値、ある程度のマーケティング活動を織り込んだ場合の予測需要値、を算出する。将来の需要を予測する場合は、外部からのレポートを購入したり、バイヤーや消費者から意見を集めて予測する。
第4章: マーケティング・リサーチを実行する
Q: マーケティング・リサーチの範囲はなにか?
A: マーケティング・リサーチとは、マーケティング担当者の意思決定を助ける洞察を生み出す仕事だ。市場で起きていることが、なぜ・どうやって起きているのかに関する、”診断”に役立つ情報をもたらすことが役割である。
Q: 良いマーケティング・リサーチを実行するステップはなにか?
A: 下記の通り
①解くべき問題と、リサーチするべき事項を決定する: さきに「最終的にどのような意思決定を下すべきなのか」を明確にした上で、そこから逆算して問題を設定し、それに応えられるようなリサーチ課題を設定する。
②リサーチ計画を作る:
2.1: リサーチにかけられる予算
2.2: データソース: 一次データか二次データか?
2.3: リサーチの手法: 行動観察調査、フォーカスグループインタビュー、質問調査、実験etc...
2.4: リサーチの道具: アンケート、質的質問、機械を用いる
2.5: 対象者選定: どんな母集団から、何人を、どうやって選ぶか
2.6: 情報収集の方法: メール、電話、対面、web上での調査
③情報を収集する
④情報を分析する
⑤発見・洞察をまとめる
⑥意思決定を行う
Q: マーケティングの生産性を測定する最良の方法はなにか?
A: マーケティングの成果を定量化・比較・解釈するために必要な一連の指標(認知度、新規顧客獲得数etc...)をまとめた表を作成したり、マーケティング活動のうちそれぞれが、何にどの程度影響したのかをモデル化して解析することで、成果を測定することができる。ビジネスの状況がひと目で分かるように、各指標の現状を(車のメーターのように図式化して)まとめたダッシュボードを作成する場合もある。短期的・長期的な指標を織り交ぜることも重要だ。
第5章: 長期的な関係を構築する
Q: 顧客価値、顧客満足、ロイヤリティとは何か?どうすれば企業はそれを伝達できるのか?
A:
顧客価値とは、顧客が受けるすべての便益から、すべての費用を差し引いたものである。便益には、経済的・機能的・心理的なものがあり、製品・サービス・人・イメージすべてが、便益の源泉となる。コストにも、金銭・時間・エネルギー・心理的なものといった種類がある。
顧客満足は、商品・サービスから受け取った価値と、それに対する期待を比較して発生するものである(価値>=期待であれば満足する)。
ロイヤリティは、「環境や、ブランドスイッチを促すようなマーケティング活動があったとしても、その商品・サービスを再び購入し、支えようという強いコミットメント」のことである。顧客は、ただ商品に”感動”するだけではなく、企業に対して、彼らの声を聞き、反応することを求めている。
品質は、マーケターだけではなく、関わる人全員の仕事によって担保される。そのためには、顧客のニーズを正しく特定し、顧客の期待を正しくコミュニケーションに反映し、顧客との関係を維持し続ける等、様々な部署との連携が重要だ。
Q: 顧客生涯価値とは何で、どうすればマーケターはそれを最大化できるのか?
A: 顧客生涯価値は、顧客が購入を始めてから終えるまでのトータルにおける、収益とコスト(その顧客に対して価値を提供するために行っているすべての活動コスト)の差分の正味現在価値のことである。それを最大化するためには、顧客x商品の表で整理し、収益性が低い商品ばかり買っている顧客は、より収益性が高い商品への乗り換えを促すか、競合他社への切り替えを促す、等のアイディアが考えられる。
Q: どうすれば企業は正しい顧客を獲得・維持でき、また、強力な顧客との関係や顧客のコミュニティを維持することができるのか?
A: 下記の通り
●解約率を低くする: ”解約率”を定義した上で、顧客が離れる原因を特定し、改善可能な要素を特定する。解約理由にも、どうしようもないものと、改善できるものがあるはずだ。「解約率を下げる」コストと、「失われる顧客生涯価値」のバランスを考えよう(前者が上回ってしまっては意味がない)
●ロイヤルユーザーになるまでの流れを特定する: 潜在顧客から、ロイヤルユーザーになるまでにどのような段階を踏むのかを整理し、各ステージにおける上昇率(conversion rate)を測定することで、ボトルネックを特定し、改善することができる。
●既存顧客の基盤を管理する:
・解約率を減らす
・契約期間を長くする
・「財布シェア」を高める。クロスセル(他の関連商品も買ってもらう)やアップセル(より高価格のもの・収益性が高いものを買ってもらう)の活用
・利益率の低い顧客をより高利益にするか、関係を終わらせる
・高利率の顧客に集中する
●顧客と緊密なコミュニケーションをとる
・顧客の立場にたって顧客の声を聞き、顧客が考えていることを理解する
・購入頻度が高い顧客を優遇する
・顧客同士でクラブを作り、交流を促す
・ブランドコミュニティを作り、顧客にも参加してもらう
コミュニティは、下記の要素があると価値創造がしやすい。
・社会的な関係づくり: 歓迎、メンバー同士の協力、理想的な行動を示す
・印象の管理: ブランドの良いニュースを示す、ブランドに費やすお金や時間を正当化してもらう
・表札の表示: コミュニティ内に、共通の趣味等でくくったグループを作る
・バッジ: 周年などの目標を定め、それを公開し、達成したら表彰する
・文書: コミュニティの歴史等を物語的に文書化し、目標と紐付ける
・挨拶: ブランドの利用法やお手入れ法について会話を交わす
・カスタマイズ: 商品を顧客にあわせて変える
・商品化: 顧客からのアドバイスを商品化する(※ここはよくわからず…)
Q: 顧客が獲得した新たな力は、企業がマーケティングを行う方法にどのような影響を及ぼすか?
A: デジタル技術の発展によって、顧客は、店舗同士を即座に比べたり、商品サービス体験を他人にシェアしたりすることが容易になった。そのため企業は、顧客とのあらゆるタッチポイント(顧客がブランドや商品と触れ合うすべての点)において、情報・体験を管理する必要がある(Customer Relationship Management)。
また、技術の進展により、顧客は商品やサービスをより「個人最適化」することを望むようになった。結果、「顧客が、ブランドともっと深い関係になりたいと、進んで意思を示した場合にのみコミュニケーションを深めていく」パーミッション・マーケティングが台頭している。が、「顧客自身が自覚したものしか望めない」点には注意する必要がある。
インターネットが発達し、顧客のレビューは、顧客が商品選択をする上でますます重要になっている。小さなブランドこそ、口コミの影響がより大きくなっている。同時に、クレームも広まりやすくなっている。クレームに対しては、顧客を責めることなく、問題解決と顧客満足を達成できるようにする。一方、不当なクレームに毅然と対応することも重要だ。
第6章: 市場を分析する
Q: 顧客の特徴は、どのように購買行動に影響するか?
A:
●文化的要素: 自分自身をどのように捉えるか、他者との関係、どのような習慣を持つかといった要素は、購買行動に大きな影響を与える。
●社会的要素: 主に下記の要素がある
●参照集団: 自身の態度や行動に影響を及ぼす集団のこと。頻繁に、またカジュアルに、継続して交流する「第一集団」と、そこまで継続はせず、公な場面で交流する「第二集団」がある。また、”その集団に入りたい”と思っている「願望集団」や、関わりたくないと思っている「乖離集団」も影響を及ぼしうる。個人にアドバイスを与えている「オピニオンリーダー」も、参照元として重要。
●派閥: 頻繁に交流する、小さな集団のこと
●家族: 両親や親類を含む「指向家族(family of orientation)」と、配偶者や子供を含む「生殖家族」に分かれる。家族における役割は変化するので注意
●役割とステータス: 実行を期待されていることを「役割」といい、それを行うことで「スターテス」が伴う。商品やブランドが持つ「ステータスシンボル」としての可能性を探るべき。
●人的要素: 主に下記の要素がある。
●年齢とライフサイクル: 年齢や、それに伴って発生するイベントは重要。それによって、文化的・社会的要素も変化する。
●収入と経済状況: 可処分所得や貯蓄・資産等の経済状況で消費動向は変化する。
●人格と自己認識: 人格とは、比較的一貫していいて、環境刺激に対する(購買行動も含めて)反応を抑えている、心理学的な特徴のこと。自己認識は、国によって一部異なるが、いくつかのパターンに分かれる。ブランドと相性のいい人格・自己認識がある。
●ライフスタイルと価値観: 大きく分けると「金に追われているか」「時間に追われているか」という軸がある。
Q: 主な心理的過程は、顧客のマーケティングプログラムへの反応にどのように影響するか?
A: 動機、知覚、学習、感情、記憶の5つが主な心理的過程である。
●動機: 生物学的なものと心理的なものがある。方向性と、強さに分かれる。様々な理論がある。不満足要素がないほど、満足する要素があるほど買われやすい。満足要素がなければ買われない。
●知覚: 下記のバイアスについては留意する必要がある。
・選択知覚: 直近のニーズに関係あるほど、予期しているほど、通常との乖離が大きいほど、知覚されやすい。
・選択的歪み: すでに持っているブランドや商品の期待値や信条に適合するように認知されやすい。
・選択的維持: 自分が好きな商品の良いところほど記憶に残りやすい
・潜在知覚: 無意識での認知が行動に影響を及ぼす
●学習: 行動に紐づく強烈な刺激と、いつ・どこで・どのように反応するかを決める小さな刺激が組み合わさって学習が発生する。刺激と商品を結びつけ、好意的に結びつきを強化していく個ことで、需要を換気できる。
●感情: 利用することと、ある特定の感情を結びつけることで需要につながる。
●記憶: 人々が受け取る刺激や、人々が持つ長期記憶とブランドを結びつけることで、ノードが形成され、人の脳に保存される、と考えられている。記憶が頭に残っていても、刺激がなければ、思い出すことはできない。
Q: 顧客はどのように購買意思決定を行うか?
A: 5つのステージがあるとされている。
①問題の認識: 外的・内的な刺激によって問題が認識されるので、どんな刺激が、特定の(自社商品が満たせる)ニーズを喚起するのかを把握するべきだ。
②情報の探索: 顧客はしばしば、限られた情報しか探索しない。なので、どのような種類の情報を顧客が探すのかを把握する必要がある。情報源は、人的なもの、商業的なもの(宣伝)、公的なもの(新聞)、経験的なものがる。顧客は比較検討を行う前に、比較的重要だと考える項目を見て、選択肢を絞り込んでいる。顧客の情報ソースと、重要だと思われている項目の把握に努める。
③選択肢の評価: ニーズを満たすか、ある種類の便益を提供できるか、その他の便益は何か、という3段階で評価が行われる。評価の際は、顧客が持つ信念(人々がある物事に対して抱いている考え)や態度が影響を与える。顧客の信念を変えるのは難しいので、自社商品を信念に適合させる。顧客が、いくつかの項目に重み付けをした上で各商品を項目ごとに評価し、総合点でブランドを決めるとするなら、マーケターは、選ばれるためにいくつかのことができる。
3.1 商品を、総合点数が上がるように変更する
3.2 商品の評価を変える
3.3 競合商品の評価を変える(顧客の評価に誤りがあれば有効)
3.4 顧客の評価の重み付けを変える
3.5 これまで無視されていた特徴に注意を引きつける
3.6 顧客の理想(重視する項目)を変える
④購買意思決定: 顧客はしばしば、上記のような完全な評価ではなく、ヒューリスティック(意思決定時間を短縮するプロセス)を用いて判断を行う。主なものには、
4.1 すべての評価項目を必要最低限だけ満たすものが出てきたらその商品を選ぶ
4.2: 最重要だと思われる項目について最も評価が高い商品を選ぶ
4.3: いくつかの項目をランダムに選んで、その評価のみで商品を選ぶ
また、上記の意思決定をした後でも、他人のネガティブな評価や、他人の願望に対処しようとした結果、その商品が選ばれないこともある。また、予期できない状況要因も存在する。商品の機能リスク・身体的リスク・経済リスク・社会リスク・心理的リスク・時間的リスク等が挙げられる。
⑤購買後の行動: 顧客は受け取った価値と期待値を比較して評価を行う。マーケターは、顧客の購買体験価値を高める必要がある。満足or感動した顧客は、再びその商品を買ってくれたり、その商品を他人に勧めたりしてくれる。購入後の使用や、廃棄についても注意を払う必要がある。顧客が使用頻度を適切に把握できずに在庫を切らしてしまうこともある。それの対策としては、定期的な購入タイミングを作ってあげる(毎月23日に買う)か、一回目の使用時に、より良い情報(一般的に使い切るタイミング、現在の利用状況など)を提供することだ。
意思決定プロセスは、商品の関与度や、種類の豊富さによっても異なる。関与度が低い商品の場合、顧客は、あまりブランドの差異等を意識しない。関与度を高くするためには、商品を顧客にとって検討するべき問題と結びつけたり、個人的な状況と結びつけたり、個人の価値観やエゴに関わる強い感情を喚起する商品の広告を作り上げたり、商品の特徴を加えたりすることが挙げられる。また、種類が多いと、顧客は、様々な商品を買って試す行動にでる。シェアが高い企業の場合は、同一の商品で様々な種類を発売して、顧客のお試し行動を制限する(自社商品内で試させる)べきである一方、シェアが低い企業の場合は、むしろお試し購入を促進させるべきである。
Q: 顧客は、どんな方法で、熟慮の末の合理的な意思決定過程から外れるのか?
A: 行動経済学の知見が、多くの示唆を与えてくれる。
●意思決定のヒューリスティクス: 最初に浮かべたものを正として採用してしまう、代表的なものが全体にあてはまるかのように判断してしまう、最初に与えられた数字や印象を基準として判断してしまう、etc...
●フレーミング: 絶対数ではなく、他との比較によって良し悪しを判断してしまう(100円 vs 50円 / 100円 vs 400円)。また、数が大きいほど印象が大きく見える(e.g. 24ヶ月保証 vs 2年保証)。
●頭の中の財布: 顧客は、頭の中に「財布」を持っていて、その損得に応じて判断を変えることがある。例えば、50ドルのチケットをなくしたらチケットを再度買おうとは思わないが、50ドルをなくしても、50ドルのチケットを買おうと思うのは、前者渡航者で、頭の中の財布におけるチケット代が異なるためである。
●利点と欠点の扱い: 利点は分離してとらえ、欠点はまとめて捉えたほうが、顧客にとっての印象が良くなる。また、小さな欠点を大きな利点とまとめることで、小さな利点を、大きな欠点から分離させることで、顧客の印象が改善することがある。
●プロスペクト理論: 顧客は損失回避的である。(10ドルを失うことは、10ドル得ることよりもインパクトが大きい)
第7章: B2B市場を分析する
Q: 組織による購買とはなにか?
A: 基本的には、B2Bのマーケティングも、B2Cと同じであるが、いくつかの点で異なっている。
●B2C市場よりも、買い手が少なく、購買規模は大きい
●業者と顧客との緊密な関係: 供給者は、B2C市場に比べ、買い手に合わせてカスタマイズし、いち企業のニーズを満たすことを期待される
●熟練した購買: 企業の購買はしばしば、訓練された購買担当者によって行われる。
●複数の購買への影響者: 企業の購買意思決定には、B2C市場よりも多くの人々が影響を与える
●複数の電話: B2C市場に比べて、同じ顧客に対して複数回電話することが一般的である
●需要には由来がある: B2B企業の需要は、結局の所、最終利用者のニーズに左右される。そのためB2Bマーケティング従事者は、商品の、最終利用者の動向に注意する必要がある。
●B2B市場の需要は価格弾力性が低い。
●B2B市場の需要は、増減の幅が、B2C市場に比べて大きい
●地理的な集中: B2B市場の買い手は、いくつかの都市に偏在している
●B2B市場では、供給側と買い手が直接つながっていることが多い。
B2B市場における最大の脅威は「コモディティ化」である。そのためB2Bマーケターは、常に自社商品を差別化しなければいけない。
Q: 企業の購買担当者は、どんな購買状況に直面するか?
A: B2B市場における購買の状況としては、「以前と全く同じ購買」「以前と同じ商品を、条件を変えて購買」「新規の購買」の3パターンがある。校舎になるほど、意思決定は複雑になる。
Q: B2Bの購買過程には誰が参加するか?
A: 提案者、利用者、栄養者、意思決定者、承認者、購買者、門番(購買組織に情報や供給業者が到達するのを妨げる力を持つ人)。企業の買い手もまた、個人的な動機や、考え方を持っている。結局の所、組織ではなく個人が意思決定を行うのだ、ということは覚えておくべきだ。 企業は、商品を買っているのではなく、組織の経済的・戦略的問題の解決や、個人の目標達成や賞与に役立つ解決策を買っているのだ。
B2Bマーケターは、定期的に、対象となる企業の購買組織についての情報を見直すべきだ。顧客や、購買組織についての洞察は重要である。また、「顧客の顧客」つまり最終消費者のことも考慮に入れるべきである。
Q: 企業の購買担当者はどうやって意思決定を行うか?
A: 8つのステージを踏む、とされている(新規購買であればすべてのステップを踏むが、そうでない場合は、一部スキップされる)
①問題の認識: 商品やサービスを購入することで解決できる問題を誰かが認識する。認識は、外的・内的刺激をきっかけとして発生する。
②需要(要件)の定義: 必要な商品・サービスの一般的な特徴や、要求される品質を定義する
③商品の定義: 商品・サービスの技術的な要件を定義する
④供給業者の検索: 最も適切な業者を探す。他者にコンタクトしたり、業者のリストを見たり、インターネットで検索したりする。供給業者にとっては、顧客のニーズが発生したときに、常に自社のことを想起してもらえるようにすることが重要だ。もちろん、潜在的につながっている顧客の量と質のバランスは取らなければならない。質を高めるためには、顧客についてよく知る必要がある。
⑤提案の勧誘: 選んだ供給業者に対して、提案書を書くように求める。B2Bマーケターは、調べて提案書を書き、プレゼンする技術に優れている必要がある。自社の価値や便益を、顧客の言葉で書く必要がある。
⑥供給業者の選定: 項目ごとに重み付けをした表などを用いて、業者を選定する。顧客がどのように評価を行うのか、知っておくことが重要だ。価格を下げるように交渉されることもある。その時の対応方法としては、
6.1: フレーミングを用いてお得感を出す
6.2: トータルコストを提示してお得感を出す
6.3: その商品導入で生産性が上がることを示し、価格を正当化する
6.4: 価格を下げる代わりに、サービスの質も落とす(返品不可、等)
6.5: 商品ではなく、問題解決に焦点をあてて販売する。
供給業者の数は絞られる方向にある。
⑦: 契約を結ぶ: 都度契約よりも、包括的契約を結ぶことのほうが多い。
⑧成果の評価: 最終消費者に評価を聞くなどして、商品・サービスを評価する
Q: B2B企業はどうやって効果的なマーケティングを行うか?
A: まず、B2Bマーケティングにおいて、ブランドは重要だ。ブランドは、その会社の様々な商品と結びついているからだ。Webサイトの改修やブログの発信等を行って、より検索してもらいやすくすることも重要である。ときには、より個人的なつながりが大きな違いをもたらすこともある。
多くの企業の書いては、一つの売り手からすべての問題解決に必要な商品・サービスを購入することを好む。そのため、「システムの販売」は、マーケティングツールになりえる。システムの契約を行うこともある。規模が大きい計画に応募するときは特に、トータルシステムの提供は主要なマーケティング戦略になり得る。自分たちの商品に、価値のあるサービスをセットにして売る方法が模索されている。
Q: 企業は、どうすればB2B顧客と強固なロイヤリティを伴う関係を築けるか?
A: B2Bマーケターは、乱れ打ちするよりも、一対一の関係を構築するマーケティング手法を使う。売り手と買い手の関係は、8つの型に分類できる。
①通常の売買関係
②要点(bare bones): 売り手が買い手に対して適応している
③契約関係: 契約によって関係を結んでいる
④: 顧客への供給: 強力というよりも競争的な関係
⑤: 協力的システム: オペレーション上統合されているが、法的な関係があるわけではない
⑥: 共創関係: 信頼と約束によって強固な協力関係を築く
⑦: 総合適用: 売り手も買い手も相互に適応している
⑧: 顧客優先: 売り手は、適応することなく顧客のニーズを満たすことを期待されている
垂直統合的な関係を結ぶことは、両者にとってリスクをはらんでいる(書いてのために作った商品ラインを変えられない、部品を変えられないことが弱みになる)。また、買い手が供給業者を監視できないと、不正が行われる可能性を生む。
Q: 組織の購買担当者や政府機関はどのように購買を行うか?
A: 政府や機関は、商品・サービスの大規模な買い手である。政府の購買意思決定は公の目にさらされるため、膨大な量の書類作業が要求される。政府が提供するガイドラインに則らないと悲惨な事態になってしまう。
第8章: 世界市場に進出する
Q: 国外進出を決める前に、どのような要素を確認する必要があるか?
A: 世界に進出するためには、自国で商品を改良し、国外に広げる必要がある。国外でも成功するためには、顧客が国境を超えて普遍的に持つ価値観に訴えていることが多い。参入を決める前に、下記のようなリスクについて確認する必要がある。
●国外の選好を理解していない
●国外の商業文化を理解していない
●海外の規制を過小評価している
●国際経験豊かなマネージャーがいない
●外国が、商業法を帰る可能性がある
Q: どうすれば企業は参入するべき国際的市場を評価し、選択できるか?
A: 自社の商品と、地理的要素・収入・人口・政治要因を踏まえて選択する。市場成長の度合いも、重要な要素だ。一般的に隣国に進出することが好まれやすい。言語等の共通要素があることも、進出の決め手になり得る。
Q: 新興国と先進国における、マーケティングの違いはなにか?
A: 新興国においては、”見えない消費者”をどうやって捉えるかが重要だ。新興国において、成長している中間層に向けた参入から始める企業が多い。”ピラミッドの最底辺”と言われる市場へのリーチは、人数こそ多いものの、とても難しい。最底辺と言われる市場にリーチする際は、「低価格・低利益・大容量」が成功の基本である。
新興国の人々は、多くが小さな個人店に頻度多く通い、買い物をしている。急速なスマートフォンの浸透を踏まえると、デジタル戦略も重要だろう。有効な戦略の一つは、「巨大な市場において無視されているニッチ」を特定することだ。
一方先進国の市場においては、いくつかの企業を買収することが選択肢に上がる。
Q: 国外市場に参入する主な手段はなにか?
A: 以下のような方法がある
●直接/間接輸出: 対象国内にいる卸業者に対して商品を販売し、彼らに販売してもらう間接輸出は、投資コストが少なく、リスクが低い点で優れている。
●ライセンス供与: 対象国の企業に対してライセンスを供与し、製造プロセスや特許等を使わせる代わりに、手数料をもらう。
●ジョイントベンチャー: 対象国の投資家トクンでジョイントベンチャーを立ち上げるのも一つの方法だ。政治的・経済的理由からジョイントベンチャーが望ましいことがある。
●直接投資: 自分たちで販路を開拓する。市場が十分に大きい場合は、行う価値がある。しかし、巨大な投資をリスクに晒す。
●買収: 多くの企業は、現地のブランドを買収し、ポートフォリオに加えることを選択する。
Q: 企業は、商品やマーケティングについて、どの程度まで各国に適応しなければいけないのか?
A: グローバル化の影響を受けて、世界の価値観は、特に若い世代においては共通担っている部分が増えてきている。しかし同時に、顧客は大きく違う麺もある。
●個人主義か集団主義か
●上下関係の強さ
●男性的か女性的か
●不確かなものを回避する傾向が強いか弱いか
成功しているグローバルブランドは、テーマは共通させつつも、顧客行動や競合、法的・政治的環境から生まれる重要な違いは反映させている。マーケターあh、すべての市場において、ブランドが顧客にとって”関係あること”と捉えられるようにしなければいけない。
顧客が商品について知っていることや、商品に求める価値が世界共通であれば、国に応じて変える必要はない。だがそうでなければ、国によってかえることを強調することがよいかもしれないし、一つの市場においても収入に応じて異なる商品を用意することもある。国によっては、用いているブランドイメージがそぐわない可能性もある(数字・色など)。コミュニケーションと商品を変化させるか否かで、5つのタイプに分けられる。
●直拡張: 商品もコミュニケーションも変えない
●商品適応: 商品を市域の条件や選好に合わせて変える。
●商品開発: 新しい商品を作る。以前のタイプの商品を再度導入する場合と、全く新しい商品を作る場合がある。
●コミュニケーション適応: コミュニケーションを変える。
・言語や名前だけを変える
・メッセージやクリエイティブは同じだが、実行の方法を変える
・複数のコミュニケーションを用意しておき、国によって採用する物を変える
・各国の責任者が広告を制作する
●デュアル適応: 商品もコミュニケーションも変える
企業は、コミュニケーションが、法的に・文化的に受け入れられるものになるよう注意を払わなければならない。次に、クリエイティブの戦略やコミュニケーション方法が適切なものか確認する。場合によっては、メッセージの出し方を変える用意をしておく必要がある。ブランドを発達させるのと同時に、顧客の教育が必要な場合もあるだろう。個人の販売戦略も変える必要がある。
価格については、主に「世界中で同じ価格を適用する」「市場に応じて、同じような位置づけになるように価格を設定する」「発生した費用に基づいて価格を設定する」という3つのパターンがある。インターネットによって価格に透明性がもたらされているため、国による価格の違いは減っている傾向にある。
移転価格(同一グループ内の取引)やグレーマーケット(偽造品市場)に注意しなくてはいけない。また、サプライチェーンをグローバル化するほど、腐敗・詐欺や、品質管理の問題が発生する確率は上がる。インターネットによる転売等も問題だ。
商品を出荷したら終わりではなく、最終消費者にどう届くのか、までを見届けるべきだ。国内に関する知識を持った国内の流通業者と取引することを好むが、問題はだいたいあとになって発生する。チャネルは大きく国によって異なる。どんな業者がいるのも異なるし、小売での販売単位や特色も異なる。
Q: どうすれば、マーケターは原産国効果を活用できるか?
A: 国も、他のブランドと同じように市場で評価されている。グローバルマーケターは、国によって異なる、ブランドや商品についての明確な態度や信念があることを理解している。マーケターは、原産国効果について、国内と国外の両面から見なければならない。ただ、外注や国外製造が進んだ結果、結局の所原産国効果とは何なのか知ることは難しい。また、グローバル化が進んだ結果、本来は異なる国発祥であるブランドが、その国の文化として織り込まれてしまっていることも多い(コカ・コーラなど)
第9章: 市場のセグメントとターゲットを特定する
Q: どんな方法で、企業は、消費者市場をセグメントに分割するのか?
A: 市場セグメントとは、似た欲求や要望を持つ顧客の集団のことである。重要なことは、顧客間の違いに応じて、マーケティングプログラムを調整することだ。以下のようなパターンがある。
●地理的セグメンテーション: 国や地方、都市等の地理的要素に応じたセグメンテーション。後述する人口属性要素と組み合わせられることもある。
●人口属性セグメンテーション: 人口の特徴に応じてセグメントを切る。
・年齢やライフサイクル: ライフサイクルは、人々の主要な悩みを代表する。ただし、個々人の差が大きいこともあるので注意。
・性別: 男女で異なっている態度や行動をもとにセグメンテーションする。男女間の差は小さくなっていることに注意。
・収入: 一部の商材では、収入が大きな軸になる(車や化粧品など)
・世代: 各世代は、育った環境や時代が異なるので、違いや特徴が生まれやすい。いわゆるGen X, Gen Yなど
・人種や文化: 文化的な要素で、欲求や要望に違いがあり、マーケティング活動を異ならせる必要がある場合がある。
・性的指向: 特定の性的指向のセグメントに商品やサービスを開発する場合がある。
●心理的属性セグメンテーション: 顧客の行動動機と顧客が持つ資源に応じて分けるVALSなどがある。心理学や人口動態科学の知見が、セグメンテーションに活用できる場合がある。
●行動セグメンテーション: 商品への反応を始めとした、顧客の行動に基づいたセグメンテーション
・欲求や便益: 商品によって満たしている欲求によって顧客をセグメントする
・意思決定役割: 人々は、購入意思決定の際、5つの役割を行うと言われている。発案者、影響者、決定者、購入者、利用者である。それに応じてセグメントを作成する。
・利用形態: ユーザーの利用形態によってセグメントを分ける。
・時間や場所
・利用段階: 元、潜在、初回、リピート
・利用頻度: 少ない、中程度、多い
・購入準備状態: 未認知、認知、知っている、興味がある、ほしいと思っている、買うつもりである
・ロイヤリティ: 一つのブランドを常に使う、2つか3つのブランドを常に使う、あるブランドから別のブランドにロイヤリティを移した、どのブランドにもロイヤリティがない
・商品への態度: 熱狂している、好意的、どちらでもない、否定的、嫌っている
いくつかの指標を組み合わせてセグメントを作ることもある。
Q: B2B市場は、どのようにセグメント分割されるべきか?
A: 地理的要素、便益、利用段階など、B2C市場と同様に使えるものもある。B2B独自のセグメンテーション軸としては、下記が挙げられる。
●動態要素: 産業、企業規模、地域
●オペレーション価値: 技術、利用者ステータス、顧客の能力
●購入方法
●状況による要素
●個人の特徴
セグメントに縛られずに、柔軟なオファーをすることも大事だ。
Q: どのように企業は最も魅力的なターゲット市場を選ぶべきか?
A: 欲求や求める便益に応じてセグメントを分けたら、各セグメントを特徴づける人口動態やライフスタイル、利用行動を描き出す。そのうえで、各セグメントの魅力度(市場成長規模や競合の強さ、アクセスのしやすさ)と利益可能性を検討する。次に、各セグメントにおいて、自社の商品・サービスはどうすれば、セグメント独自の価値観やニーズを反映させたポジションを取れるかを検討する。 各セグメントについて、そのポジションを厳密にテストしたうえで、参入するべき市場を決定する。
Q: 効果的なセグメンテーションの要件は何か?
A: マーケットセグメントは、5つの基準で評価される必要がある。
●測定可能性: 規模が測定できるか?
●持続可能性: 規模が大きく、利益を生み出せる市場か?
●参入可能性: 市場に問題なく参入し、商品を発売できるか?
●差別可能性: 概念上見分けがつき、異なるマーケティングに異なる反応を返すか?
●行動可能性: 効果的なマーケティングをその市場に対して実行できるか?
ポーターによる「5つの競争要因」にも留意する必要があるだろう。
●競合の脅威
●新規参入の脅威
●代替品の脅威
●買い手圧力の脅威
●売り手圧力の脅威
Q: 異なるレベルのセグメンテーションとはなにか?
A: 下記4つのパターンがある。
●フルカバレッジ: セグメント分割をせず、すべての顧客グループにすべての彼らが欲する商品を提供する。最大の市場規模を獲得できるが、低価格や高手数料を誘発することもある。
●複数市場への特化: セグメントからいくつかを選んで参入する。セグメント間で共通点を持つものを「スーパーセグメント」として参入するケースもある。
●単一セグメントへの集中: 一つのセグメントに集中する。そのセグメントの中でも、特徴的な便益を探している一部の顧客集団に集中することを「ニッチ戦略」という。ニッチセグメントの顧客は、明確な欲求を持っている代わりに、最もそれを満たしてくれる商品・サービスに対してはプレミアムを払うだろう。
●個人へのマーケティング: 企業は、各顧客に対してカスタマイズされた商品サービスを提供する。4つのステップが提唱されている
①顧客の情報を集める
②彼らの欲求と、企業にもたらしている価値という2軸で、顧客を差別化する
③個々の顧客と、その顧客についての知識やニーズをよりよく知るために交流を深め、強固な関係を構築する。
④商品・サービスやコミュニケーションを個々人にカスタマイズする。
対象顧客を絞るときは、法的・倫理的な要素に注意する必要がある。例えば、特定のラベリングに対して反感を持つ顧客がいる。また、未就学児へのマーケティングは議論を呼ぶことが多い。
第10章: ブランドポジショニングを構築する
Q: どうすれば、企業は市場で効果的なポジショニングを構築できるか?
A: ポジショニングとは、狙った市場の頭の中に、明確な場所を占めるために、提供物やブランドをデザインすることである。自社商品と競合商品の間の、共通点と相違点を定義し、コミュニケーションすることで構築する。
Q: どうすればマーケターは競合を特定し分析できるか?
A: 一つのやり方は、「ブランドが機能的に競合している代替品」を集めてカテゴライズすることだ。しかし、企業の実際の潜在競合は、目に見えるよりもはるかに広い。企業は、競合の対象を広げるべきだ。例えば、業界という視点から競合を定義してもいいし、「同じ顧客のニーズを満たしているもの」という、市場視点からの競合定義もできる。後者のほうが、より広く競合を定義できるだろう。
競合を特定したら、それらの強みと弱みの情報を収集する必要がある。収集した上で、「競合は、市場において何を探しているのか?」を問わなければならない。そのうえで、競争の軸を定め、自社と他者を位置づけるフレームワークを作らなければいけない。
Q: どうすればブランドの差別化に成功できるか?
A: 自社と他者を位置づけるフレームワークが決まれば、差別化要因 (POD: Points of Difference)と共通要因(POP: Points of Parity)を定義することができる。
PODは、顧客がそのブランドから強く連想し、好意的に評価し、競合商品は同程度ではないと信じる、属性や便益のことである。PODには3つの要素が重要だ。
●顧客が求めることである
●企業が実行可能である
●競合と差別化されている
一方、POPとは、ブランドにとって唯一のものである必要はないが、他のブランドと共有している属性や、便益の連想のことである。
●カテゴリーのPOP: 顧客が、ある特定の商品サービスカテゴリにおいて、正当性や信頼性を感じるために不可欠な要素
●相関のPOP: ポジティブなブランドの属性によって生じてしまう、潜在的にはネガティブな属性
●競争的POP: 競合商品のPODによって明らかになった弱みを克服するために設計された属性
ブランドにとって、複数のフレームワークが存在する状態は珍しくない。POPやPODの候補は、ほとんどの競合に共有されているものもあれば、特定の競合だけがもっているものもある、ということに留意するべきだ。複数のフレームワークの候補があるなら、自社にとって最も価値が出せるものを選ぶか、優先順位をつけるか、だ。同じPOPやPODを使って、複数のフレームワークに対応できる場合もあるが、どっちつかずになってしまうリスクも有る。自社のポジショニングを形作れるPOPやPODを選ぼう。
PODを見つけるためには、顧客が望んでいることと、自社が提供できる便益を適合させる必要がある(Desirable for consumer)。そのために、知覚マップを作ることは一つの手だ(顧客の欲求と商品をマッピングする)。理論的なものだけでなく、感情的な要素や、権威も、ブランドポジショニングを形作る。
ブランドのポジショニングをより明確にするなら、ブランド・マントラを作成することを考えよう。ブランド・マントラは、ブランドの心臓部を表した短い言葉で、他のブランドコンセプトと密接に関係する。ブランド・マントラがあることで、マーケティング活動のガイドラインになる。ブランド・マントラは、ブランドが何であり、何でないかを、端的に伝えなければならない。ブランド・マントラには3つの指標がある。
●ブランドの何がユニークなのかを明らかにしていること
●覚えられるくらい短いこと
●できるだけ多くの従業員にとって、個人的に意味があり関係があること
Q: どうすれば企業は彼らのポジショニングについてコミュニケーションできるか?
A: まず、自社のブランドポジショニングを組織のメンバーに伝える必要がある。良いポジショニングは、複数のPOPやPODを持っている。”Brand bull's eye”は、整理に役立つ。
コミュニケーションの際は、まず、商品が該当するカテゴリーを伝えよう。明白な場合もあるが、そのブランドが、カテゴリ内にある、と認知されていないこともある。PODやPOPを伝える前に、カテゴリーを伝える必要がある。ブランドのカテゴリーを伝える方法は3つだ。
●カテゴリーの便益を、自社商品サービスが持っていることを伝える
●カテゴリーの代表的ブランドと比べる
●商品の特徴に頼る
POPとPODは、しばしば否定的な関係を持っている(e.g. 力強いvs安全)。そのうえ各属性や便益も、良い面と悪い面の両方を持っている。顧客は通常、相反する属性と便益の両方を最大化してほしいと望んでいる。最良の方法は、商品を、両方の側面で価値を提供できるように作ることだ。他には、2つの異なるマーケティングキャンペーンを展開することだ。
POPやPODの望まれていること・提供できること・差別化できることは、定期的に調査し、どのようにブランドポジショニングを進化させるべきか、または、完全に変化させるべきかを理解することが重要だ。潜在的な脅威を評価するためには、3つの指標が重要だ。下記3つの指標は連動する。マインドシェアと心のシェアを得ている企業は、マーケットシェアを獲得し、利益を得ることができる。
●マーケットシェア
●マインドシェア(”この産業で最初に浮かんでくる企業は?”)
●心のシェア("この商品を買いたいと思う企業は?")
Q: ポジショニングに変わる方法には何があるか?(P313)
A: ポジションニングを、属性や便益の描写ではなく、逸話や物語を語ることだと捉えるマーケターもいる。物語に必要な要素は
●セット: 時代、場所、文脈
●キャスト: ブランドの特徴や、聴衆にとっての位置づけ、歴史や創造神話
●物語の詳細: 時代や出来事によって物語を語る方法は異なる。
●言語: 権威付けるような声、隠喩
Q: 中小企業にとって、ポジショニングやブランディングの(大企業との)違いはなにか?
A: 中小企業には資源がないので、マーケティングプログラムの選択と集中が極めて重要だ。
●説得力のある商品サービスの利点を見つける
●1つか2つの連想に立脚した、1つか2つの強力なブランドを立ち上げることに集中する
●商品やサービスのお試しを促進する
●ブランドを「より大きく・より良く」見せるデジタル戦略を駆使する
●バズや、ブランドコミュニティを作る
●ブランドの要素(名前、ロゴ、パッケージ等)を統合する
●ブランドの二次連想(ブランドかr阿僧祇される人や場所)を最大限活用する
●低価格の市場調査を行う
第11章: ブランド資産を創造する
Q: ブランドとは何か?どのように作用するのか?
A: ブランドとは、売り手の商品サービスを特定し、競合の商品サービスから差別化することを意図した、名前、用語、印、シンボル、デザイン、もしくはそれらを組み合わせたもののことである。
ブランドは、消費者に対しては、企業との約束である。ブランドは、顧客の期待値を定め、リスクをへらす。ブランドは、消費者の欲求や要望を満たすことで、顧客の期待を満たし、また、超える。ブランドは、また、顧客の個人的な意味となり、彼らが彼らであるための大切な要素になることもできる。
企業にとってブランドは、作業をシンプルにし、また、商品が持つ独自の特徴や座奥性を法的に守ってくれる。また、信頼されるブランドは、買い手に再び選んでもらえる。
ブランドは、結局のところ、顧客の頭の中や心に築かれるものだ。ブランディングとは、商品やサービスにブランドの力を与える過程である。それはつまるところ、商品の差別化である。ブランディングが成功すれば、顧客は、商品カテゴリのブランドの中から、意味のある違いを認知するに違いない。
Q: ブランド資産とはなにか?
A: ブランド資産とは、顧客によって商品やサービスに与えられる付加価値のことである。顧客に基づいたブランド資産とは、したがって、ブランドについての知識が持つ、ブランドマーケティングに対する顧客の反応の差別化効果だといえる。ブランド資産は、顧客の反応に対する違いから生まれ、反応の違いは、顧客のブランドの知識の結果である。
ブランディ資産には、いくつかのモデルが有る。
●BrandAsset Valuator: ブランドの強さ(エネルギーを与えられた違いと、顧客との関係性)と、ブランドの状態(ブランドへの尊敬度と知識)によって、ブランドがどんな位置づけになっているのかを整理する。
●BRANDZ: 顧客の購入以降の素因として、「意味があること・違いがあること・目立っていること」の3つの属性が重要であり、それらは、「ブランドの数量シェア・プレミアム・ブランド価値の成長可能性」という3つの指標のかたちで、市場に現れる、とする理論。
●ブランド共振モデル: ブランド資産を構築するために、6つの要素が重要だとするモデル
・ブランドが、広く・深く認知されていること
・ブランドが、顧客の基本的なニーズを満たすこと
・ブランドが、顧客の精神的欲求を満たすような刺激的要素を持つこと
・ブランドが、顧客の個人的意見や価値観に影響すること
・ブランドが、感情的な反応を得られること
・ブランドが、顧客と共振するような関係になること
Q: どうすればブランド資産を作り上げられるか?
A: 大きく3つの方法がある。
●ブランドを形作るブランド要素やアイデンティティの、最初の選択肢: 名前、URL、ロゴなど
●商品・サービスと、付随するマーケティング活動や、活動をサポートするマーケティングプログラム
●他の要素とつなげることで間接的にそのブランドにつながる他の属性
ブランド要素を選ぶときは、6つの要素がある。
●覚えやすいこと
●信頼できること
●好ましいこと
●同じブランドが他の商品やカテゴリに進出した場合にも使えること
●調整可能なこと
●(特許等で)守りやすいこと
ブランドが提供する便益が具体的でないほど、ブランド要素が無形の特徴を形作ることが重要だ。また、ブランドを形作るためには、各々のマーケティング活動が一貫している必要がある(前述のインテグレーテッド・マーケティング)。ブランド資産を作るために、他の方品サービスから”借りる”こともできる。
ブランド資産を構築したら、マーケターは、ブランド・プロミスをしっかりと実行しなければならない。そのために、社内の関係者(特に顧客と接点を持つ人)に対して、ブランドをしっかりと浸透させることが必要だ。
Q: どうすればブランド資産を測定できるか?
A: 間接的な方法としては、顧客の知識体系を特定し、追跡する方法が挙げられる。直接的な方法としては、ブランド知識が顧客のマーケティング活動への反応に与える直接的な影響を測定する方法がある。2つは補完的なものなので、どちらも行うべきだ。
マーケターは、「ブランド資産の源泉は何で、どのように利益という成果につながっているのか」「それらの源泉や成果物は変化しているのか否か」という2点について、詳しく理解する必要がある。ブランド資産は、ブランド価値を数値化した「ブランド評価」とは分けて考えられるべきだ。
Q: どうすればブランド資産を管理できるか?
A: マーケターは、ブランド資産を、ブランドの意味を定期的に伝え続けることで強化できる。2つの側面がある。
①WHAT: それが表す商品はなにか、提供している核となる便益は何か、それが満たしているニーズはなにか
②HOW: どのようにブランドが商品を優れているものにしているか、どんなブランドの強固で好ましい独自の属性が顧客の頭の中に存在しているべきか
環境の変化によって、ブランド資産は影響を受ける。ブランドを再活性化させるためにまずするべきなのは、どのブランド資産の源泉が発端になっているのか、だ。もしそれが「最近のマーケティング活動が問題である」場合なら、「原点回帰」がよい戦略だろう。しかしそうでなければ、ブランドの「再発明」が必要だ。もちろん、再活性化は、「原点回帰」と「再発明」の間に無数のバリエーションがある。
Q: ブランド建築(Brand architecture)とはなにか?
A: 新商品を出すにあたってブランドを用いる際には、新しいブランドを作るか、既存のブランドのグループに加えるか、それらを組み合わせるか、の3つのパターンがある。既存のブランドを用いる場合は「ブランド拡張」と呼ばれる。ブランド拡張にも、既存のカテゴリ内でカバーする「ライン拡張」と、ブランドは既存だが、新しいカテゴリに参入する「カテゴリー拡張」に分けられる。
新商品発売の際は、どのブランドの名前を使うか選ばなければいけない。3つの方針がある。
●元のブランドとは分けて独立させる
●上位にあるブランドや、会社のブランド名を使う
●サブブランドとして、2つ以上の名前をくっつけて使う。
企業がターゲットにしたいセグメントのすべてが、あるブランドを等しく好意的に見るとは限らない。そのため、セグメントに応じてブランドを管理する必要がある。これをブランド・ポートフォリオという。原則として、潜在顧客が無視されないように範囲を最大化する一方で、ブランド同士の重複は最小化する。
ブランド拡張の利点は、新商品の成功確率を高めることだ。消費者の期待は予測しやすいし、自分に関係がある、と思ってもらいやすい。また、開始の費用を抑えることができる。さらに、ブランド拡張を行うことで、ブランドや便益を刷新し、元のブランドにも好影響を与えることもできる。
一方、ブランド拡張のデメリットは、元のブランドのイメージを悪化させてしまうケースがあること、顧客が混乱する可能性があること、新商品の売上が、既存ブランドからの切り替えによって生まれる可能性があること、また、新商品によって新しいブランドを確立し、新たな資産を築けた可能性を捨ててしまうこと、が挙げられる。
Q: 顧客資産(Consumer equity)とはなにか?
A: 顧客資産とは、すべての顧客の生涯価値の総和のことである。生涯価値は、収益や、顧客獲得コスト、顧客維持コスト、そしてクロスセルに影響される。
ブランド資産と顧客資産は、どちらも顧客のロイヤリティの重要性を強調する点で共通しているが、顧客資産は金融的な純利益に焦点を置くのにたいし、ブランド資産はブランドの管理や、顧客のブランド近くと行った点を重視する点で異なっている。もちろん、ブランド資産と顧客資産はどちらも重要だ。
第12章: 競争に対処し成長させる
Q: 企業にとって、コアビジネスを成長させることがなぜ重要なのか?
A: 企業の独自能力を新規の産業に効果的に転用することは、しばしばうまく行かない。また、新商品カテゴリに参入するよりもリスクが少ない手段でもある。コアブランドの独自性を高めたり、配架を強化したり、コア商品の新しい形状やバージョンを投入したり、といった方法で強化する。
Q: マーケットリーダーは、どうすれば市場全体を拡張し、また、市場シェアを守ることができるのか?
A: マーケットリーダーの戦略は、大きく分けると「市場全体を大きくする」「市場シェアを維持する」「市場シェアをさらに伸ばす」の3つがある。
市場全体を大きくするためには下記の方法がある。
●新規顧客を獲得する
●利用量を上げる: 利用頻度、一回あたりの使用量、利用シーンetc..
市場シェアを守るためには、積極的にマーケティングと、防御のためのマーケティングを行う必要がある。前者については、変化が起きる前に対応することと、満たされていない顧客ニーズを満たす方法を創造することの2つが重要だ。後者については、大きく6つのタイプが有る。
●最も魅力的なポジションを堅持する
●自社の商品にとって弱いところをカバーする商品を持つ
●先制攻撃して、相手を修正に回らせる
●相手の攻撃に対抗してこちらも攻撃する
●市場を大きくして、企業の領域を拡大する
●撤退し、別の市場に集中する
市場を伸ばす際は、「独占禁止法に違反しないか」「経済合理性があるか」「間違ったマーケティング活動を行っていないか」「品質は維持できるか」の4点に留意するべきだ。
Q: 挑戦者ポジションの企業は、どうやってマーケットリーダーに攻撃するか?
A: 挑戦者ポジションの企業は、多くの場合、市場シェアを増やすことが目標になる。マーケットリーダー、同規模の企業でうまく行っていないところ、中小企業のどれに攻撃するのか、もしくは、現状に対して攻撃し、新しい需要を生み出すのか、を決めるべきだ。もし企業を攻めるのであれば、6つのパターンがある。
●競合企業と似たような商品を、同価格帯・同チャネルで展開する
●競合商品が満たしているニーズとギャップを生むような動きを特定し、それを発生させる
●大型の商品をいくつかの領域で発売して、シェアを奪う
●より攻略が簡単そうな市場に進出する
●小さな攻撃(局所的な値引きなど)を断続的に繰り返す
Q: 市場のフォロワーやニッチポジションの企業は、どうやって効果的に競争するか?
A: 市場のフォロワー(マーケットリーダーの動向に追随する)企業の動きは、大きく3つに分かれる。
●名前やパッケージを真似て、リーダー企業商品と僅かに変えた商品を出す
●リーダー企業商品を真似るが、名前やパッケージ等に違いを出す
●リーダー企業商品を受け入れるか改良して、異なる市場で売る
ニッチを目指す企業は、その需要が干上がってしまわないように、常に新しいニッチを作り、広げ、またニッチを守るべきだ。
Q: それぞれの商品ライフサイクルにおいて、どんなマーケティング戦略が適切か?
A: 商品ライフサイクル理論では、商品は「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という4つのステージをたどる、とされている(売上や利益はベルカーブ型になる)。ライフサイクルのパターンは、ベルカーブ型以外にも、成熟した後も一定の需要があり続けるパターンや、盛り上がりが2回あるパターン、カエル跳びのように成長を続けるパターンもある。
導入期においては、売上高は低く、顧客獲得コストは高いため、利益は出ない。しかし競合が少ないため、開拓者としてその市場のリーダーになりやすい。一方で、開拓者であるがゆえに、適切でないポジショニングや、需要がまだない時期に進出してしまい失敗することもある。まずは「商品認知と、お試しを促進する」という戦略を取るべきだ。基本的な商品ラインナップに留め、赤字にならない程度の価格を設定する。
成長期においては、売上が急速に伸びるため、利益も出るようになる。この時期においては、市場シェアを最大化する戦略を取る。商品ラインナップやサービス・保証を充実させると同時に、多くの人が買い求めやすい価格にしよう。マーケティング支出は維持し、市場の教育に努める。商品の改善や促進、配架の増強に投資することで、マーケットリーダーの地位を確立させる。
成熟期においては、市場シェアを維持し、利益率を高めることに注力する。競合に負けない程度の価格設定にして、ブランドの違いや、そのブランドだからこその便益を強調しよう。成熟したブランドを使って市場の拡大を試みたり、商品の改善を通して需要を刺激したり、商品でない要素(価格やチャネル)を修正して需要を刺激したりする方法もある。
衰退期においては、支出を抑え、力の弱いブランドは撤廃する。儲けられる商品だけを維持して利益を享受するか、もしくは、他の会社に売却してしまうのも一つの方法だ。
Q: 不景気のとき、マーケターはどのようにマーケティング戦略や戦術を調整するべきか?
A: 歴史は、不景気時に投資を加速させた企業のほうが、長期的な業績を改善していることを示している。不景気時には、顧客は、要望や、どこでどのように買い物をしたいか、といった要求を変えるかもしれない。その変化に注意を向けるべきだ。
また、不況は、マーケターにとって、支出を見直して効率が悪いものをやめたり、商品ポートフォリオやブランド構築を見直したりするチャンスでもある。価格の割引はできるだけせずに、ブランドが持つ価値や、様々な便益を強調して伝えるべきだ。
第13章: 商品戦略をつくる
Q: 商品の特徴とは何で、マーケターは商品をどのように分類するべきか?
A: 商品には5つの段階がある。
●核となる便益: 顧客が本当に購入している便益
●基本商品: 核となる便益からもたらされる基本的な要素
●期待商品: 顧客が商品を購入するとき、通常期待する要素
●拡張商品: 顧客の期待を超える要素
●潜在商品: 将来商品が提供することになるかもしれない拡張要素
商品の分類には下記のようなものがある。
●商品の性質に基づく: 消費財・耐久財・サービス
●顧客の購買特徴に基づく:
・便利品: 頻繁に購入し、あまり比較検討しないもの
・比較品: 購入するときに比較検討するもの
・特別品: 特別な特徴があって、顧客が努力して購入するもの
・非探索品: 通常は顧客が購入を検討しないもの(e.g. 墓石)
B2B商材は大きくは「素材」と「部品」に分かれる。素材は「自然素材」と「生産素材」に分かれる。
Q: 企業はどうすれば商品を差別化できるか?
A: 大きく分けて、商品の差別化とサービスの差別化がある。
●商品の差別化
・かたち
・特徴
・成果の質
・製造品質
・耐久性
・商品への信頼性
・修理可能性
・スタイル
・顧客ごとに最適化できること
●サービスの差別化
・簡単に注文できる
・配達の質が良い
・作動させやすい
・顧客の指導やサポート
・顧客の相談に乗る
・メンテナンスや修理が手厚いこと
・返品しやすいこと
Q: なぜ商品のデザインは重要か?どのような方法が取られるか?
A: デザインは、混み合った売り場においては、商品を目立たせるほぼ唯一の要素である。また、長く利用される耐久財(車など)においては、特に重要だ。デザインによって、顧客の体験がより特別なものになることもある。
デザインのアプローチには、特に決まった手法はないが、いくつかの決まった型も存在する。(観察→アイディア出し→チームでデザインを生む)
Q: どのように高級ブランドを管理するか?
A: 高級ブランドは、長い間、社会的地位であり、顧客が誰であるか、もしくは、誰になりたいかを示していた。高級ブランドのマーケティングは、かきのことに注意する必要がある。
●高級なイメージを保つこと
●高級ブランドはしばしば、無形ブランド属性や野心的イメージを伴うこと
●高品質のイメージを崩さないマーケティング活動を行うこと
●ブランド名だけでなくブランド要素も、ブランド資産の重要な要素であること
●二次的な属性(連想されるセレブなど)がブランド資産を強化することもある
●流通チャネルにも気を配る
●割引せず、プレミアム価格を維持しなければならない
●競合の高級品は幅広く定義すること
●商標等は法的に守り、盗用とは積極的に戦うこと
Q: 消費戦略において考慮するべき環境要因はなにか?
A: 環境に悪影響を与えないようにすることが重要だ。
Q: どうすればプロダクトミックス・商品ラインナップを構築し管理できるか?
A: 商品ポートフォリオを考えるとき、商品ミックス(商品のかたまりの集合体)の観点からは、4つの視点がある。
●幅: 会社が持っている商品ライン(似たような機能を持つ商品群の集合体)
●長さ: 商品ミックスにおける総商品数
●深さ: 各商品ラインナップの中にある種類の数を
●一貫性: 各商品ラインがどの程度密接に関係しているか
各商品ラインを分析するときは、売上と利益に注目したり、商品ラインを競合の商品ラインと比較して位置づけたりする。
商品ラインを伸ばすときは、現在の範囲を超えて商品ラインを伸ばす「ライン拡張」と、既存の範囲でさらに充実させる「ライン充実」の2つの方向性がある。
ライン拡張は、新規参入先が、下の市場、上の市場、どちらにも参入する、の3パターンがある。下の市場に参入する場合は、コアブランドとのカニバリといったリスクに留意する必要がる。
環境変化が激しい昨今の市場においては、ラインナップのリニューアルや、いくつかの商品に絞って集中させたプロモーション、売れ行きが悪い商品の剪定は継続的に必要だ。
商品の価格を考える際にも、いくつかのバリエーションが有る。
●商品ラインに沿った価格設定
●オプション機能の価格設定: 基本価格とは別にオプションを用意し、顧客がカスタマイズできるようにする。
●補助機能の価格設定: 特定の条件をつけることを前提にした価格設定
●2種類価格設定: 固定費用 + 使用に応じた料金 という価格設定
●副産物の価格設定: 商品の生産過程から生じた副産物を販売する
●バンドル価格設定: いくつかの商品をひとかたまりにして販売する
一つの商品に2つのブランドを付与したり、特定の原材料が入っていることをブランドの特徴にしたりすることがある。2つのブランドを付与する場合は、顧客の頭の中で混乱しないように注意して管理する必要がある。原材料をブランドの特徴にするときは、十分な認知を気づく必要がある。また、顧客が、その原材料が重要だし、それは他の原材料とは違っていて、その商品にはたしかにそれが入っているのだ、信じることが必要だ。
Q: 企業は、パッケージやラベル、保証をどのようにマーケティングツールとして使えるか?
A: パッケージは、「5つ目のP」と言われるくらいに重要だ。買い手にとって最初の接点がパッケージである。マーケティングツールとして使うためにはいくつかの要素がある。
●効果的なパッケージは、顧客の目を引くことなど、いくつかの機能をそれ自身でこなす必要がある
●顧客に、「少しくらい便利な(だけど高価な)ものを買っても良い」という余裕をもたらす
●企業やブランドのイメージを伝える
●イノベーションの機会をもたらす
マーケターは、色をはじめとして、パッケージの機能的・美的要素を、パッケージに課された目的を達成し、顧客の要望を満たすように、選ぶ必要がある。また、ブランドの関与度を保つために、パッケージのリニューアルは頻繁に行われる。
商品についているシンプルなラベルも、いくつかの機能を果たす。商品やブランドを特定のものと示す、商品の東急や特徴を示すetc...
商品の保証は、その商品の品質を担保する役割を担う。
第14章: サービスを設計し管理する
Q: どうやってサービスを定義・分類し、商品と分けるか?
A: サービスとは、無形で、誰にも所有されない、ある側から別の側へ提供される行為や成果のことである。商品とサービスの区分は、
●有形商品だけ: シャンプー
●有形商品に付属するサービス: 車 + 保証
●有形商品と無形サービスの併合: レストラン
●無形サービスに、商品やサービスが付属: 飛行機の旅
●無形サービスだけ: マッサージ
サービスを特徴づけるものは4つある。
●無形成: サービスは目に見えない。その品質を示すために、目に見える要素を用いることもある。
・場所
・人
・設備
・コミュニケーション(文章や写真)
・シンボル(名前やロゴ)
・価格(5分またせたら1000円支払います)
●不可分性: サービスは、作られたその瞬間に消費される。
●変化性: サービスは誰が・誰に・いつ・どこで提供するかによって品質が大きく異なる。品質を管理するためにできることは、
・良い雇用と訓練に投資する
・プロセスを標準化し組織に浸透させる
・顧客満足度を監視する
●腐敗性: 需要が増大すると、サービスの品質が落ちることがある。それを防ぐためには、需要側をコントロールする方針としては
・異なる価格設定にして、ピーク需要をずらす
・ピークでないときの需要を掘り起こす
・保管サービスを行う
・予約制度を設ける
供給側でできることとしては
・パートタイマーの雇用
・ピーク時の効率的なプロセスを設定
・顧客に一部を代行してもらう
・他とサービスを共有する
・将来の拡大に向けて設備に投資する
Q: 新しいサービスの現実はなにか?
A: 大きく3つの潮流がある。
まず、顧客は商品サポートサービスに精通し、彼らが欲しい物を自分で選びたがっている。更に大事なことに、インターネットが、顧客に、彼らのコメントを簡単に世界中へ広げることを可能にした。不満を持った顧客は、それを広めるために批判的な動画をつ悪かもしれない。そのためにも、顧客が不満を口にしたとき、企業は迅速に対応しなければいけないし、もっと大事なことは、将来それが起きないように務めなければいけない。
顧客は、ただサービスを買うだけでなく、価値の伝達においてより積極的な役割を果たしている(口コミなど)。顧客は、サービスに積極的に関わることができれば、より多くの価値を感じ、サービス提供者との強いつながりを感じる。一方、たとえ顧客側に問題があっても、企業側は、それに対処する必要がある。それを発生させない方針としては、
●プロセスを作り直し、シンプルなものにする
●適切な技術を用いて従業員や顧客をサポートする
●扱いになれている顧客を作り、彼らに役割をもたせる
●顧客が互いに助け合う文化を作る
また、従業員の肯定的な態度は、顧客のロイヤリティを強固にする。そのためにも、企業は最善の従業員を雇用し、彼らを魅了しなくてはならない。
Q: どうすれば企業は優れたサービスのマーケティングを行えるか?
A: サービス業界のマーケティングには3つの側面がある。企業から顧客へのエクスターナル・マーケティング、企業から従業員へのインターナル・マーケティング・従業員から顧客へのインタラクティブ・マーケティングである。エクスターナル・マーケティングだけでなく、従業員に対しても、また、従業員から顧客へのマーケティングも重要である。同時に、発展する技術を用いて利益を獲得したり、サービスを改善することも大事だ。他にも、優れている企業には下記のような特徴がある。
●ターゲット顧客に対する明確な理解を持ち、欲求を満たすような戦略を発達させている。
●サービス品質に対しての、トップマネジメントのコミットメントがある。
●品質についての高い基準を定めている。
●自分たちを応援してくれる存在に対して投資をしている
●自社と競合のサービス評価を定期的に監査している。
●不満を言う顧客に真摯に対応して満足させる。
サービスの評価は「顧客にとっての重要度」と「企業のパフォーマンス」という2軸で評価するといいだろう。重要度が高いのにパフォーマンスが低いところに集中する。
また、自社のサービスを差別化し、コモディティにならないようにすることが重要だ。人々や過程に付加価値をつける以外にも、「顧客が期待しているもの」以外の便益を二次的付加価値として提供することもできる。同時に、サービスのイノベーションを行うことも重要だ。
Q: どうすればサービス品質を改善できるか?
A: 成功している企業は、顧客を満足させるだけでなく、期待を超えて彼らを感動させている。価値伝達に成功していない場合、下記5つのギャップがあるとされている。
●顧客の期待と、経営陣の認識のギャップ: 意思決定者が、顧客の期待値を正しく理解していない
●経営陣の認識と、サービス品質の具体化のギャップ: 意思決定者の認識を正しく具体化できていない
●サービス品質の具体化と、サービス伝達のギャップ: 従業員が十分に訓練されていない
●サービス伝達と、外部コミュニケーションのギャップ: 企業の評判や広告によって顧客の期待が影響を受けている
●認知しているサービスと期待しているサービスのギャップ: 顧客がサービス品質を誤って知覚している
サービス品質は、下記5つの要素で定義される
●信頼性: 約束したサービスを提供する
●反応性: 困っている顧客を助け、すぐにサービスを提供する
●保険: 従業員に知識があり、信頼できる
●共感: 顧客に、個別の注意を向けている
●有形資産: 目に見える施設や設備
同時に、一部のサービスを、顧客自身にやってもらうための技術を活用することで、サービスをより正確に伝達できる。導入する際は、顧客が、自身の役割をはっきりと自覚し、それによる便益を知っていて、顧客自身がそれができると思っている必要がある。
Q: どうすれば商品サポートサービスを改善できるか?
A: 顧客は、商品サービスに付いては、大きく3つの心配事を持っている。
●信頼性: どれくらいの頻度で壊れるだろうか?
●ダウンンタイム: 一回のインターバルにどれくらいの時間が必要だろうか?
●自己負担費用: どれくらい追加のお金がかかるだろうか?
最高のサービスを提供するために、顧客が最も重視している価値や、彼らの中での重要性を知る必要がある。
顧客サービスは、当初は自分たちのパーツやサービスを運営することから始まるが、次第に、修理やメンテナンスは自分たちが認定したディーラーや流通業者に任せることもある。同時に、このようなサービスでどうやってお金を儲けるのかも、考えなくてはならない。
第15章: 新商品を導入する
Q: 新商品はどのように分類されるか?
A: 新商品は、大きく分けると「買収」と「創作」の2つに分かれる。買収が全てうまくいくわけではないので、企業は、自社のマーケティング部門と連動させた開発部門を組織して、新商品を生み出す必要がある。新しい市場に新しい商品を投入するパターンから、既存商品のマイナーチェンジまで、新商品の幅は広い。
Q: 新商品や新サービス開発の際、企業はどのような困難に直面するか?
A: 環境変化が激しい状況においては、イノベーションは必須である。IDEOのCEOによれば、イノベーションとは「競合ができないような”新しい選択肢を作ること”」だ。
大企業は、既存の商品を少し改良して新しい市場に参入する「漸進的イノベーション」に集中する。新興企業は、破壊的技術を用いて「破壊的イノベーション」を起こす。研究によると、成功に必要なのは、独自性があって優れている商品だ。また、明確に定義された商品コンセプトも重要である。
新商品が失敗するケースは、例えば下記がある。
●市場が小さすぎた
●社会的・経済的・または政府からの成約
●開発費用が高すぎる
●資本が足りない
●開発期間が短い
●発売時期が悪い
●商品ライフサイクルが短い(すぐ模倣される)
●組織的な支援が得られない
真に革新的な企業は、失敗は成功に必要なことだ、と受け入れている。また、失敗はアイディアの終着点ではない。
Q: 新商品開の全体像を見るためにマネージャーが用いている組織的な構造やプロセスはなにか?
A: 新商品を開発するために、経営陣は、ビジネス領域、商品カテゴリや、特徴を定める必要がある。そのうえで、新商品開発に必要な予算を割りあえてる。組織化の方法としてはいくつかあり、
●既存ブランドマネージャーを割り当てる: 既存ブランドの管理で手一杯の
ことも多い
●新しいプロダクトマネージャーをや取る
●新しい商品のための部署を設立する: 新しい土地に”イノベーションセンタ
ー”を設立することもある。
●部門をまたいで、ベンチャーのような小さいチームを作る
●クラウドソーシング: 部外者に意見を求めたり、必要な役割を任せる
●いくつかの段階に分け、順を追って精査する(後述)
Q: 新商品やサービスを開発する際の主なステージはなにか?
A: 下記の通り
①アイディア発想: 熟慮する価値があれば②へ
②商品アイディアが、会社の目的、戦略、資産に適合していれば③へ
③顧客が試したいと思うようなコンセプトができれば④へ
④費用対効果があり、実行可能なマーケティング戦略が構築できれば⑤へ
⑤利益面でビジネス目標を達成できれば⑥へ
⑥技術的に、また、商業的に適切な商品が開発できれば⑦へ
⑦テストマーケティングで、期待通りの成果が出せれば⑧へ、出せなければ⑥へ差し戻すことを検討
⑧新商品が売上目標を達成していれば、来年以降のプランを練る。達成して
いなければ、商品やマーケティングプランを見直す
Q: アイディア生産の最良の方法は何か?
A: 従業員からの意見を拾い上げたり、外部の顧客や、科学者等の意見を取り入れることでも生まれる。例えば、顧客から新しい発想を得るには
●顧客が商品をどのように使っているか観察する
●顧客に、商品の問題点について聞く
●顧客に、彼らの理想的な商品について聞く
●自社のアイディアについて、顧客にコメントを貰う
●新しいアイディアのためのウェブサイトを使う
●自社商品について語ってくれるようなブランドコミュニティを組織する
●顧客に、商品の改善案を出してみてくれと挑戦する
ただし、顧客に聞いても”顧客がほしいとわかっているもの"しか出てこないことに注意しよう。
他にも、アイディアを刺激する発送法には以下のようなものがある。
●商品の属性をリストアップして、それを変えてみる
●いくつかのアイディアを並べ、それをむりやりつなげてみる
●あるお題について、様々な角度から考えてみる
●通説を並べて、それをひっくり返してみる
●よく知っているプロセスを、新しい文脈においてみる
●連想をもとにマインドマップを作る
アイディアを評価するときは、様々な指標に基づいて評価して、弱いアイディアをふるい落とす。例えば、技術的に可能化、利益が出そうか、売れそうか、という3つがある。
Q: コンセプトや戦略の開発を管理する最良の方法は何か?
A: 以下の手順で行われる
●コンセプトの開発とテスト
・コンセプト開発: ”誰が使うか””主要な便益は何か”"どんなときに使うのか"の3つを軸にコンセプトを開発する。最も最適だと思われるものを定めたら、それが他の市場でどのように位置づけられるのかを考える。(例えば2x2の4象限で整理)。次に、その商品コンセプトが位置づけられる象限を(例えば2x2の)セグメントで分け、どんなブランドの位置づけになるかを考える(ブランドコンセプト)。
・コンセプトテスト: 実際の消費者にブランドコンセプトを見せて、反応をもらう。VR等を使うのもいいだろう。反応をもらったら、下記の項目について検討する。
・便益がちゃんと伝わっていて、それは信頼されるか?
・この商品はあなたの問題を解決するか?
・その問題は他の商品で解決されているか?
・価格は適正だと思うか?
・買いたいと思うか?
・誰が使うと思うか?どんなところで、どれくらいの頻度で買う
と思うか?
・コジョイント分析: 消費者に選択肢を見せて、どれが利用価値がある
かを順位付けしてもらう。最大と最小の差が大きいほど、感応度が高
く、重要性が高い属性であると言える。
●マーケティングストラテジー: 以下の3つの要素を含める
・ターゲット市場の大きさや構造、顧客の行動
・価格、チャネル戦略、初年度のマーケティング予算
・長期的な売上と利益の目標と、マーケティング戦略
●ビジネス分析: 実際の売上と、利益を、ファイナス部門等と一緒に計算す
る。
Q: 新商品の商品化を管理する最良の方法はなにか?
A: 商品開発にあたっては、まず、顧客にとって望ましい属性をリストアップした上で、それらを、エンジニアにとっての属性に置き換える。そのうえで、簡単なプロトタイプを作成する。プロトタイプができたら、想定顧客にテストしてみる。
敬意英人も含めて機能的・精神的なパフォーマンスに満足できたら、ブランドの名前やロゴ、パッケージを決めていく、その上で、テストマーケットを行う。B2C商材の場合は、下記の要素をモニタリングする。
●初回購入
●初回リピート
●受け入れ率
●購入頻度
方法としては、下記が代表的である。
●最初だけ無料で試してもらった上で、5回商品をオファーし、どれくらい
買ってもらえるかを試す
●広告を見た上で商品を見てもらうという実際のマーケティングを試す
●一部の店舗や都市に絞って、配架等を変えて様々なパターンを試して見る
●都市を限定して実際にマーケティングを行う
B2B商品の場合は、ベータ版として実際に使ってもらい、フィードバックを得る方法がある。
商品販売においては、下記の要素が重要だ。
●いつ: 初めての参入者か、同時か、遅れて参入するのか?
●どこに: 全世界か、一部の国化、一部の都市か?
●誰に: 最初に、配架やプロモーションのターゲットとするのは誰か?
●どうやって: 最初は顧客のどの接点に時間とお金を使うのか?
Q: どのような要素が、新発売された商品・サービスの配架率や顧客の受け入れ度合いに影響を与えるか?
A: 一人の顧客は一般的に、認知→興味→評価→試し→受け入れる、というプロセスを踏む。一方、人々の集団は、5つに分かれるとされている。
●イノベーター: 新しい商品や技術に飛びつき、初期の問題点を報告することをいとわない人
●アーリーアダプター: 自分にとって利点があるかもしれないと思えば、積
極的に試す人
●アーリーマジョリティ: 自分にとって利益があると証明されれば導入する人
●レイトマジョリティ: 懐疑的で、リスクがないとわかるまで試さない人
●ラガード: 伝統に固執していて、最後まで抵抗する人
また、個人間の口コミも、顧客の行動に影響を与える。
複数のイノベーションが競合したときにどちらが優勢となるかは、主に下記の指標で決まる、とされている。
●比較優位: 他商品と比べたときにどちらがより優れている点があるか
●互換性: 顧客の価値観やこれまでの体験に、どちらがより当てはまるか
●複雑性: どちらがよりわかりやすいか
●分割可能性: 限られた資産で、どちらがより試しやすいか
●伝達可能性: どちらが、便益をコミュニケーションしやすいか
●その他: 費用、リスクや不確実性、信頼度、社会的な受容度etc...
第16章: 価格戦略を創る
Q: 顧客はどのように価格を評価するか?
A: 顧客が自身の頭の中に「参照価格」を持っていて、それと実際の価格を比較しているケースがある。その参照価格は、様々な要素で決められるが、たとえば
●適正価格: 顧客が、この商品にはこれくらい支払える、と思っている価格
●一般的な価格
●最後に支払った価格
●最高でもこれくらいまでしか支払えない、という価格
●最低でもこれくらいは支払う、という価格
●競合商品の価格
●将来に期待する価格
●通常の特売価格
他にも、品質を暗示するものとして価格を判断したり、価格の末尾に敏感に反応したりする(9で終わるとお得感がある、等)
Q: 企業は、商品やサービスの最初の価格をどのように決めるべきか?
A: 大きく6つのステップがある。
①価格設定の目的を選択する: 下記のような目的がある
・短期的な生き残りをかける
・利益率を最大化する
・市場シェアを最大化する
・上層吸収を最大化する(最初に高値をつけて買ってもらい、徐々に価
格を落とす)
・製品品質におけるリーダーとなる
・その他(NPOなどは、一部のコスト分だけの価格設定をする)
②需要を測定する:
・その商品の価格感応度を調べる
・価格を変化させたときの需要の変動を調べる
③費用を推定する: 変動費や固定費を合計した総費用を概算し、販売個数に応じて1個あたりの費用を計算する。個数が増えるほど1個あたりの変動費が下がっていく(経験曲線)現象を織り込む方法もあるが、リスクは高い。また、あらゆる努力でコストを下げられないか検討する。
④競合の費用・価格・提供価値を調べる: 発売時に競合がどのような手を打
ってくるのかを想定する。低価格・高品質の競合は、顧客の頭に浮かびや
すい。
⑤価格ぎめの方法を選択する: 下記のような方法がある
・マークアップ: 費用に、利益を上乗せした価格。推奨されない。
・目標収益: 目標ROIを達成するような価格設定。損益分岐点の分析も行
っておき、リスクを認識する。
・知覚価値: 競合価格から、自社商品ならではの便益を積み上げ、その
対価として価格を設定する。顧客がその要素を本当に対価として受け
取れるようにすることが重要だ。同時に、競合よりも独自の価値を持
つことを、流通業者に見せる必要がある。
・バリュー: 自社のオペレーションを改革し、低価格・高品質で提供す
る。コストを削減しかつ品質を落とさないことで顧客を獲得できる。
・EDLP: 常に低価格である代わりに、特別な割引も行わない。しかし、
顧客がこの価格に慣れ、通常価格に疑問を抱くリスクも有る。
・競合: 競合が設定している価格に倣って価格を設定する
・オークション: オークションによって価格を決める。
⑥最終的な価格を決定する: 最終的な価格は、他社と比較したときのブラン
ド品質や広告される便益を考慮されるべきだ。同時に、会社の価格ポリシ
ーとも合致していなければならない。
Q: 変化する環境や機会を活かすために、企業はどのように価格を変えるべきか?
A: いくつかのパターンがある
●地理による価格設定: 異なる国や場所員いる顧客に異なる値段で販売する
●割引や手当: 早めの支払いに対して割引をしたり、中間の顧客に応じて割
引をしたりする。
●プロモーションの価格設定: 下記のようなものがある
・ロスリーダー価格: 有名なブランドを安く販売して店舗に人を集める
・行事価格: 季節行事等の特別なときに値段を下げる
・特別顧客価格: 限定した顧客にだけ特別に割引する
・現金での払い戻し
・低金利での融資
・より長い支払期間
・保証やサービスの契約
・心理的な割引: ”今なら〇〇円!”など
●差別した価格
・異なる顧客セグメントに対して異なる価格
・異なる形態の商品を出す
・イメージの違いを理由に価格を変える
・チャネルごとに価格を変える
・場所によって価格を変える
・時間限定で価格を変える
差別した価格での販売を成功させるために注意するべき点は、
●市場が分割可能で、需要の強度が異なっていること
●低価格で手に入れた顧客が再販売できないこと
●競合が、より高い価格で打っているセグメントに対して低価格で販売でき
ないこと
●販売費用が、収益を超えないこと
●合法であること
Q: いつ、どのように、企業は価格を変更するべきか?
A: 価格を下げる際は、製造キャパシティが余ってしまっているときか、低価格で市場シェアを伸ばしたいときだ。価格を下げることによるデメリット(低品質とみなされる、もともとのセグメントを競合に奪われる等)に留意しながら行うべきだ。
価格を上げる際は、費用のインフレか、需要が逼迫しているときが主な理由だ。価格の上げ方としては、「最終的な配達完了まで価格を決めない」「インフレ分を相手に転嫁する」「バンドルをやめる」「割引を減らす」等がある。
Q: 競合の価格変更に、企業はどう対応するべきか?
A: 均質性の高い商品市場では、値下げに対しては、その商品を強化することができないかまず考えるべきだ。値上げの場合は、それが合理的でなければ、追随する必要はない。
均質性の低い商品市場では、対応は下記3つのどれかになるだろう。
●商品やサービスを更に差別化する
●低価格の商品を投入する
●低価格プレイヤーとして再出発する
第17章: 統合されたマーケティング・チャネルを管理する
Q: マーケティング・チャネルシステムとバリューネットワークとはなにか?
A: マーケティング・チャネルシステムとは、ある企業が利用しているマーケティング・チャネルの集合のことである。管理の方法としては大きく2つの方向性があり、プッシュ(チャネルに、販売を働きかける)とプル(顧客に働きかけ、需要を増やす)の2つがある。
バリューネットワークとは、資源を得、増やし、その商品を伝達するために企業が創造する、パートナーシップや同盟のシステムのことである。近年はデジタル革命によって、流通戦略にも大きな変化が起きている。
Q: マーケティング・チャネルはどのような仕事をしているのか?
A: チャネルの仕事は、商品を生産者から消費者へと動かすことである。一方、消費者から生産者への情報伝達も重要な役割である。
Q: チャネルはどのようにデザインされるべきか?
A: 4つのステップを踏む
①顧客の欲求や要望を分析する: チャネルが提供する5つの価値について、顧
客にとってどれが望ましいのかを検討する。
・望ましいロットのサイズ
・待ち時間や配達時間
・場所(配架)の利便性
・商品の種類
・追加サービス(保証、修理など)
②チャネルの目的と成約を明示する: 配送距離をできるだけ少なくすること
なのか、できるだけ多くの顧客に届けることなのか、など
③主なチャネルの選択肢を特定する: 3つの観点を考慮する
・流通の種類(直接売るのか、オンラインかetc...)
・業者の数: 厳選したいのか、一部だけを使うのか、できるだけ多くし
たいのか
・契約: 価格について、販売エリアについて等の契約内容はどうか
④主なチャネルの選択肢を評価する
・経済的基準: 単位あたりの売上と費用のバランスはどうか?
・管理可能性: 企業の目的にそって流通させられるか?問題が起きない
ように管理できるか?
Q: チャネルを管理する際、企業はどのようなことを決定するか?
A: チャネルシステムを選択したら、実際の業者を選択し、訓練し、動機づけ、評価する必要がある。
●選択: 顧客にとっては、チャネルこそが企業に移る。基準を持って、最高
の業者を選ぶ必要がある。
●訓練: 流通業者が顧客にどんな価値を提供して欲しいのかという基準を定
め、それを伝えられるように訓練する必要がある。訓練のためには、下記
5つの権力を用いることもある。
・強制力: 従わなければ契約をやめる、というたぐいのもの
・報奨: 報いれば特典を出す
・正当性: 正当だと思われる要求をする
・専門性: 製造者が知っている、業者にとって価値あることを使う
・準拠力: 業者にとって魅力的な実績がある
●パートナーシップ: 特定の業者と長期の契約を結ぶことがある
●チャネルメンバーを評価する: 在庫レベル等を定期的に評価する
●チャネルを調整する: 商品サイクルや外部環境に応じて調整する
国外展開するためにチャネルを設計するときは、まず顧客に近づき、どのように受け入れられるのかを判断する。
Q: 企業はどのようにチャネルを統合させるか?
A: 垂直マーケティングシステム(VMS)は、生産・流通・小売が一台となって活動することである。
●コーポレートVMS: 所有権を一つの企業が保つ
●管理型VMS: 規模や権力がある企業がリードする
●契約型VMS: 契約書に基づいて統合する
一方で、水平マーケティングシステム(HMS)は、同じステージにある複数の企業が、資源や活動を合同で行うことである。
Q: Eコマースにおける重要な問題はなにか?
A: 消費者調査によると、オンラインでの買い物を阻害する大きな要因は、喜ばしい経験・社会的な交流・会社の代表との個人的相談がないことである。顧客を満足させるために、アバターを採用する企業もある。また、個人情報保護は重要であり続けている。B2Bの場合は、価格の透明性が重要だ。オンラインとオフライン両方のチャネルを管理することが重要だ。
Q: Mコマースにおける重要な問題はなにか?
A: 顧客は、スマートフォンを、割引などのオトクな情報を探索するために使っているため、割引施策の反応率は紙よりも良い。一方で、認知や説得と行った広告の役割は果たしづらくなっている。地理的に範囲を指定して、そこに顧客がいるときにだけクーポンを配信する、という施策もできる。
Q: 企業はチャネル間の衝突をどう管理するべきか?
A: チャネル間の衝突には「同じ段階のチャネル構成員の衝突」「異なる段階の衝突」「複数のチャネル間の衝突」の3つのパターンが有る。基本的な原因としては、「目標が食い違っていること」「役割や棲み分けが不明確なこと」「展開についての知覚が異なること」「業者が独立していること」等が挙げられる。
衝突に対処する方法としては、下記のようなものが上げられる。
●戦略的正当化: チャネル構成員が思っているほどの衝突は発生しないと説
得する
●二重の妥協: 既存チャネルに、新規チャネルから発生した売上分を補填す
る
●上位目標の設定: 対立している構成員同士が合意できる上位目標を設定す
る
●互いの従業員を交換する
●お互いに人を出して協会を設立する
●組織の人選を共同で行う
●お互いから人を読んで協議したり、第三者を呼んで調停してもらう
●法的に訴えて決着をつける
複数のチャネルを管理するとき、ブランド資産を既存したり、カニバリが発生したりしないようにする。また、法的・倫理的問題がないようにすることも重要だ。
第18章: 小売店・卸・ロジスティクスを管理する
Q: どのような種類の仲介業者がこの分野に存在するか?
A:店舗を持つ百貨店を始めとした小売店の他に、店舗を持たない小売店も存在する。カタログ販売に起源を持つ直販モデルや訪問販売、自動販売機もそれに該当する。フランチャイズ店舗やチェーン店舗といった形態も存在する。
Q: 共創的な市場の構造や、技術という点で、現代の小売マーケティング環境における主要な変化は何か?
A: 小売の環境環境の変化という意味では、下記があげあられる
●新しい形態: ある小売店が別の業態と結合することで新たな形態を生み出している(e.g. 本屋+カフェ)
●巨大企業の成長: ウォルマート等の巨大企業がますます成長し、一部の巨大小売業は特定のカテゴリに集中している。
●垣根を超えた競争: 例えば百貨店は、同じ百貨店同士だけでなく、他の小売店の動向も気にする必要がある。
●迅速に反応できる小売店の出現: 従来の小売店とは全く違いサプライチェーン構造を持つ小売店の出現(ZARAなど)
●中規模業者の現象: 現在は、大規模小売店か、小規模小売店のどちらかが大勢を占めている。
デジタル技術の役割も拡大している。小売のビジネスのあらゆる段階で影響を与えているし、顧客の購買行動にも影響している。小売側のコミュニケーションも、デジタルを統合させたものに発達している。
Q: どのようなマーケティングの意思決定を、仲介業者は行っているか?
A: 下記が挙げられる:
●ターゲット市場
●チャネル
●商品ラインナップ: カテゴリの多さや、カテゴリ内の種類の多さ
●調達
●価格: 販売数量x利益額の最大化を狙う
●サービス
・購買前サービス: 電話やメールでの受注など
・購買後サービス: ギフトラッピングなど
・補助サービス: 駐車場など
●店舗の雰囲気
●店舗での活動や経験
●コミュニケーション
●店舗の立地
Q: プライベートブランドの未来はどのようなものか?
A: プライベートブランドとは、小売業者や卸売業者が展開しているブランドのことで、小売業者にとっては、より利益率が高く、また、彼らを競合から差別化するためのポイントとして位置づけられている。
成功のポイントは、店舗で扱っている商品よりも良い品質を提供することや、魅力的で革新的なパッケージを強調する(強調できる棚に置く)ことだ。
メーカーにとって、プライベートブランドと戦うには、
●選択的に戦うこと
●効果的に協働すること
●革新を起こすこと
●機能面だけでなく、イメージでも勝てるポジションを構築すること
Q: 卸売業者の重要な問題はなにか?
A: 卸売業者は様々なプレッシャーに晒されている。新たな競合の出現や、より要求してくる顧客、新技術、そして、直販の流れだ。彼らはバリューチェーンに付加価値をつけるために、資産の生産性を上げ、オペレーション費用を切り詰め、また、彼らの戦略的な意思決定を改善しなくてはいけない。しかし、値上げに対する抵抗や、コストと品質に基づいたふるい分け、メーカーの直販へのシフトと行った逆風が吹いている。
Q: ロジスティクスにおける重要な問題はなにか?
A: マーケットロジスティクスとは、原材料から最終製品になるまで、また、それらが使われて需要を満たすまでの、インフラを計画し、実行し、制御することである。意思決定の際には4つのステップがある。
●企業の、顧客に対する価値の位置づけを決める
●最良のチャネルを選び、ネットワークを構築する
●オペレーションエクセレンスを発達させる
●解決策を実行する
意思決定のポイントは主に4つである。
●どのような過程で受注を処理するか?
●どこに在庫を置くか?
●どれくらいの在庫を置くか?
●どのように商品を運ぶか?
第19章: インテグレーテッド・マーケティングのコミュニケーションをデザインし管理する
Q: マーケティングコミュニケーションの役割はなにか?
A: マーケティングコミュニケーションの役割は、企業が、顧客に対して、自社が売っている商品やブランドについて、直接的に、また間接的に、伝え、言い聞かせ、思い出させようとする手段のことである。顧客に対して、商品がなぜ・どのように使われているか、誰によって、いつ、どこで使われているのかを見せる働きもする。
Q: マーケティング・コミュニケーション・ミックスとはなにか?
A: 主に8つの要素からなる。
●広告: お金を払って行うコミュニケーション
●セールスプロモーション: 短期的なインセンティブやお試し促進の値引き
●イベントや経験: 会社手動の活動やプログラム
●PRやパブリシティ: 社員や顧客、メディアに向けて会社や商品のイメージ
を促進したり改善したりする
●オンラインやSNSのマーケティング: オンラインでの活動
●モバイルマーケティング: 顧客のスマートフォンに現れるコミュニケーシ
ョン
●ダイレクト・データベースマーケティング: メールや電話を使って顧客に
直接働きかける
●個人販売: 対面等で直接販売する
しかし、すべてのブランドのタッチポイントはコミュニケーションであり、顧客の会社に対する見方を強めたり弱めたりしている。
Q: マーケティング・コミュニケーションはどのように働くのか?
A: マクロモデルでは、下記9つの順番で作用するとされている。
①発信者が、
②伝えたいことを変換し、
③メッセージ(WHAT)とメディア(HOW)とする
④それが解釈されて、
⑤受信者に伝わる
⑥受信者がそれに対して反応し、
⑦フィードバックとして企業に伝わる。
⑧上記のプロセスで、ノイズが入る。
顧客のコミュニケーションへの反応に焦点を当てたモデルには、様々なものが存在するが、例えば
認知→学習→関連付け→選好→納得→購買
というようなプロセスが存在する。扱う商品やブランドの関与度や差別化の度合いによって、「感じる」「学習する」「行動する」の順序が異なる。その順序を把握した上でコミュニケーションを作るべきだ。
Q: 効果的なコミュニケーションを作る主なステップはなにか?
A: 主には6つのステップで行われる。
●ターゲットとなる顧客を特定する: 利用段階(未認知・未利用・過去利
用・利用・高頻度利用)とロイヤリティ(高/低)を軸にすると良い。
●コミュニケーションの目的を定める: 以下の4つが主な目的になる。
・カテゴリーニーズを喚起する
・ブランドの認知を高める
・ブランドへの態度を構築する
・ブランド購入意向を喚起する
●コミュニケーションをデザインする
・何を発信するか: 合理性・感情・社会的・自己満足のどのタイプか?
・どうやって発信するか
○インフォメーショナル: ロジックや合理性を武器に、ブランドの
属性や便益を伝える。
○トランスフォーメーショナル: 商品に関係のないイメージや便益
を伝える。どんな人が使っているか、どんな気持ちになるか、な
ど。購入の意欲を高める感情を喚起させる。
・誰が発信するか: 専門性、信頼度(中立性)、選好が重要だ。
●コミュニケーションチャネルを選択する
・属人的なもの:
○宣伝: 会社の人が買い手にコンタクトを取る
○専門家: 会社と独立した専門家が、ターゲットに対してメッセージ
を伝える
○社会的コミュニケーション: 隣人や友人から伝えてもらう。特に中
小企業にとっては、口コミが重要だ。
・非属人的なもの: 広告や販促、PRなど。
・複数のチャネルをあわせる事が重要。例えば、マス広告で商品を知っ
た人々が口コミを発生させることで、ターゲットに届くこともある。
●予算を設定する: 目的と、それに必要な作業を明確にし、それにかかるコ
ストを積み上げて予算設定をするべき。「使える分だけ使う」や、売上
の%で予算を設定するのは悪手だ。コミュニケーションと、商品改善やオ
ペレーション改善の間の予算配分は、商品ライフサイクルの段階や商品の
タイプによって異なる。
Q: コミュニケーションミックスは、どのように設定され、評価されるべきか?
A: 設定の際には、例えば下記の要素を考慮するべきだ。
●商品市場のタイプ: B2C市場であれば販促や広告に、B2B市場であれば対人
販売を中心とすることが多い。複雑で、高価で、危険度が高いほど、ま
た、売り手が少なく・大きくなるほど、対面販売が使われやすい。
●買い手の状態: 認知させるためには広告やPRが有効だし、購入促進や、リ
ピート促進には、販促が有効だ。
●商品ライフサイクルのステージ: 導入期には広告が有効だ。成長期には口
コミや一貫したマーケティングが重要だ。成熟期にはイベントや経験
の提供が重要になり、衰退期には、販促が中心になる。
マーケティングコミュニケーションの評価には、目的に応じて、認知向上率やブランド態度の変化、購入数やリピート率などを指標として設定するべきだ。
Q: インテグレーテッド・マーケティングコミュニケーションプログラムとはなにか?
A: 顧客が受け取るすべてのブランド接点や、商品・サービス・組織の感じ方が、ずっと、顧客に関係があり、一貫していていることを担保するようにデザインされたコミュニケーションのこと。
統合されたマーケティング・コミュニケーションは、メッセージの一貫性を強め、ブランド資産の構築や、売上への影響を強化する。
第20章: マス・コミュニケーションを管理する
Q: 広告プログラムを立案するためのステップはなにか?
A: まず最初に、ターゲットとなる市場と、買い手の動機を明らか位にする事から始めるべきだ。そのうえで、下記の5つの要素を定める。
●Mission: 広告の目的はなにか?
●Money: 広告に使う予算はどれくらいか?
●Message: 広告は何を言うべきか?
●Media: どのメディアを使うべきか?
●Measurement: どのように結果を評価するべきか?
広告の目的は、大まかに以下4つに分かれる。
●情報伝達広告: ブランド認知の獲得や、新商品や新しい特徴についての知
識を伝えることを目的にしている。
●説得広告: 関連づけ、選好度の向上、革新の強化、商品の購入といったこ
とを目的にしている。
●再起広告: リピート購買のニーズを刺激することが目的
●強化広告: 購入した顧客に対して、その選択が正しかったことを説得する
ことが目的
広告予算を決めるときは、下記のようなポイントが重要だ。
●商品ライフサイクルの段階: 初期であれば大きな投資が必要だ。
●市場シェアと顧客基盤: シェアが大きければ少ない投資でもいい。また、
市場を拡大することでシェアを伸ばす場合は大きな予算が必要だ。
●競合の数: 競合が多ければ、また、競合が広告に投資していれば、必要な
広告投資は増える。
●広告の頻度: ブランドメッセージを消費者の頭に残すにはどれくらいの回
数が必要か?
●商品の代替可能性: 代替が容易な商品であるほど、広告投資が必要にな
る。
メディアメッセージを作る際は、一つか二つの、コアとなるメッセージに集中するべきだ。同時に、消費者の力を借りて広告を作ることもできる。広告で何をいうかも大事だが、どういうか(媒体)も重要だ。メッセージがわかりやすいこと、便益が伝わりやすいことが重要である。ただし、社会的・倫理的・法的な一線は越えないこと。
Q: マーケターはどのように広告媒体を選択し、効果を測定するべきか?
A: 広告媒体を決める際は、下記3つの要素を考慮したうえで、様々な種類のメディアから選択する。メディアだけでなく、場所や創作物も広告媒体になりえるし、様々な新興メディアも選択肢に入る。
●リーチ: 少なくとも1回広告に触れる人数はどれくらいか?
●頻度: 1人が、平均で、何回広告を見るか?
●インパクト: メディアにおいてそのコミュニケーションはどれくらいのインパクトを持つか?
広告媒体を決めたら、具体的にどれを使うかを決定する。下記3つの要素を加味した上で、”1000回露出するためのコスト”を計算する。
●視聴者の質: 商品は視聴者に関係があるか?
●注意を向ける蓋然性: その場所に広告を出したとして、どれくらいの人が目を向けてくれるだろうか?
●媒体の質: その媒体は、どれくらい威信があり、信じられているか?
●広告掲載方針や、その他のサービス
具体的な広告手段を決めたら、どのように露出するかを決める。全期間集中して出す、期間のうち時期を決めて集中させる、タイミングによって強弱をつける、etc...
広告を評価する際は、広告の実施前と実施後に「広告効果調査」を行う。また、売上や市場シェア、顧客の認知度など、目的に応じて、アンケート等で結果を検証することもできる。
Q: 販促の意思決定はどのように行われるべきか?
A: まずは目的を決める。消費者にとって、小売店にとって、自社営業にとって、という3つの視点がある。次に、販促に使うツールを決める。消費者に対してはクーポンやサンプリング、割引などがあり、小売店に対しては割引や保証等が挙げられる。営業に対しては、売上を競わせる等が考えられる。
内容を決めるときは、販促の程度・参加条件・期限・販促を伝える方法・時期・予算を決めていく。実行した後は、売上データや消費者調査、または実験等で効果を検証する。
Q: 効果的なブランド構築のためのイベントスポンサーシップや体験の原則はなにか?
A: 効果的なイベントスポンサーシップを実現するためには、マーケティングの目的やブランドコミュニケーションの目的に沿ったイベントを選択すること、イベントに合わせて、積極的なマーケティング活動を行うこと、スポンサーシップの効果をきちんと測定すること(露出だけでなく、顧客がブランドについて知っていることにどれくらい貢献したか、など)。
商品を独自の面白い体験と結びつけることは、「ブランドが、消費者の生活をいかに豊かにできるか」を示すことを目指している。企業は、顧客を自社の本社や工場につれていくことで、強力なイメージを作ることもできる。
Q: 企業はどうすればPRのポテンシャルを活用できるか?
A: 企業は、PRの目的(ブランド認知の獲得なのか、信頼の醸成なのか)を踏まえて、広告や他のマーケティングキャンペーンと連動させてPRを発表する必要がある。また、メッセージを伝えるために、「興味を引くストーリー」を打ち出す事が必要だ。普通ではない要素、意義のあるニュースなど。
第21章: デジタルコミュニケーションを管理する
Q: オンラインマーケティングの利点・不便な点は何か?
A: オンラインマーケティング(主には、ウェブサイト、検索型広告、ディスプレイ広告、メールの4つ)の利点は下記の通り
●企業は、顧客に応じて調節されたメッセージを送れること
●マーケティングの効果を簡単に追跡できること
●自信の商品・サービスに関係がある場所の広告を購入できること
●人々が購買を始めたまさにそのときにコミュニケーションがとれること
デメリットとしては、
●消費者は、簡単にメッセージを見ないようにできること
●広告出稿者すらもメッセージをコントロールできないことがあること。
Q: どうすれば企業は効果的なソーシャルメディアキャンペーンを実行できるか?
A: まず、一部の消費者しか、ソーシャルメディアでブランドと繋がりたいとは思っていないし、思っている人も、”ときどき”繋がりたいと思っているだけ、ということを認識するべきだ。また、ソーシャルメディアには爆発力があるものの、「清濁併せ呑む」必要がある。実施するためには、オンラインにおける強い存在感と、根拠のない中傷が発生したときに対応できるための手段を持っている必要がある。
オンラインコミュニティを活かすのなら、コミュニティメンバー同士の絆を深めるような、個人もしくはグループでの活動を創造することが成功の鍵だ。ブログの場合は、自社のものを作ると同時に、他人のブログの内容にも注意を払うこと。ソーシャルネットワークにおいては、広告だけでなく、企業自身もアカウントを作って積極的にネットワークへ参加する方法もある。
Q: 好意的な口コミを広げるにはどうするか?
A: 口コミの90%は、オフラインで起きている(筆者注: 本書が執筆されたのは2015年)。オフライン上で話題に登るブランドは、目に見え、思い出しやすく、頻繁に触れるものだ。顧客は、好意的な口コミは自分で創り、自分自身の好意的な消費経験について、他人にシェアする傾向にある。
毛局のところ、口コミが起こるか否かは、顧客がそのことについて他人に話したくなるか否かにかかっている。口コミを流行らせるためには、影響力を持つ個人や企業を特定してサンプル品を送ったり、コミュニティにおいて影響力がある人と協働したりすることが効果的だ。
Q: モバイルマーケティングにおいて重要な原則は何か?
A: モバイルにおける表示は、PCで見るサイトの表示とは異なることを理解し、シンプルで、見やすくわかりやすいモバイル用のサイトを作ることだ。
第22章: 個人最適化されたコミュニケーションを管理する
Q: どうすれば企業は競争優位としてのダイレクトマーケティングを実行できるか?
A: ダイレクトマーケティングは、自社のオファーを競合から見えにくくすることができる。まさに欲しいと顧客が思ったときに提案できる。また、ダイレクトマーケティングは、顧客へのクロスセル・アップセル・より深い関係構築のツールとなる。
Q: データベース・マーケティングのメリットとデメリットは何か?
A: データベース・マーケティングは、下記に使える。
●見込み客を特定する
●ある特典をどの顧客が受け取るべきかを決める
●顧客のロイヤリティを深める
●顧客に再購買を促す
●顧客に対しての深刻な間違いを防ぐ
一方、データベース・マーケティングの問題点は下記が挙げられる
●そもそもデータベース・マーケティングに向いていない: 一生に一度の商品であったり、1回あたりの購買金額があまりに少なかったりする場合
●データベースの構築と維持に大きな投資が必要になる。
●データベースを使ったマーケティングへの移行に従業員が反発する
●すべての顧客が、企業と関係を持ちたいわけではない
●CRMの前提が真実とは限らない: 例えば、忠誠度が高いこと、購買金額が
多いこと、企業の商品を広めてくれることが、一致しない可能性もある。
行動の忠誠度と態度の忠誠度も、かならずしも一致しない。
Q: 営業部隊をデザインする際に企業が直面する意思決定はなにか?
A: まず、営業部隊の目的と戦略を決める必要がある。目的には、下記の例が挙げられる。
●見込み客の探索
●対象顧客の決定
●コミュニケーション
●販売
●サービスの提供
●情報収集
●顧客ごとの資源の割振
戦略は、正しい顧客に対して、正しいタイミングで、正しい方法で対応できるようにしなければいけない。
目的と戦略を決めたら、組織を作る。商品ラインが少ない場合は地域で割り振り、多い場合は商品や市場ごとに組織を分ける。複数の要素を組み合わせている場合も多い。組織を決めたら、人数を決める。仕事量に応じた人数にする。
最後に、営業部隊への報酬を決める。固定給、変動級、経費、福利厚生といった側面がある。
Q: 営業部隊を管理する際の課題はなにか?
A: 以下のような課題がある。
●営業を選抜し雇用する: 実際の仕事環境と似たような試験を課して評価することで、実際とのギャップが小さくなる。
●営業を訓練する: ロールプレイング、共感訓練など。顧客が営業に求め
る、深い商品知識、オペレーションの改善提案、効率と信頼等を実現でき
るようにする。また、営業の生産性をあげるためには、新規顧客の開拓に
時間を使ってもらう、時間を効率的に使わせる、テクノロジーを積極的に
導入する、等がある。
●営業を動機づける: 内発的動機と外発的動機のどちらも刺激する。給与や
昇進のチャンスが強い動機となる。
●営業を評価する: 営業レポートや、顧客からの声を聞いて評価する。
Q: どうすれば営業マンは彼らの販売・交渉・関係構築力を改善できるか?
A: 大きく言えば、6つのステップを目指して改善していくことが重要だ。
●見込み客を特定し、数値化する: 予算、権限、ニーズ、時間がそろってい
るかを確認する。
●事前調査: 事前に、見込み客について可能な限り調べておく。特に、発注
のプロセスは重要だ。
●説明とデモ: 特徴、利点、便益、価値をきちんと説明する。
●反対意見の説得: しばしば割引を提示されるが、価格に見合う価値を販売
すること
●クロージング
●フォローと関係の維持: メールや電話だけでなく、対面でのケアも重要
だ。
第23章: 長期的なホリスティック・マーケティング組織を管理する
Q: マーケティングに関する重要なトレンドはなにか?
A:グローバル化や、顧客が力を持つようになったことが重要なトレンドだ。同時に企業には、より環境や社会に配慮した行動が求められている。様々な、対立しがちな需要をすべて満たすようなマーケティングを行う必要がある。
Q: 効果的なインターナル・マーケティングの鍵はなにか?
A: すべての組織が、「顧客のこと」を考え、顧客の欲求や期待を満たすために協働する必要がある。そのためには、会社全体に対して、顧客に対する情熱を高め、商品やではなく顧客セグメントに基づいた組織編成にし、量的・質的調査を通して、顧客のことを理解することが重要だ。
Q: どうすれば企業は社会的責任のあるマーケターになれるか?
A: 法的・倫理的・社会的責任を果たすことが重要だ。各社員が、自分の業務に関わる法律を理解している必要があるし、企業は社員に対して、自社が持つ倫理を明示するほうがいい。同時に、マーケターは、顧客や協業者とともに、社会的な意識に基づいて行動する必要がある。
一例として、コーズ・リレーテッド・マーケティングがある。少なくとも1つ以上の、社会福祉に関する利益とは関係のない目的を持ち、企業やパートナーの資源をそれに使うマーケティングのことだ。成功すれば、ブランド認知や、好意的なブランドイメージを獲得することができる。企業や自社商品のイメージに適合した社会問題を選択することが重要だ。そうでないと、顧客に疑われ、逆効果になってしまう。
Q: マーケティング活動を計測し改善するツールには何があるか?
A: マーケティング活動を測定する際の視点には、年間計画、利益率、効率性、戦略等の観点がある。なかでも戦略は、包括的に・システマティックに・独立したかたちで・定期的に、見直されるべきである。
Q: 将来成功するためにマーケターは何をする必要があるか?
A: ホリスティック・マーケティングがより重要になる。そのために、顧客やパートナー、他の従業員との関係を構築するスキルや、デジタルを始めとする様々なツールを使いこなす能力も求められる。
24. おわりに
2020年12月28日くらいから読み始め、2021年1月11日、ついに最後の章を読み終えた。とりあえずやりきった感がある。
「Marketing Management」の要約を試みて最も良かったことは、各種の言葉の定義や、考え方の原則に改めて触れられたことだ。フレームワークの多くは、名前は知っていても、どういう文脈で用いられるのか、あやふやなまま使っているものだったので、考えがある程度整理できたように思う。
豊富な具体例や、ケーススタディの問題もついていたが、それらはほぼ省いてしまった。それらは、また時間をとって、じっくり取り組んでみたい。
繰り返しになるが、解釈が間違っている点などがあれば、連絡していただけると嬉しい。
gmailアドレス: nmun30tom@gmail.com
Twitter: https://twitter.com/tweetom2
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