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マザーハウスから学ぶ途上国ビジネスのポイント

 今週のカンブリア宮殿で特集されていた「マザーハウス」は、デザインから販売までを一気通貫して行う会社だ。特徴としては、途上国に自社工場を持って生産していること、最近出店攻勢を強めていること、があげられる。今日はそんなマザーハウスから、いわゆる「途上国ビジネス」を行う際のポイントを抽出してみたい。(※ここでいう「途上国ビジネス」とは、「途上国」であることを差別化要素の一つとして扱うビジネスと定義する)。

マザーハウスのポジショニング-あえて”貧しさ”を押し出さない

マザーハウスのオンラインサイトや実店舗をには、どこにも「これは貧しい国で作られました」というような”同情”を誘う要素はない。このことに留意しながら、マザーハウスの、アパレル業界におけるポジショニングを整理する。一つの軸は、番組で社長自身が述べていた「ラグジュアリー⇔フレンドリー」という軸だろう。もう一つの軸は、番組内で店を訪れていた人が「伊勢丹ではなくマザーハウスだ」と述べていたことをヒントに、「オーソドックス⇔ユニーク」としてみる。

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マザーハウスは、価格を通して、「ラグジュアリー」よりも「フレンドリー」であろうとしている。また、「こんなシーンで使ってほしい」「”素材のこんなところを活かしたい”」という、社長自らのデザインが宿るからこそ、ユニークたりえるのだと思う(他ブランドもそうだろう)。他方、ある程度の売り上げを獲ろうと思うと、「近年の市場の動向は云々」という話から始まり、「こういう傾向にある」というデータを基に作られがちな結果、「これでいいけどこれじゃなくてもいい」という商品になりがちになってしまうのではないだろうか(知らんけど)。その結果、具体的なイメージがあるマザーハウスの商品に惹かれる、ということなのだろう。

 ここで注目したいのは、コミュニケーションにおいて「途上国の人が頑張って作りました!」だの「貧しい生活から抜け出せました!」だのと言うことに触れていない点だ。

同情は心を動かしても財布は動かさない

 消費者が買う理由は「自分の用事を片付けること」であって、「他人に同情したから」ではない。途上国をビジネスの要素として使うと、しばしば「貧しい暮らしをしていて…」とか「苦しんでいて…」とか、同情を誘うような文句を目にする。それ自体確かに問題なのかもしれないし、大変だとも思う。思うのだけれど、ではそれに対してお金を払うか、と言われれば全くの別問題だ。ビジネスとして成立させるなら、お金を払ってくれる人に対しては「あなたがこれにお金を払うメリット」こそを伝えるべきであって、いてしまえば、作り手の背景はどうでもいいのである。

 マザーハウスは、「途上国で生産に携わる人の生活が改善されるのは結果である」という姿勢を崩していないように感じられる。もちろん創業者を突き動かす原動力になってはいるのかもしれないが、商品を使ってもらうユーザーに対しては、きちんと別の価値を提供し、コミュニケーションしている。これは、他の「途上国ビジネス」が大いにマネできる点ではないだろうか、と思うのである。

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