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駿台つながるキャラバン

 自分の勉強もかねて、気になったトピック(商品や企画)について、考えたことをnoteにまとめて発信してみることにした。

 12/16に、駿台とカロリーメイトがコラボして、受験生を応援する企画をする、というニュースを目にした(公式サイトはこちら)。記念するべき1回目は、この企画について考えていこうと思う。

顧客と課題の整理

 顧客は「もうすぐ自分の人生にとって大きな試練を控えている大学受験生」だろう。駿台が大学受験専門の予備校であることを考慮すると、高校受験を控えている中学生や資格試験を控えている大人は対象ではなく、「大学受験を控えた高校生/浪人生」が顧客である。(以降、大学受験生のことを指して”受験生”という)

 自分が受験生だったころは、部活も引退し、学校のめぼしいイベントも終わり、家・学校・自習室の三点移動を繰り返す毎日だった。もちろん授業の合間等で友人たちと話す時間はあれど、圧倒的に一人でテキストと向き合う時間が多かった。土日の夕方、籠っていた図書館からの帰り道、ふとした瞬間に、不安と心細さが襲ってくることがあった。

 今自分にできることをしてはいるけれど、本当にこのままでいいのか、という不安。同じ目標に向かう友人たちはいるけれど、同じ大学を目指す以上はライバルでもある。家族や塾の先生は最大限応援してくれているが、”仲間”と呼べる関係性ではない。”自分ひとりで立ち向かわなければいけない”というのはおこがましいが、そう思わないこともない。

 しかし、私が受験生だったのは10年以上前の話だ。現在の高校生たちにとって、不安や心細さの程度はどのように変化しているのだろうか?2024年だからこその新しい課題を抱えているのだろうか?

 文科省の『学校基本調査』によると、大学の進学者数自体は増加傾向にあるようだ。

『学校基本調査』より 在学者数の推移

 一方で、この少子化時代であるから、受験生の数は減っている。旺文社の記事では、2035年には、「大学全入時代を迎える」という予測もされている。

 しかしそれは、「受験生のストレスが軽減される」ことを意味しない。上記の記事が言う「大学全入」とは、

通信制⾼校を含めて国内の受験⽣数をほぼ完全な形で算出し、⼤学に限定 して「⼊学定員 vs.受験⽣数」の将来予測を⾏った

人口減と大学入試|旺文社教育情報センター

結果である。「入学定員 vs. 入学希望者数」の予測ではないのだ。

 「大学全入」とは「大学に行こうと思えば(ほぼ)誰でも行ける」時代である。その状況では、”大学を卒業したこと”自体のブランド価値はほぼなくなるだろう。だからこそ、「とりあえず大学に入ろう」という動機は減り、「卒業したことが何か(学力、継続力etc…)の保証になる大学」や「”充実した”生活を送れる期待がされる大学」を志望する受験生が多くなる。その結果として、一部の大学では競争はより激しくなり、その他の大学は定員割れに陥る、というのが将来像になるはずだ。大学定員増・受験生減という状況にあってもなお、受験生が持つ不安は依然として存在すると考えられる。

 一方で、いわゆる「都市と地方での情報格差」の問題は、縮まりつつあるのではないだろうか。学生によるオンラインやSNSでの情報発信も多く、地方にいながらであっても、自分が志望する大学の情報を得ることは容易になっていると考えられる。

 以上をまとめると、まず第一の顧客は「大学受験生」であり、課題は「結局は一人で立ち向かわなければいけない心細さ」といえる。

解決策の整理

 駿台つながるキャラバンの公式サイトによると、
●カロリーメイトのメッセージバトン
●受験生へのメッセージ付きパネル展
●駿台オリジナル教材やコンテンツ体験
の3つが提供されるようだ。

 「カロリーメイトのメッセージバトン」とは、受験生にメッセージを書いてもらい、それを別の街の受験生に渡す、という企画のようだ。前述の「心細さ」に対する解決策であろう。個人的には「他の受験生からもらったとて、心細さは和らぐのだろうか…?」という疑問はある。共通の目的ではあるけれど、結局のところ競い合う相手ではあるのだ。ここは私にも見通せない部分なので、結果をウォッチしていきたい。「受験生へのメッセージ付きパネル」についても同様だろう(こちらは駿台講師陣からのものかもしれない)。

 3つ目の「駿台オリジナル教材やコンテンツ体験」については、正直に言ってなぜ設置されているのか不明である。受験生がターゲットであるのなら、正直この時期に新しい教材やらコンテンツやらを見せられたところで、いたずらに不安を煽るだけであり、あまりポジティブな内容にはなりえないだろう。relevantなものは、せいぜい直前講習の案内くらいだ。おそらく、「駿台としてのメリット」を強調する(ことで、マネジメントを納得させる)ために、後から付け足されたものではないだろうか、と邪推する。担当者の苦労が伺われる。

おわりに

 「受験生同士がメッセージを送り合う」というコンセプトは、”受験生を応援する”という文脈では新しいなと思った一方で、「顧客目線」に徹しきることがいかに難しいかを感じた企画でもあった。

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