想像できないこと
先日、留学から帰ってきてひと月ぶりにバイト先の友人たちとごはんに行った。
そのうちの一人の子は期間限定で私たちのバイト先に勤めていた子で、今は離れた場所に住んでいる。その子が東京に来るというので久々に集まった形だ。
互いにこの1ヶ月であった出来事や変化などを話し合って、私の留学の話も色々聴いてくれて、それはそれは楽しい時間だった。
離れていてもこうしてすぐ打ち解け合うことのできる人がいることは、本当に恵まれたように思う。
その話の中で、ひとりの子がこう言った。
「〇〇(私)さんロールモデルにしようかな」
ワインレッドの髪、深い赤のネイルをしていた私を素敵だと言ってくれて、少し冗談っぽくそう言ってくれた。
ロールモデル。
本気かどうかはさておいて、自分が誰かの”ロールモデル“になる日がくるなんて、いつ想像できただろうか。
私は咄嗟に、やめた方がいいよ、と言った。
謙遜というよりも、本気でそう思ったからそう言った。
そして小さな声で、孤独だよ、と口から漏れた。
ガヤガヤした居酒屋の喧騒に紛れて、誰にも聞き取られなかったその一言は私の中にだけ響いた。
そう言ってから、ああ自分は自分を孤独だと思ってるんだなぁなんて改めて考える。とっくの昔から分かりきっているけれど。
私は今渋谷にいて、美味しい紅茶とスコーンを前にカフェでお目当ての舞台が開場する時間を待っている。
隣には渋谷っぽい若いファッションのカップル、前の席には女子高生3人組。東京の高校生は放課後にこんなおしゃれなカフェに行くのが普通なのか、おしゃれだなぁなんて思う。みんな制服をうまく着こなしていてかわいい。記憶のない自分の高校時代を想ったりする。
喫煙室への道が左側にあるようで、たまに人が横を通る。その度にさっと風が動く。
渋谷に向かう電車の中で、目的地に自分を待つ人が誰もいないことを寂しく思った。
留学中はシェアアパートに住んでいたし友人にも恵まれたので、いつも誰かと一緒に出発するか、それぞれ学校や用事を済ませた後、カフェで待ち合わせたりしていた。いつも誰かが、私のことを待ってくれていた。
久々に慣れた東京の街でひとり歩いていると、心が動かないのを感じた。話す人もいないし、自分を自分と認識してくれる人は誰もいない。
留学前の自分はこの静けさを心地よく感じていたのに、どうしてしまったんだろう。
もちろんソロ活は相変わらず楽しい部分もある。こうして内面と向き合える。自分の時間を取れる。
心地よくないわけではないし、めちゃくちゃ寂しいわけでもない。だけど、もう少し何か動きが欲しいな、と思っている自分がいる。
留学で得た将来への希望と、自分への期待。
あれこれ色々毎日考えている。
前はパートナーとか結婚とか全く考えられなかった。ひとりが史上最高だと思っていた。だけど、きっと、ふたりだともっと楽しいのかもしれないとどこか思い始めている。
こうやって変わっていくのだ。
想像ができない。
思えば自分が全部英語の世界に一人で行くなんて数ヶ月前までは想像できなかった。
でも実際行ってきて、あれやこれやと生きて帰ってきた。今はもうどこでも行ける気がしているし、なんでもできる気がしている。
こうやって変わっていく。
想像できない世界に。