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【第3話】大卒エリートのような学力は大事。でももうひとつの大事なものがありました。

【第3話】
高校末卒男が大卒エリート同期に学力以外で勝れたものはとても「温かなモノ」でした。

第2話で、大卒エリート同期にまざまざと学力の差を見せつけられて劣等生感丸出しの研修だったわけですが、それでも"同期"ということでわたしを受け入れてくれていたので、研修会後は同期で飲みに行ったりもした。

飲み会では研修のディスカッションの延長戦になるんだろう。と思いきや、案外みんな喋らない(笑)。静かな形で飲み会がスタートした。わたしは成人していないのでとにかく食べることを中心して、少し経てばお酒も回って騒がしくなるだろうと様子を伺っていたが、待てど暮らせど、全然会話が弾んでこない(笑)「研修の時の勢いはどこいった!?」(笑)そこで私はみんなに何処に住んでいるのか?好きな趣味は何か?ぶっちゃけ彼女、彼氏はいるのか?などという事を聞き、会話はそれなりに盛り上がったが今一歩。。。

大卒エリート達は、学力においてはズバ抜けて長けているが、プライベートになった時の対話力はわりと低いな。と思った。きっと彼らは真面目に勉学や研究でモノや環境の事象とは科学的に向き合って来た。だけど、人に対してはそこまで興味がなかった。それがこのコミュニケーション能力の低さであると悟ったわたしは、この人たちに唯一勝てる部分を見出した気がした。

そこで、同期の中でも一番、科学的根拠を大事にしているであろうAさんの脳内を覗きたくなり「今回の研修って、Aさんにとって何点の出来でした?自分が考えている事は発揮出来たんですか?」と聞いた。少しうつむいたまま、沈黙がつづいた後、A君はなぜか急に泣き出してしまった。「え?えぇぇぇぇぇえ!!!そこで泣くぅ!?」って急な展開にちょっと変な空気になる。でもわたしとしたらその涙のわけを聞きたく「なぜ泣くんですか?同期なんだからなんでも話して下さいよ!」と重ねていく。

彼の涙のわけはこうでした。

研修中では先輩にいい事を言わなきゃ!と背伸びをし、正しい答えを導き出さなきゃと考えているうちに頭がパニック状態になって自分で何言ってるかわからなくなって、ひどい醜態を晒してしまった恥の涙という事らしい。要するに学生生活の時に完璧だった彼の頭脳はこの研修の実戦の場、社会の臨機応変な世界においてはなんの役にも立たなかった悔しさ。という事なんだろう。

泣いた理由がわかったので、同期として、わたしなりに渾身の励ましを贈った。「僕ら人間でしょ?コンピューターじゃないんだし、研修に勝ち負けなんてない。そもそも誰かより優れたところで生きる上でなんの得があるの?最初からA君の才能はすごいとみんな思っている。もうそんなこと考えないで、今日をとにかく楽しく生きよ!仲良くやろ!今日は飲も!」

ここまで言うと彼は解放され、学生生活から孤独に競走の世界で生きて頑張ってきた肩の荷がおりた。彼はこの後、自分の本能のままに飲んで誰よりもベロベロになった。グダグダな不出来な自分を見せつけ、みんなを盛り上げた。彼はその日以来、人との繋がりをとても大事にするようになった。

わたしは大卒エリートの足元にも及ばない学力だ。でも、高校末卒の馬鹿でどうしようもないわたしでも「仲間を励ます力」「人の本質を見抜く力」は彼らより少しあったようだ。

最後はみんなありのまま大盛り上がりの飲み会になり、同期の絆が強まった会となった。そして何を隠そう、この飲み会でわたし自身も、社会で勝ち抜くには学力も大事、そして人間力も大事。という事に気付かされた。

【次回予告】大卒エリート達と同等に暮らせる時間、そして温かな世界。わたしの社会への船出は完全に成功した。わたしの頭に建築の世界や大工の世界の事などもうわたしの世界からは抹消されました。にありませんでした。それを見ていた大工家系の父母そして親戚は、言葉にこそ出しませんでしたが、たいそう落ち込んだことでありましょう。次回は何故建築を嫌ったか?に迫ります。

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