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馴れは怖い。

 つい最近の話だが、水回りのトラブルが続き、心は穏やかではなかった。

 2016年4月の熊本地震の影響が今頃になってあるのかと。水道メーター手前の埋設されている水道管にヒビが入ったらしく、その水が擁壁の横から染み出してきたのである。

 公道から自宅までは28段の石段で結ばれているが、上から5、6段目の石段の下に埋設されている箇所にヒビが見つかり、数時間の工事で漏水は解決した。

 擁壁については一件落着。そこで、その工事の合間に自宅内の水回りを考えてみたのである。

 手洗い場とバスルームには、水(青)とお湯(赤)の蛇口が二つ付いている。蛇口を閉める時に、近頃、強く閉めなければ水が止まらなくなっていたような。

 馴れとは怖いもので、擁壁漏水とは異なり、蛇口は閉まれば良いかと思う気持ちが強く、寒くなればなるほど、パッキンも固くなり、閉める力が増して行く。

 蛇口の件を、擁壁漏水工事を担当した専門業者の方に相談した。蛇口の工事は、4つの蛇口のパッキンを取り替えれば十分だとの意見を貰い、僅か20分ほどで完了した。

 こんなに簡単に済む工事を依頼せずに、何年も日々固くなる蛇口の取手と戦ってきた自分が馬鹿らしくなった。

 工事後に、手洗いばやバスルームの蛇口を捻り、水やお湯を出してみた。それから、蛇口を閉める時に、驚くほど、とても柔らかくスムーズな感触が指先に伝わってきた。

 日々、何年も掛かって馴らされてきたために、蛇口本来の動きや感触を忘れ去ってしまっていた。諄いようだが、馴れとはこんなに恐ろしいものかと、再認識したのである。

 極論ながら、人との関わりについても考えてみた。蛇口と同様に、とても大切なことであるのに、馴れによって、自分自身を支えてくれる人の有り難さやその重みをしっかりと受け止めているのか否かと、自問自答したのである。

 人と蛇口を結びつけるのは如何なものかと思いつつ、馴れにより、時間が経てば、その状態が悪化しているとしても気づかず、馴れてしまい、人に対して失敬なことを言ったりしたりしてはいないかと、気を揉んだ。

 何事にとっても、馴れは怖い。本当に怖いと思い知らされた。

 再び気になって、修理が完了した蛇口を捻りに行った。そして、閉めようとした瞬間、何年も慣れ親しんだ感覚にて、異常に力んで蛇口を閉めようとする自分がいたのである。

 そこで蛇口の捻りを戻し、苦笑いしながら、そっとじんわりと蛇口を閉めて、完了。人との接点もこうでなくてはと・・・。

 人間関係においても、昔から「如水」という言葉が残っているように、人と水には何らか強い繋がりがあるようだ。

西田親生の自由気まま書「如水」

※蛇口写真は、画像生成AI「Midjourney」にて作ったもの。


▼ChatGPTによる評価

このエッセイは、身近な出来事から抽象的なテーマへの洞察を通じて、読者に深い考えを促すよい内容です。以下に評価のポイントをいくつか挙げてみましょう。

  1. 具体例を通じた洞察: エッセイは水道トラブルという具体的な出来事を通じて始まり、それから抽象的なテーマである「馴れ」について考えを広げていきます。このアプローチは、読者が身近な状況を通じてテーマを共感しやすくするのに役立っています。

  2. イマジネーションの使用: エッセイの最後に、蛇口の修理という具体的な行為を通じて、読者に馴れの概念を思い出させる効果的なイメージが提示されています。これにより、読者は自分自身に置き換えて考えることができます。

  3. 自己省察とテーマの展開: 蛇口に関するエピソードを通じて、著者は自己省察に挑戦し、馴れによる習慣の影響を認識します。そして、このテーマを人間関係や他の側面にも適用し、読者に深く考えさせます。

  4. 言葉の選択と流れ: エッセイは良く選ばれた言葉と滑らかな流れで書かれており、読みやすく、理解しやすいです。蛇口に関するエピソードから、馴れのテーマへの遷移も自然です。

  5. 構造と長さ: エッセイの長さは適切であり、読者の興味を引きつけ、飽きさせません。また、序論、本文、結論の明確な構造があり、テーマの展開が論理的です。

総じて、このエッセイは身近な経験を通じて深い哲学的なテーマにアプローチする成功例です。読者に考えさせ、自己省察を促す力強い文章です。

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西田親生@D&L
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