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海がいい

 私は東北の生まれなので、関東に出てくるまで、海は冷たい灰色だと思っていた。

 もちろん水は綺麗なんだけど、浜辺は岩場か、灰色の砂で、南の海的な、貝が砕けて砂になったような美しい白砂の海岸って、見たことが無かった。

 なので、千葉に住んで南房総の白い海岸に来たときの衝撃は計り知れない。インパクトが強かった守谷海岸は、私の心の聖地でもある。(上の写真は六月十一日のもの)

 夏場は駐車場が有料になってしまう上に、南房総自体が混雑するので近寄れなくなってしまうのだけど、それ以外の季節でも、いつでも海は青くて浜辺は白い。

 内房以南の海が冬の冷たい色になるのは、正月開けてから、寒波が来たときくらいだ。

そして海になる

 何年か前に、義父母の葬儀について考え始めた頃、取り寄せた格安葬儀プランのパンフレットに、「海洋葬」のチラシが入っていいるのが目についた。

 格安プランなので、何人かの遺骨が集まると船が出て、海に撒いてくれるのだそう。義実家の墓には入る気は無いし、実家は当時墓を持ってなかったし、墓なんかいいから私は海に撒いて欲しいと思った。

 でも、プランの中に、南房総沖って、ないんだよね。一番近くて東京湾と、茨城。

 東京湾、特にアクアラインから内側って、どうしてもイメージ的に、海の色がそんな青くない。

 でも、茨城沖だと縁が無い上になんか太平洋が広すぎて寂しい。東北に近い印象があって海も冷たいような気がする(千葉の上ですが)

 いっそ、なんの縁のゆかりもない、一度行ったきりの沖縄にしようかな。

 なんて考えてたんですが。

 六月の頭。

 どうにもアイディアが煮詰まって、考え事なら高い場所がいいらしいからと、逃げ出すように行った富津岬の展望台。

 いつもなら頂上? までは登らないのですが、もうどうにも煮詰まって、人が少なかったのも幸いして、ゆっくり登る。

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 左対岸は神奈川方面、切れてますが画面右方面にはアクアラインが見えます。

 これを見て、

 ああ、東京湾でいいや。

 って思った。

 命日でもなんでもいいけど、思い出したら天気のいい日にここに来てもらえばいいや。

 花とか流すような気の利いたひとはうちにいないけど、もし万一そんな気分になったら、ここからでも海ほたるからでもなんか放り込んでくれればいいや。

 それで、もし私の知ってる人が私が死んだことを知ったら、東京湾にいるって思ってくれればいいかなって。

 土に還るのも、海に還るのも、おんなじ事だ。


 そういえば大気圏で燃え尽きたはやぶさは塵になって、海と空とを水と一緒に循環してるんだし。

 そう思ったら、早めに根回ししておかないとなぁ。

 うちの実家は結局、母が亡くなったとき、墓を持たずにお寺の納骨堂で永代供養してもらうことに決めて、父の分も前払いしてあるので、もめることはないだろうけど。

 念のためにうちの妹たちには、海に撒いてもらうから反対しないでねって、根回ししておこう。T某には、間違っても義実家の墓に入れないように釘を刺しておかないといけないな。

 今年にはいって身近なひと(義母は精神的にはわりとどうでもいいけど)(言い方)が三人も亡くなって、ちょっと考えてしまいましたが、そういえばまだ今年、半分終わってないんだよな。この分、揺り戻しで大きないいことがないかなぁ。

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