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叔母L子のケース3 コロナ禍での看取り
時は少し戻り。
五月二十九日に「呼吸困難」となり緊急入院した叔母。
他県に住む長女のFさんも駆けつけたそうですが、最初の数日は同居の家族以外は会わせてもらえなかったそうです。
それが、六月二日には、Fさんや甥っ子さんも会えたとのことで。
このときには「みんなで看取るため」の退院の調整が始まっていたのだと思います。
四日に介護タクシーで退院したときも、朦朧としている叔母が眠り込まないように、「もうすぐ家だよ」と声をかけていたそうです。
お孫さんや近い親戚のかたもこの日は揃っていたようで、みんなと顔を合わせた次の日五日の未明。
Eさんが気がついたときには、叔母はもう冷たくなっていたそうでした。
入院中に、面会を許された孫達がやってきたときも、「まだ三人に会っていない」と言っていたそうで、
みんなに会えて、安心したのかな。
五日の朝
知らせを受けて、私が夫と叔母の家に向かったのは、午前九時過ぎでした。
Eさん達ご一家は、葬儀屋さんと打ち合わせに入っていました。
Eさんの次男くんと、お姉さんのご主人とに案内されて、叔母の部屋に上がりました。
北枕にするためか、家具の配置は大きく変わっていて、すでに枕飾りも整っていました。
綺麗に化粧された叔母が横になっていて、
しばらく呆然と膝をついて叔母の顔を眺めていました。
実母の時は、危篤状態から最期までを看取ったので、感情的なものは別にしても、亡くなって、もう動かなくなったのだという実感はありました。
義母の時なんか涙が出てくるわけもありません。最初の驚き以外はものすごく冷静だったし、義母のためと言うより、叔母のために流れを整えていたようなもので、悲しいとかはありませんでした。
横になった叔母を目の前にして。
人が亡くなったことで、これだけ自分が動揺するのだと、自分で驚きました。
奥にどうぞといわれましたが、忙しい中の余計な「お客様」ほど迷惑になるものはありません。夫も役に立たないのは判りきっているし、
「あとから息子(T某)が来ますから」と言い残して、長居せず退出しました。夫の兄、つまり義兄が亡くなったとき、Eさんと次男さんにはお世話になっていて、T某も顔見知りです。
十日前、あの部屋でお茶を飲んだのに。
叔母はちゃんと動いて喋ってたのに。
「実は騙されてるんじゃないか?」と、あり得ないことまでふっとよぎったりしました。
邪魔にならないようにすぐ引き上げてきたけど、何かお手伝いできることがあるのではないか、いや叔母の娘さん達も揃ってるんだから、私と夫なんかいても邪魔なだけだ。と、ぐるぐる考えたり。
それに、葬儀屋さんもはいっているから、すぐに日程は決まるだろう。土日は斎場は埋まっているだろうし、通夜や告別式をやるなら週明けだろうと踏んで、翌日まで連絡待ちに徹します。
六日は雨でした。
たまたま休みだったので、菖蒲畑のある他市の公園に行ってみました。
菖蒲園の中を流れる水路には、蓮の花がたくさん浮かんで、そこを傘を差しながら歩くのは、晴れた日とは違う落ち着きがあります。
ここは桜も綺麗なのですが、桜の時期は義母の件が重なって、見頃を逃してしまっていました。
叔母と見たのは、義実家に安置された義母に会わせるために、叔母を連れて行った時に車から見た、都内の桜でした。
まるで、義母が亡くなってから、納骨までを見届けるように、叔母は亡くなってしまいました。
六日の午後に、葬儀の日程について連絡があり。
月曜に通夜、火曜が告別式と繰り上げ初七日、そして出棺。
月曜は仕事だし、火曜だけ参加しようか、と思っていたら、T某がEさんの次男さん経由で受付を頼まれているのが発覚。
急遽時間を変更して貰い、私も夫も通夜に間に合う時間には帰れるように調整しました。
ちょっと早めに行くと支度していたT某は、
「暑いからベストで出たい」
とか突然言い出したので、ざっくり検索したら「ベストはおしゃれ着なので葬儀にはNG」らしいとのこと。つーかいきなり何言い出すのだ。
T某が出かけるのと入れ違いで、夫が帰宅。
実は、叔母の通夜と告別式が行われる斎場、うちから徒歩十分もかからないところにあります。ので、T某はなぜか車で行ったけど、私と夫は徒歩です。
ついたら、Eさんの息子さん達と一緒に、受付に立っているT某。
T某は義兄の葬儀の時も受付に立っている経験者です。
お香典を渡しながら、「このたびはご愁傷様です」と形式で挨拶したら、「いや俺に言われても」って、判ってるよ形式なんだよ形式。
会場には、遺族と親戚あわせて三十人程度かな。供え花も、喪主分を省いても十個以上飾られています。さすが、叔母。
しかし私たちがついた途端入場が始まり、喪主に事前のご挨拶が出来ないまま、通夜式に突入しました。
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