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十二月二十八日

「夕焼け小焼け」の流れる頃。
今年一年、訪れた場所を思い出す。

飛行機に乗って、船に揺られて訪れたあの島では
違う音楽が流れていたっけ。
昔あった小学校の校歌だとか、民謡という説もあるみたい。

まちに漂う音たちに逢いに
でかけてみるのもいいかもしれない。

「こんな時代」だから、しばらくそれは空想のなかの旅になる。

その土地でとれたハーブのお茶を煎れて、
朝、目覚めた時のひんやりとした空気や
キッチンに響く冷蔵庫の振動
まだ眠っている人たちを起こさないようにと
忍足で歩く階段の木の軋み
そういうものを、思い出しながら

誰もが「誰も知らない時間」を持っていることの
不思議さを思う。
秘密だらけのような世界を。

(こんばんは)
マスク越しに挨拶をする。
(今日はあたたかですね)
(あ、でも明日から冷えるようですよ)
(そうですか)
(あたたかくして過ごしましょうね)

名前の知らない、顔見知りの、近所の人との会話。

一年が通り過ぎてゆく。
私たちの間の、クッションのようにやさしい距離。

夕焼け小焼け。帰ろう。またね。

明日また会えるのに
いいたくないさよならみたいに
夕暮れが来る
膝を抱えて。

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