二月十九日 潤い
石段を駆けあがることが 日課になった朝。
小走りして跳ねるのにあわせて、鞄の鈴がリンと響く。
空気はまだ冷たい。でも、手ぶくろはもうしていない。
誰もいない境内。
どこかで水の流れる音がする。
紅い椿の咲く枝を、花風のように小鳥が揺らして。
「がんばって」という代わりに
この場所でひとり、神様にお祈りをすることを選んだ。
第一志望に受かっても、そうじゃなくても
ずっと近くにいられますように。
行き先が違う道だけど
そんな願いも
神様だったらきっと叶えてくれる気がして。
通い続けたこの神社にも
お別れをする日はあまり遠くない。
合格おめでとう。
それは、ふるさとへの「さよなら」を含んだ言葉。
私だけ少しさみしく
名前の近いあなたと並ぶ
卒業式がもうすぐやってくる。
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