
初恋の人の行方を、
私は知っている。
彼はいつも、魂のどこかでワタシを必要とする時、
夢の中に現れる。
その姿は、あの15の頃のままで、
ワタシは彼と一緒にいた時のままで、
時間はあの頃のまま、
エンドレスに、
永遠に繰り返しながら。
離れ離れになることなど、思いもしなかった。
桜が満開のあの校庭を、
誇らしげに後にした新しい春の日。
それが終わりの始まりだと、
二人とも思いもしないで、
『この制服とも、今日でサヨナラだね』なんて、
手を繋ぎ、笑い合っていた。
それから何十年もの間、
そういつも、それは唐突に、
夢の中でワタシを呼ぶ声が聞こえて、
振り返ると、
やっぱり15の頃のままの彼がそこにいて、
ワタシに微笑んでいて、
でも、瞳の奥は、なぜか大人びて、
哀しげで、苦しげで、疲れていて、
ここからずっと、東の方ににいるんだね。
海のそばに。
そこからは、山も見えるんだね。
ワタシは夢の中で、彼を見つけ出し、
あの頃のように、そっと手を繋ぐ。
つい先週も、また彼が現れて、
そしてその夜、ひとつはっきりしたことがあった。
あぁ、そうか。
そういうことだったのか。
そうそれが、始まりの、始まり。
何十年もの時間を越えて、
ワタシは再び会いにゆく、新幹線に乗って。
陽射し眩しい夏の、彼の誕生日に。