見出し画像

学校への緊急支援:サイコロジカルファーストエイド

応急処置という意味のあるファーストエイドは、私たち心理職の場合は、「サイコロジカルファーストエイド(PFA)」と言います。

緊急で入る応急処置によって、その後に子どもたちや先生方、親御さんたちが深刻なトラウマ(長期化・重篤化)にならないよう支援に入っています。

どこで立ち会うかわからないことを普段から意識しておくといいのは、地震などの災害と同じ避難訓練です。必要な方に届きますように。

心理的なファーストエイドで大切なこと

  1. 安心感と安全感で場をホールドしていくこと

  2. 信頼で見守る目線

  3. つながり、所属を切らさないこと

  4. 無理やり語ることを急がせない、語らないことも尊重する姿勢

  5. 具体的な”もの”=リソース(資源)になるもの準備(毛布や水や白湯、アイスノン、ぬいぐるみ、折り紙、画材など)

  6. 触れることについて。幼い子ども、可能な人には適切なタッチで手で安心感を伝えることもあり大きな支援になる。一方で、適度な距離はどれくらいか、必要な距離感は人ぞれぞれ違うことを認識する。(触れることが大きすぎる刺激になる場合がある。自分自身によるセルフタッチがより安全。それすらできない凍りつきもあるため、注意)

  7. 通常ではないことが起きた時に、通常ではない反応が出るのは自然だということを知る。伝える。 >>> 【通常ではない、自然な4つの反応について】は下記A参照。

  8. 私たち支援者自身の在り方とセルフケア。今ここに戻るため、五感を使って身体に戻す。 >>> 【身ひとつで自分自身をケアする方法】は下記B参照。


A, 通常ではない、自然な4つの反応

  • からだの反応・・・頭痛や吐き気、腹痛、不眠、食欲がない、涙が止まらない、過呼吸など

  • 感情の反応・・・不安、恐怖感、自責、無力感、怒り、何も感じないことへの罪悪感、悲しみなど

  • 思考や認知面の反応・・・混乱、記憶が途切れる、時間の感覚が正常ではなくなる、集中力が続かない、興奮が続く、イライラ、物事を決められない、現実感がなくなるなど

  • 行動での反応・・・落ち着かない、不注意、衝動的になる、物を落としやすかったり怪我が増えたりなど


イラスト:ふわふわり。

特別な支援が必要な子どもたちがいます

  • 普段から弱さを抱えている

  • 発達の特性がある

  • 家庭に不和がある

  • 愛着のテーマがある

  • 複雑性トラウマや、同じようなトラウマを以前にも経験している

そのような場合は、反応が大きく出たり、小さく出たり、時差があったりします。(遅れてくる場合もある)

このように、反応が「非定型」に出る子は、元気そうに見えても中長期的にみていく必要があります。

「感じすぎる子」「何も感じない子」がいます。
どちらも、その子にとって【自然な】反応です。
自分を守るために起きている、生理的な反応なのですね。

感じない子は、「感じないこと」に対して罪悪感を持ちやすいので、その気持ちはとても自然な反応であること、罪悪感を持つことも一つの辛さだということを理解していきましょう。

B, 【身ひとつで自分自身をケアする方法】

ファーストエイドの段階で、「子どもに何か心理療法やセラピーをしてあげよう」という意識はいりません。逆効果です。

最初の段階で大切なのは、安心で安全だということを身体で感じて、起きてくることがそのまま自然に起きるよう、環境ごとホールドすることです。

以下は、子どもたちに何かをするというよりも、自分自身に使うと良いセルフケアのご紹介です。私の講座の中でも練習しています。普段から日常に取り入れていると、緊急の時に役立ちます。

呼吸法
タッピング
タッチ
眼球運動
セルフヒーリング技法など

ゆったりとした呼吸法や、一番最後に記載した【SCOPE】については、子どものファーストエイドの場面で、子ども相手に用いても安心で安全な方法です。その場合は、適度なアイコンタクトをしたり、穏やかな雰囲気でつながっているよという合図を伝えたりしながら、ゆっくりゆっくりやっていきましょう。

私たちが健やかであることで、子どもたちは栄養をもらえます。

どうぞ、支援者の方、大人こそ健やかでいましょう。健やか、というのは「いつも元気!」という意味ではありません。

今、私ちょっと変だな
ストレスが異常にかかっているな

などに気づいていることが【健やか】ということです。

交感神経が優位の時、吸う息があがってしまい、吐く息が浅くなってしまいます。呼吸が速く浅くなっていることに、まずは気づいて、そのあと呼吸を整えることから、ゆっくりやってみましょう。

最後に。ワークのご紹介です。

Somatic Experiencing(SE™️)というトラウマ療法のSCOPE(スコープ)

「SCOPE」は、心と身体を落ち着かせるための、ワークです。現在上級で学んでいるSomatic Experiencing(SE™️)というトラウマ療法からのご紹介です。

このワークは以下の、5つのエクササイズからなっています。

  1. S = Slow down(スローダウンする)

  2. C = Connect to the body (身体とつながる)

  3. O = Orient (周囲に気づいてみる)

  4. P = Pendulation (注意を行ったり来たりする)

  5. E = Engage(つながる)


© 2022 Somatic Experiencing® International®Somatic Experiencing

こちらは商標権の表示をすることを条件に、非営利の教育においてのみ配布OKのものです。


*   *   *

この花舎HP
(支援者向けカウンセリング講座と、保護者向けペアレントプログラム、オンラインサロンも開いています)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?