蔵馬という男

実家に帰った時、ひっさびさに『幽遊白書』を読んだ。

幽白といえば、今からおよそ25年ほど前、それはそれは超超超ドハマりしていて、周りの女子がセーラームーン一色のときに、私は蔵馬様にお熱の日々だった。人生ではじめて「自分の以外の物語」に浸かった漫画である。

しかし、10年ぶりくらいにじっくり幽白を読み返してみて思った。
「あれ、蔵馬ってこんなキャラだっけ?」

私の頭の中にあった蔵馬は、
・さわやか
・大人
・やさしい
・儚い
・お兄ちゃん
…などなど、あのキレイな微笑みから想像できる、南野秀一の優等生イメージだった。

しかし今、漫画から読み取れる蔵馬は違う。
さわやか…というのは、あまりにも的を得ていない。やさしい…も、ちょっと違う。

なるほど、そうか…きっとアニメの印象が強かったんだな。これまで私は、南野君と同じ高校の女子生徒の距離感レベルでしか彼をみていなかった。やっすいやっすいイメージで、蔵馬に恋をしていたのである(まぁ初恋なんてそんなもん)

私は、この機会にしっかり『幽遊白書』を読み返してみた。

「いやー、マジか」

プチパニックである。
実は、蔵馬は、登場人物の中で一番感情的な男だったのだ。
アニメはクール(というか気障)に演出されていたが、原作の彼はものすごいドS。
戦い方から垣間見れる、あのぞっとするような、相手をなぶっていく攻撃方法…あとわりとキレやすく、ネチッコイ。うん、嫌われたくない。

頭が良すぎて、知恵も知識もあって、執念深く、頑固。

「なぜ手を組んだかわかるか?敵に回したくないからだ」
まったく、飛影の言う通りである。飛影のほうがよっぽどか扱いやすくてかわいい。

そんな蔵馬君のキレる大体のポイントは、『自分の大事な人たちに、なんらかの危害が加えられようとした時』。
志保利さんはじめ家族、幽助、飛影、桑原、ぼたんたち…あとまぁ学校のみんなとか、罪のない人間とか。

蔵馬はひとりで生きることに興味を持っていない。むしろ周りの幸せを守るために生きている節がある。利益換算ではなく、単純な、好き嫌いを軸にして。

私は子供のころ、蔵馬をやさしくて頼れる素敵なお兄さん、だと思っていた。いつも辛い役割を背負い、その苦労を微塵も周りに見せない、大人でかっこいい姿にあこがれた。
でも、その行動のもとになっているのは、彼の「願い」だった。
命がけで好きな人を守る。そのためには、どんなこともする。どこまでも残忍になる。おそらく本人も理解していないほど残忍になれる。

ホント、底が知れない男だなぁ。あれからいろんな漫画のキャラを通ってきたけれど、いまだにNo1の沼だ。

こういう男は大変なんだよ、と、過去の自分に警告を鳴らす。

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