松方弘子は消えたのか。
20代のころ、すがるように崇拝していた女性がいた。
働きマン、松方弘子である。
常に全力投球。彼女が夢と現実のはざまで葛藤するシーンは、こちらも一緒に泣かされ、共感をした。
私はそこまで優秀ではないけれど、彼女のように夢があった。だから上にいくと決めていた。
せっせと仕事をこなしていた30代入口、あることに気がついた。
それは、任された仕事を『それなりのクオリティを担保しながら、量をこなせる中堅は、意外と少ない』、という事実だ。
だいたいの人は50~60点くらいで長距離ランニングをする。
目立ちたい人たちは120点を出そうとするが、失敗すると20点くらいのクオリティになるし、落差がはげしい。
会社員である以上、上司からの安心安全という信頼をもらうことが、案件が集まる一番の方法だ。
だから私は、70点を大量生産できるようなヤツになろうと思った。
若いときに培った得意とするパターンを磨き、できるだけ細部まで目くばせをするようにした。
つまりはそれなりにがんばってみたのだ。
そうこうするうちにご案件が集まるようになった。
調子に乗って頑張り続けた。
しかし。
初夏の朝に、突然、悲劇はやってきた。
「んんん??金縛り…?」
意識はあるのに起き上がれない。
カラダが泥になったような、重さ、不自由さ。
まるで3カ月分のPMSが発症した辛さである。生理は先週終わったはずだ。
さらにそれだけではなかった。
朝の日課であるメールの返信や、ディレクターへの指示…それらを考えようとしたら「オエッ」となるのだ。
まるで、脳からの指令をカラダが全力で拒否する、そういう感覚だった。
カラダが脳にストライキを起こしている。
そして脳も降参しはじめている。
考えられる理由はひとつ。
『働きすぎ』
ただ、それだけだった。
わたしは今年33歳になる。もう前ほど若くはない。
物理的に、量をこなすことができないのだ。
松方弘子は、29歳のまま歳をとらない。
もし彼女が30代になっていたら、どんな女性になっているのだろう。
消えたのだろうか。
それとも。
少なくとも、働き“マン”のままでは生きていないと思う。
33歳のオンナが、
働き“ウーマン”として、どう前進していくべきなのか。
様々な事例をもとに、仮説と紆余曲折を、書いていこうと思う。
ああ、30代の松方弘子に会いたい。
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