SaaS企業の管理部門がSaaSを導入して定着させるまでの道のり #SaaSLovers Day14
はじめまして。株式会社スタディストにて法務・総務を中心に管理部門のマネージャーをしている小野寺知花(おのでらちか)と申します。
この記事は#SaaSLovers というブログ投稿企画Day14で投稿します。
過去の記事はこちらから見られます。どの記事もとても興味深いものばかりなので、ぜひご覧になってください!
自己紹介
2021年5月に法務専任のマネージャーとして株式会社スタディストに入社し、最近では法務・総務に軸足を置きつつ、幅広く管理部門のマネージャーとしてあちこちに顔を出しています。
前職までは電器メーカー法務部門で海外含む全社コンプライアンス企画やBtoBシステム営業向けの契約審査からキャリアを始め、途中法科大学院を挟みつつ、会計事務所でリスクコンサルタントを経て、食品メーカーで海外&新規事業法務担当と、法務・コンプライアンス一筋の人間でした。某ドラマの西島秀俊よろしく、大企業からスタートアップに飛び込んだ組でもあります。
法務からこのようなSaaS系アドベントカレンダーへの参加は少なそうですが、過去にSaaSLoversに参加したスタディスト社内の事業企画のメンバーきもとさんから、「小野寺さんがSaaSを導入した経験って、多くのSaaS関係者の参考になるのでは?」と誘われ、勢いでこの企画に参加してみました。
今回はSaaSの導入背景や社内稟議などがどう進んだのか、普段SaaS企業のマーケティング・営業サイドからは「立ちはだかる壁」として映る(であろう)、導入企業側が何を考えてSaaS導入を検討しているかについて、徒然と書いてみたいと思います。
法務・総務のお仕事とLegalTech
ところで「法務や総務の仕事にSaaSなんて関係あるの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。Tech化がかな~~り遅れていた法務部門ですが、2015年ごろから徐々にLegalTech企業が存在を高めてきており、近年うなぎ上りの市場となっています。
特に電子契約システムはコロナ禍の出社原因である郵便・水やり・押印のかなり大きな部分を占める契約書の押印と郵便を激減できることもあり、大企業から中小企業まで急激に浸透しているという印象です。
例えば契約業務を取っても、大きく分けて以下の「案件受付」「契約書レビュー・リサーチ・作成」「電子契約(押印)」「契約管理」の4つのプロセスに分かれますが、プロセスすべてをIT化しようと思えばできるほどSaaS企業が群雄割拠しています。
昔(バブルの頃)は契約書をコピーして手書きで赤ペンで修正し、上司にびりびりと破られ、泣きながらもう一回修正してタイプライターさんに回していたという時代もあったそうですから、良い時代です。
SaaS導入までに導入部門が考えていること
とはいえ、「案件受付は専用システムを使って、レビューはAIを活用、電子契約で押印して、契約管理はOCR付の契約管理システムで自動管理!」が理想ではあるのですが、悲しきかな、SaaSの費用はすべて固定費となります。
利益を上げるには「売上を上げる」か「経費を下げる」しかない以上、自ら売り上げを上げることがなかなか難しい管理部門が戦うには、「〇〇というシステムを入れると、業務効率化または損失削減に役立ち、ゆえにトータルで経費が下がります」という説明ロジックを立てる必要があります。
そのため、実際に当社内でSaaS導入を進めた際には、以下のプロセスで導入検討を進めました。
導入すべき分野の優先順位をつける
導入システムの選定、競合との機能・費用比較のための情報収集
導入システムの担当営業から具体的な見積取得
稟議を通すための説得・交渉
(1)導入すべき分野の優先順位をつける
個人用のサブスクサービスを導入しすぎて家計を圧迫している私ですが、企業も同じく、すべてのSaaSを導入してしまえば破産一直線です。
そのため、「利益を上げる」という経営課題に直結するよう、導入することで経費を下げられるSaaS、すなわち、「何も導入しない」(=人力で頑張る、既存システムを使い倒す)と比較しても、業務効率化や損失削減の度合いが高く、費用対効果を説明できる分野のSaaSから導入を検討しなければなりません。
当社の場合はほぼ毎日リモートワーク(私も月2~3回程度しか出社しません)のため、契約業務でいえば、電子契約>契約管理≒案件受付>レビュー効率化の順で、ダントツで電子契約の優先順位が高かったです。そのほか、法務・総務業務全体に広げると、損失削減の観点から、内部通報用のシステム導入も優先順位が高く、導入を実現しました。
SaaS営業電話への対応の観点から言うと、この優先順位付けで負けているSaaS分野は基本的には「現在検討中です」で、定期的な情報交換に留めています。もちろん、この定期連絡で受けた機能アップデートや導入事例(使い方)紹介、会社の状況の変化や価格改定等で急に優先順位が変わる場合もあります。
(2)導入システムの選定、競合との機能・費用比較のための情報収集
優先して導入すべき分野を定めた後、初めて具体的にどのシステムを導入するかを検討します。事前にざっくりとどのようなシステムがあるかはWebで検索しますが、実際の使い心地等は法務同士の横のつながりなども活用します。
中でも新しい分野のサービスであれば、サービスの安定性や企業自体の安定性に疑義があるところが除外され、機能・価格等でPros/Consをリサーチします。
Webや同職種の仲間からの情報収集が行き詰まれば、資料ダウンロードやセミナー参加等で初めて営業と接触します。
この時に資料請求をしてタイムリーに連絡をいただけた企業はやはり好印象ですし、かなり放置される場合にはかなり悪印象で、後々の選定に影響を及ぼします。我ながらわがままな顧客だと思いますが、だからこそ、日々インサイドセールスの皆様には頭が下がります・・・。
(3)導入システムの担当営業から具体的な見積取得
インサイドセールスとの電話でざっくりとした課題感をお伝えし、アポイントメントを取った後、担当営業(フィールドセールス)から具体的な機能説明と見積説明をいただきます。
導入企業側としては費用対効果で説明をつける必要があるので、費用目安を早めに知りたいのですが、SaaS企業側は「提供できる価値を説明してから費用を伝えたい」というよくある攻防があり、30分ほど話を聞いた後、「あ、予算に全然見合わないですね・・・」ということもあるので、なかなか難しいと思うこともあります。
企業によって紋切り型営業のところもあれば、今抱えている課題を確認してくれる企業もありますが、上司の説得や稟議に使える情報を的確に提供してくれる営業はありがたいです。営業方針は各社それぞれですが、稟議を通すのが難しかったり、その後の運用が難しそうなシステムほど、出来れば担当営業やカスタマーサクセスが信頼できる企業と付き合いたいと思います。
稟議を通すための交渉
ここまで情報収集が終わって初めて、上長及び上長を通じて経営陣へ稟議を通すための前準備が完了します。
私の場合、上長が管理部門管掌役員であり、財務(経営企画)担当も兼ねているので、部門としての必要性と予算上の許容範囲(=予算取り)が一度に確認できますが、会社・部門によっては上長承認の他に、経営企画への予算取りが必要になることもあると思います。
決裁者の視点から検討するとき、以下の点で検討が不足していると導入が叶わないこともままあります。なかなか納得してもらえない時にはSaaS企業の担当営業と一緒に根気強く戦わねばならないこともあります。
・費用対効果の検討
⇒業務効率化の場合:効率化して空いた時間で何をするのか?労働者の賃金が下げられない以上、導入しない方がコスト的にはよいのでは。
⇒損失削減の場合:セキュリティ・ガバナンスの観点から本当に必要なのか。損失の発生頻度×影響度を踏まえて、費用に見合うか。
・各機能があることは分かったが、業務・作業への影響又はガバナンス上の効果に落とすとどうなるか?
・選択肢はSaaS導入ありきなのか?派遣社員を雇ったり、業務委託に出す方が安いのでは?
稟議通過後のSaaS定着の強い味方~スイッチングコスト低減のために
特に業務効率化で稟議を通す場合、その後のシステム切り替えに伴うスイッチングコストが高いとなかなか稟議自体が通らない、ということもあるかと思います。
前職までで、特に法務部門主体で導入するようなシステムの場合、一方では「早く契約見てください」と急かされつつ、「このシステムどう使うんですか」という問い合わせにも対応しなければならないということで、説明会開催の手間や問い合わせ爆増を思うと新規のSaaS導入に二の足を踏んでしまう、ということもあるあるでした。
また、SaaSあるあるで、いきなりUI、ロゴ、社名が変わったときには「マニュアル全作り直しじゃねえかああああ」とPC画面を殴りたくなったことも一度や二度ではありません。
しかし、当社ではTeachme Bizが導入されており、簡単にマニュアルを作成・改善できることで、管理部門が新たにSaaSシステム(経費精算システム・勤怠システム・電子契約システム等)を導入する際でも、説明会は行わず、問い合わせが爆増したということもありませんでした。
当社が経費精算システムを切り替えた際の体験談については、当社の庄司副社長の記事もぜひご覧ください。https://note.com/keitaroshoji/n/nb25bcbbdae9f
これは前職までで新規システム導入の度に大混乱を招いていたことを考えると本当に画期的で、Teachme Bizは世の中のSaaS導入のスイッチングコストを減らせるプロダクトだなと思っています。
当社ではTeachme Bizの浸透もあり、定着のためのスイッチングコストのことをほぼ気にせず検討できるのはありがたいです(システムの使い勝手自体のスイッチングコストはありますが)。
おわりに
最後はTeachme Bizの宣伝記事のようになってしまいましたが、SaaSLovers企画として、SaaS企業とSaaSを導入したい企業のそれぞれ見えていない部分をつなぎ、そして、より軽やかにSaaS導入を考えていただけるお手伝いをTeachme Bizへの事業貢献を通じてできればと思っています。
明日はopenpage(オープンページ)代表取締役、藤島 誓也さんの「SaaS経営者がVCに質問されるポイントから「SaaS成長戦略」を考える」という記事です!私も投資家と接する機会がありますが、経営者目線からの成長戦略、とても楽しみです🤗
#SaaSLovers #Teachme Biz #SaaS #LegalTech
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