『SHOGUN』の世界
今更ながら話題の(!?)『SHOGUN』を鑑賞。
時代劇はほぼ観たことがなく、大河ドラマなどで取り上げられたものでも戦乱の様子がメインとなるものはほとんど避けてきた。
刀で斬りつけ合うのがどうも苦手なのだ。
『SHOGUN』は、様々な賞にノミネートされた時に報道番組で取り上げられていたのをみて、圧倒的映像美や舞台セット、何より真田広之さん始めとする作品に関わった人たちの拘り・心意気を聞いて興味を持った。
とはいえ時代劇は苦手という気持ちでなかなか渋っていたのだがついに重い腰を上げ鑑賞したら、
あまりの圧倒的な制作に目が釘付けだった...。
舞台作りの大枠
まず、舞台セットに衣装に、大道具小道具などすぐ見てわかるところから細かなところまで実に美しく壮大で素晴らしかった。
それは現代の映像テクニック?を駆使してというのもあるかもしれないが、
誰かが何かで言っていた「ハリウッドが本気でやった時代劇」をヒシヒシと感じた。
あっぱれな役者陣と時代背景にあったこと
次に作品に引きこんでいくかのごとく素晴らしい俳優さんたち。
大変恐縮ながら、存じあげない役者の方が多かったのだが(本当に申し訳ない)
なんというのか...こう...黙っている時でも表情とオーラで何を考え、言わんとするのかがジリジリと伝わってくるこの感覚。
設定された時代というのは、自分の意見を言うことがある種許されない時代というのか、
例え家族や親しい人たちに対してだとしても、何でもかんでも口に出してはいけないという雰囲気があったように思う。
けれど、人間だから何も思っていないなんてことはないわけで、心の中で何を思っているのかというのを目で表情で、空気感で伝えようとし、少なくとも私には伝わったので圧倒された。
また、時代背景的にキリスト教の布教が関わる時代。布教にあたりヨーロッパから人がやってきてネットも翻訳もない時代にコミュニケーションをとろうとしたのは確か。
どのようにしてコミュニケーションをとっていたのかということは非常に興味深い。
当然のように「通訳」の場が描かれるわけだが、それに関してはこの記事が面白かった。
通訳部分(日本語のセリフと英語のセリフが重複する)をどうしてそのように描くのかというのは興味深く、その意図がしっかり伝わっていたように思う。
音楽も良き
一流の舞台、実力派の役者と合わせて音楽も素晴らしかった。
ここでこの音!良い!!!という言葉にするのは難しい瞬間的な快感よ。。
ディズニープラスで鑑賞するとき、イントロは飛ばせたのだが律儀に毎回聴いていた。
イントロの映像も美しいのでぜひとも飛ばさず聴いてほしい...。
ストーリーについて
※若干のネタバレ要素が含まれるので読む場合はご注意を。
このドラマはジェームズ・クラヴェルの『将軍』という小説に基づいて忠実に制作されているそうだが、必ずしも登場人物らにとってハッピーエンドとは言えないように思う。
「忠誠・忠義」とはなんなのか。
それぞれの立ち位置や家柄、背景からそれぞれが誰に(何に)忠誠を尽くして生きるのかというのが描かれている。
日の本(日本)にとっては異邦人となる按針(あんじん)にとってはその根本から理解することは非常に難しかったのではないかと想像する。
令和の現代に生きる私からしてもう〜ん・・・と思ってしまう心情もあるわけだが、
現代の世の中にも社会の組織の中で生きていると「忠誠を尽くす」というのは往々にして見られることでもあるのうに思う。
(流石に切腹はしないけど)
今ではそういうことが時としてハラスメントと言われるような世の中だが、そんな中でもこういった時代を描いた物語が話題に上がるというのは何とも不思議に思う。それは歴史というものにいつの時代も人々の興味が向いているということでもあるのかもしれない。
物語が進むにつれて私の特に好きだなと思った人物の死が訪れる。
最後にその種も明かされるわけだが、あまりの悲しさに最終盤は涙涙だった。
武器を手にして向かうことだけが戦いではない。
血が流れ、策略・思惑が飛び交い、時には裏切りもある。
それなのになぜ人は戦うのか?
それはこの物語においては忠誠・忠義があるからという答えだったのではないかと思う。
むかしながらの時代劇などが好きな層にはどのように響いたのかわからないが、ハリウッドの本気の時代劇、大変面白かった。