ギャルの彼女に忍び寄る魔の手
俺とギャル子はつき合っている。
そんなふたりの通う高校のクラスに転校生がやってきた。名前はチャラ男で身なりは金髪でかなりチャラい。
「なあ、今日一緒に帰らね?」
放課後になって帰り支度をしているとチャラ男がギャル子に話しかけていた。
「ごめんなさい。私、用事あるから」
「そうかー。じゃまた明日な!」
「うん!バイバイ!」
そんな2人のやり取りを見ながら、俺はというといつものようにギャル子と一緒に帰る為に学校の裏門に向かった。裏門は人通りが少ない為、お互い友人達に内緒でつき合っている俺たちには丁度いいのだ。
俺が裏門につくと、ギャル子はすぐにやってきた。そして、俺の方へ小走りで駆け寄ってきた。
「ねぇ!今日も待っててくれたんだね!ありがと♡」
「おう」
俺は素っ気なく返事をした。なぜなら、最近、ギャル子がチャラ男とよく話しているからだ。つまり、嫉妬だ。
こんな醜い感情を表に出してしまうなんてダサいなと思いながら俺はギャル子の横に並んで歩き始めた。
すると、後ろから声をかけられた。振り返るとそこにはチャラ男の姿が見えた。
「よぉ〜!奇遇じゃ〜ん。あれ、お前らってつき合ってんの?」
俺たちは一瞬固まってしまった。まさか見られているとは思わなかったのだ。
「えっと……」
「ち、違うよ。ただの友達だよ」
ギャル子が戸惑っている間に俺が答えた。この反応を見る限り、おそらくバレていないだろう。
「そっかぁ〜。ならよかったわ〜」
そう言って、チャラ男は去って行った。
「なんだよあいつ……気持ち悪りぃな」
「まあまあ落ち着いて。ほら、早く行こ」
こうして、俺たちは再び帰路についた。
翌日。登校して教室に入るとチャラ男がギャル子と楽しそうに会話をしていた。昨日のことが嘘みたいだった。
「ねえ、今日の体育バスケだってさ」
「まじ?ラッキーじゃん」
2人は楽しげに話をしていた。そんな様子を見て胸の奥がチクチク痛む感覚を覚えた。
「おい、行くぞ」
俺はギャル子を誘った。しかし、彼女は動こうとしなかった。
「ううん。私はいいや。先に行ってて」
「そうか……わかった」
俺は先に体育館へ向かった。
授業が始まってからも俺はずっとモヤモヤしていた。なぜギャル子は来なかったのか。どうしてあんな奴と話してるんだ。なんでなんだ……。考えれば考えるほど思考が悪い方へと向かっていく。
気がつけば1時間目が終わっていた。休み時間にトイレに行くとチャラ男がいた。思わず舌打ちしてしまった。その音を聞き取ったのか、チャラ男がこちらを振り向くとニコッとして近づいてきた。
「よお!久しぶりだなぁ!」
「ああ……」
「なんか元気ないけど大丈夫か?」
「なんでもねぇよ」
そう言うと、俺はすぐさまその場を立ち去った。そんな立ち去る姿を見てチャラ男は不敵な笑みを浮かべていた。
それから、数日経ったある日のこと。誰もいない授業後の体育館に忘れ物を取りに来ると片付けをしているギャル子を見つけた。声を掛けようとしたができなかった。隣にはチャラ男の姿があったからだ。
何を話しているのかわからないがとても盛り上がっている様子だった。俺はその様子を物陰に隠れて見ていた。すると、突然チャラ男が立ち上がりギャル子にキスをした。
「んん!?ちょっ……んふぅ///」
どうやら抵抗しているようだがチャラ男の力が強く逃れることができないらしい。しばらくすると、やっと解放されたようで息を荒げていた。
「ハァ……ハァ……何すんのよ!」
「ごめんごめーん。つい我慢できなくてさ〜w」
「ふざけんじゃないわよ!もう知らない!さよなら!」
そう言い残してギャル子は走ってどこかへ消えていった。その後ろ姿を見つめながらチャラ男は呟いていた。
「これで終わりだと思うなよ……必ず奪ってやるからな……彼氏さんよぉ」
俺は家に帰るとすぐにベッドに横になった。頭の中ではあの光景がフラッシュバックする。そして、ひとつの結論に至った。
(俺じゃダメなのか?)
俺ではチャラ男の足元にも及ばない。だから、ギャル子が奪われてしまったのだ。そんなことを思いながら眠りについた。
翌日から俺はギャル子を避け続けた。朝も一緒に登校しないように早めに出て、下校も別々になるようにした。
「ねぇ!ちょっと!なんで最近避けてんのよ!」
「別に普通だろ。気のせいじゃないか?」
「気のせいではない!絶対におかしい!何かあったんでしょ!話してよ!じゃないと私……」
泣きそうな顔をしていた。これ以上隠し通せないと思った俺は真実を話した。すると、ギャル子の顔はみるみると青ざめて行った。
「嘘……よね?私が寝取られるとかありえないんだけど!あんたバカじゃないの!?」
「うるせぇ!お前が悪いんだろうが!俺以外の男と仲良くしやがって!お前は俺だけを見てればいいんだよ!他の男のところへ行くなんて許さないからな!!」
「はぁ〜。ホントにアホね。いい加減にしなさいよ」
ギャル子の口調が急に変わった。そして、俺の頬をビンタしてきた。
パチンッ!!
「痛えじゃねぇか!いきなりなにするんだ!」
「それはこっちのセリフよ!勝手に勘違いして落ち込んで、挙げ句の果てには逆ギレ!ほんっとダサい!サイテー!」
「なんだよ……悪いかよ……俺はお前のことが好きだったんだよ……なのに、あいつとばかりイチャイチャして……ムカつくんだよ……俺のものにならないなら……」
そう言って、俺はギャル子を抱きしめた。
「は、離しなさいよ……こんなことされたら……諦められないじゃん……」
「嫌だね。ぜっっったいに離れない」
「強情なんだから……」
こうして、俺たちの関係はより強固な恋人同士となった。
〜fin〜