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2024.10.26 「エンタメ」として昇華しろ

「面白く生きるほかに何もすべきことはない」

『有頂天家族』森見 登美彦著

大好きです、『有頂天家族』。主人公はなんと「たぬき」。京都を舞台にテンポよく進むストーリー、どこかのらりくらりとした文体、それぞれに考え悩み、もがいて生きている魅力的なキャラクターたち。かなり暗い話も、カラリとした主人公の矢三郎の視点を通せば、どこか小気味よく映る。

原作の小説はもちろん、アニメ版もたぬきたちがもふもふしていてこれまたかわいい。絵面だけで癒される。キャラクターデザインは、漫画『さよなら絶望先生』の作者、久米田 康治先生。絶望先生のキャラクターが強すぎて、どんなキャラクターになるのかと内心ドキドキしていたが、もうこれが作品にぴったりハマって。動く矢三郎たちを見た時は、感無量だった。

この作品で、いちばん好きなところは、そんな矢三郎の掲げる「面白きことは、良きことなり」と言うモットー。これは、もうたぬきの世界だけではなく、どんな場面においても最強だと思う。

「面白い」は最強なのだ。

大事なことなので、2回言いました。大変な時や苦しい時、「これって後にネタに出来るし、面白いよね」と思えたり、「ここから這い上がれたら、面白いのでは?」と逆境の時に考えられたら。

例えば、友人と語る愚痴もそう。あれは私にとっては、ある種のエンタメなのだ。仕事でこんなことがあった、最近こんな嫌な思いをした、と聞いてもらい、共感してもらい、また友人の話を聞いて、それはひどい、と憤慨する。そして、全部吐き出してスッキリする。

昔、同じ職場で働いていた人で、毎日毎日愚痴を言い、かなり疲れたことがあった。友人と話す愚痴は楽しいのになんでかな、と思ったら、そこには「明るさ」と「関係性」がなかったのだ。「この人なら受け入れてくれるだろう」と言うお互いの信頼感と「この場限り愚痴を言って、スッキリしよう!」と言う暗黙の了解。ここでは正論は必要ないのだ。

あちこちに転がる苦しさも、単なる「エンタメ」として昇華できたら。言葉で言うだけは簡単だけども。


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