山口昭男句集 『木簡』
「秋草」主宰の山口昭男さんの第三句集。
平成22年の「秋草」の立ち上げからの7年間をまとめた句集とのこと。
平易な言葉で紡がれる俳句、取り合わせの妙で魅せてくれる俳句。
とても勉強になる句集でした。その中でとくに好きだった15句を。
北風や一味を掬ふ竹の匙
ペン軸をくはへ裕明忌を修す
焼売の中の肉汁囀れり
寄書のまんなかの文字水温む
まつすぐな赤子の尿鳥渡る
大根に大根の葉のはりつきぬ
元日や埃の粒が顔の前
まるめてはすこしふくらむ紺水着
ふりむいて蟷螂の貌かたむいて
氷柱より光のぬけていくところ
一泊の娘の蒲団合歓の花
雑炊や活字に艶のありし頃
新緑やバターを包む銀の紙
滴りへ次の滴り追ひつきぬ
縛られて蟹茹であがる秋彼岸