BUKATSUDO PRESS句会「冬休み」
ネット上の句会システム「夏雲システム」を用いて、かもめ句会の有志のみなさまで句会をしました。テーマは「冬休み」です。
17名の方々にご参加いただきました!
みなさまの句と熱い選評をご紹介します。
まずは8名もの方が特選だったこちらの句から。
教頭がチャボ預かつて冬休み 四十九士
「PTAなどに関わると、教頭先生がいかに様々なことをしているか、ということをしみじみ感じる。こんなことまでするんですか、と驚くやら関心するやら気の毒になるやら…おまけに冬休みにチャボ預かるってどんだけ…思わず笑ってしまうけど、ちょっと涙ぐましくさえあって、全ての学校の教頭先生を拝みたくなる名句だと思います。」(ひつじ)
「教頭とチャボの組み合わせがとってもいいです。鳥小屋でチャボを追い回して、間に合わせのかごか何かに入れるのも教頭の仕事でしょう。逃げ回るチャボのふわふわと飛び散る羽に冬の日が差しているのでしょう。かつてと軽く繋げたところに、穏やかに冬休みに入る安堵感と幸福感があります。」(幸代)
「実体験なのか想像なのか分かりませんが、夏休みと違って、全く学校が閉まる冬休み感がよく出ていると思いました。」(霞)
「教頭とチャボがいいですね。ウサギとかネコじゃなくてチャボ!校長は預からないでしょうね。教頭先生ってそういう面倒くさい事を引き受けそうです。教頭先生のイメージは生瀬勝久で!」(杏奈)
「実話なのかもしれませんが『教頭』も『チャボ』も、チョイスが絶妙。夏休みは交代で学校の生き物の面倒を見るけど、冬休みは確かに誰かが預かったりもしましたね。『〜預かつて』と中七で言いさす加減もいいなと思いました。」(かるか)
「小学生のころ、そういえば冬休みに入るときに飼育室のうさぎや鶏など寒いからどうなるんだろうと心配していたことを思い出しました。まさか『教頭』が『チャボ』を!とユーモアたっぷりで迷わず特選にいただきました!」(瑠璃甫)
「『チャボは冬休み中、私が預かります』終業式前の職員会議での人のいい教頭先生の言葉。豪農の次男坊でチャボを預かる土地も小屋もあるらしい‥そのため、今日はオート三輪で来ている教頭。『チャボ』『教頭』という、ちょっと可笑しい単語がこの句の景を生き生きとさせていると思います。」(秋子)
「仕方なかったんでしょうね。責任感ある教頭先生が、家族に邪険にされず無事新年を迎えられていたらいいなと思います。」(めぐみ)
ほかにも佳句がたくさんありました。
走り出す肺のかるさよ冬休み かるか
「冷たい空気の中で走ると、こういう感覚になることに、共感しました。走りも軽やかになりますよね。」(果歩)
「冷たい空気を喜んで肺に入れている感じがあり、子供のときの冬休みを思い出しました。」(いくこ)
「冷たくて乾いた空気はかるく感じるもんなんですね。」(よしゆき)
校庭の土俵さらさら冬休 ひつじ
「高校に土俵がありました。水が撒かれない冬休み中の土俵は土が乾いて、さらさらで滑りやすくなっていました。少し当たっただけで、スリップダウンしてしまうものでした。」(よしゆき)
「しばらく使われない土俵。最終日に美しく整えられた土俵の砂は汗に固まることもなくさらさらです。冬の乾燥した空気も感じます。」(雪)
「校庭に土俵があるという設定が面白いです。土俵の俵から足が出たかを判定するためにさらさらの土を撒くそうなので、この土俵は使われているのでしょう。子供たちが元気にお相撲をする景が浮かびます。」(杏奈)
ゴーフルで晩酌の祖母冬休み よしゆき
「おばあちゃんの予想外の酒の肴が面白いです。ゴーフルのパッケージの深緑や赤紫のキラキラが思い浮かび、なつかしい気持ちになりました。きっと両親共働きで冬休みはおばあちゃんと多くの時間を過ごしたのでしょうね。」(千佳)
「ゴーフルって、自分が子供の頃はいただくとすごく嬉しくて有難いお土産でした。文字と平行に食べようとか、文字のここら辺から食べようとか、この味から食べようとか、どうでもいい自分だけのこだわりがあった。ゴーフルは酒の肴のイメージではないけど、ゴーフル好きなおばあさんが楽しみながら食べているなら、お酒もありな気がする。嗜好はそれぞれ、幸せもそれぞれですよね。」(ひつじ)
「おばあちゃん渋い。ゴーフルというアイテムの選び方、語感含めて効いてるなと感じました。」(かるか)
鉄棒とわたしだけひま冬休み まっちゃん
「ああ、わたしのこと見てたのね。と、たまらない気持ちになりました。子供のころも、今も、ずっと暇な冬休み。」(あゆ美)
「鉄棒とわたしだけというところで、今まさに無為にぶらーんとぶら下がっているわたしが見えます。わたしが平仮名なので、まだ逆上がりもできないくらいの子供でしょう。大掃除では足でまとい、お兄ちゃんお姉ちゃんには相手にしてもらえない。こんな日は校庭がやたら広く見えます。『ひま』という物言いに、おしゃまな性格が感じられ、きっと孤独ではないんだなと思います。」(幸代)
「ひま、まで言ったのがおもしろい!」(いくこ)
冬休みチーズの絵にはいつも穴 千佳
「学校も休みでトムとジェリーの再放送を良く見ていたなあ。穴のあいたチーズが美味しそうだった。」(京子)
「確かに!何というチーズの種類なのでしょうか。冬によく登場するチーズの美味しさとおかしさも伝わってきます。」(桂)
水曜の虎は眠さう冬休み いくこ
「水曜の虎という意表をつく動物にまず心を掴まれました。暑いから眠そうだと面白くもないけれど冬休みだとリアリティを感じます。寒いと来園者が少なくて暇を持て余すのでしょうか。虎が曜日を把握しているとは思えませんが、妙に説得のある水曜日だと思います。」(桂)
「冬休みに入って動物園に毎日通っている人が、どうやら虎の休みは水曜らしいと発見するところがおもしろいです。」(まっちゃん)
祖母部屋に入り浸りをり冬休み 秋子
「おばあさんがご存命でもそうでなくとも、部屋の暖かみを感じます。冬休みらしい過ごし方だと思いました。」(まっちゃん)
「きっと、こたつがあって、ミカンやお菓子があって、お小言も言われない。最高の逃げ場所、最高の冬休み。優しそうなおばあちゃんも見えます。」(果歩)
秘境めく引き出しの奥冬休み 雪
「感覚的には大掃除だけど、引き出しの奥底を改めて見るのに冬休みはいい機会。そしてありがちだが、忘れていたものに出会うたびにしばし手が止まり、時間だけが過ぎていく。引き出しの奥に吸い込まれて出てこれない感じを、『秘境めく』がよく現している。結局何も捨てられず、もとのまま、引き出しは静かに閉じられるのだろう。」(四十九士)
「潰れたコッペパンと大量のお知らせの書類と給食袋ですよね。見たことあります。」(まっちゃん)
冬休み夫のこさへた親子丼 京子
「こさへたの方言がやさしくて好きです。夫の家族への愛情やあたたかい家庭のようすが見えてきます。奥さんはちょっとはらはらした様子でみまもっているのでしょうか。『親子』丼という字面で子供の分も作ったのかなと想像も広がります。」(雪)
「夫の冬休み…かと思って読みましたが、冬休みで毎日家にいる夫に親子丼を作ってもらって、妻の束の間の冬休みとも。」(霞)
鍵つ子の鍵てらてらと冬休 桂
「冬休み、鍵っこは家にいるので鍵に用はない。鍵は机に置かれているのか、どこかに掛かっているのか、うそぶくようにてらてらしているのかもしれない。」(四十九士)
「鍵っ子は鍵を携行せずに済む様子を『てらてら』というオノマトペで巧く表現されているなと思いました。鍵っ子の心象も見えてくるようです。」(瑠璃甫)
冬やすみ家族と過ごすひとばかり あゆ美
「実家に帰れず東京で冬休みをすごす地方出身の人、あるいはコロナで高齢の両親のいる実家に帰るわけにも行かず、一人で冬休みを過ごす独身の人、または夜逃げして帰る家のない人‥いろいろな人の切なく寂しい冬休みの情景が浮かんでしんみりしました。」(京子)
椅子に雑巾干したまま冬休み 杏奈
「句跨りのリズムが、年末のあわただしさの中で突入した冬休みの感覚に合っていると思う。今も学校にはこういう景があるんだろうか。」(四十九士)
「誰かがこぼした牛乳の匂いがする雑巾ががぴがぴに乾いていく。」(あゆ美)
冬休み雲いそいそと流れゆく 果歩
「冬休みと自然の景色との取り合わせが雄大です。『いそいそと』があっという間に過ぎてしまう冬休みの感じと呼応しているようにも思いました。」(千佳)
地球儀に白き埃や冬休 瑠璃甫
「埃は白いものですが、強調することで冬感が出ていると思います。」(まっちゃん)
「白き埃から雪を連想しました。宿題に飽きてきて、地球儀を眺めては『遠くに行きたいなぁ』と思っているのでしょうか。」(千佳)
先生の旅行鞄や冬休 幸代
「モノで魅せているところがいいと思いました。すっきりとした形も魅力的です。冬休みは先生にも思いっきり羽を伸ばしてもらいたいです。」(千佳)
冬休あつと言ふ間に会へるけど 霞
「つぶやきをそのまま一句にしたところが面白いと思いました。春休みでも夏休みでもない、冬休み独特の感覚がでています。」(千佳)
みなさまの句より一句ずつ紹介させていただきました。
なお最高得点句とその句にまつわるコラムはBUKATSUDO PRESSに掲載予定です。
今年の冬休みは、教頭先生にチャボを預けて、肺を意識しつつ走って、校庭の土俵と鉄棒のことを考えながら、おばあちゃんとゴーフルで一杯やりたいです!
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