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『万太郎の一句』 (小澤實著)
図書館で借りてとてつもなく面白かったので、2年ほど前に購入した一冊です。
こちらの本は365日入門シリーズの第2弾。
本のもとになったのは、平成16年1月1日から始まった連載で、1年間、毎日1句、久保田万太郎の句を小澤實さんが紹介していくというもの。
万太郎の句もよいですが、1句1句に対する小澤さんの解説がすばらしいです。
この手の本では、解説が硬すぎたり、長すぎたりすると読む気がしなくなり俳句だけに目を通すことになりがちなのですが(←わたしだけかもしれませんが)、小澤さんの解説は分量がちょうどよく、とても読みやすい文章です。
万太郎の俳句の改作の過程がいくつか紹介されていて、その意図するところや効果を小澤さんが解説してくださっているのが面白いです。
たとえば
さびしさは木をつむあそびつもる雪 (P11)という句。
初案は「淋しさはつみ木あそびにつもる雪」、再案は「淋しさはつみ木のあそびつもる雪」、そして最終形が「さびしさは木をつむあそびつもる雪」。再案でまずつみ木あそびと雪とを分けて、最終形ではつみ木ということばまで解体されています。心を開かぬ子供の姿を描いた句が、人間存在の孤独を描く句にまで育っていく、と解説されています。
以下、とくに好きな句です。(万太郎の句、とても好きなので絞りきれないのですが……)
双六の賽に雪の気かよひけり
女囚房雪の鏡をかけつらね
だれかどこかで何かさゝやけり春隣
旅びとののぞきてゆける雛かな
白足袋のすぐに汚れてあたゝかき
四月馬鹿朝から花火あがりけり
仰山に猫いやはるわ春灯
パンにバタたつぷりつけて春惜む
ゆく春の耳掻き耳になじみけり
短夜のあけゆく水の匂かな
たけのこ煮、そらまめうでて、さてそこで
この恋よおもひきるべきさくらんぼ
夏ごもりの煮くたらかしのうどんかな
知らぬまにすこし眠りぬ夜の秋
何もかもあつけらかんと西日中
秋晴や人がいゝとは馬鹿のこと
飲めるだけのめたるころのおでんかな
しぐるゝや水にしづめし皿小鉢
冬の灯のいきなりつきしあかるさよ
東京に出なくていゝ日鷦鷯
↓こちらの本です。
https://www.amazon.co.jp/万太郎の一句-小澤實/dp/B01MXF2GNS