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天の逆鉾②
磐座(いわくら)は山中にあることが多く、大きな磐座を見るために今まで何度か登山経験がありました。
鎖を伝ってでないと登れない山も何度か経験があります。
でも、高千穂峰の「レッドクリフ」はわけが違っていました。
汚れるのが嫌で、古いスニーカーを用意して行ったのが誤算でした。スニーカーって当たり前ですが経年劣化するんですね。ハッと気付くと靴の裏のゴムの部分がベロンベロンに剥げています。そして「レッドクリフ」は溶岩のざれた急勾配。もはや平面化した靴底に軽石ゴロゴロの斜面では全く踏ん張りが効きません。こうなったら、恥も外聞もなく、四つ足歩行しかない!と滑落の不安と闘いながら四つ足歩行を始めた私は、「本日の登山者」の中で間違いなく一番のへっぽこぶりを露呈していたと思います。
登りは良いが降りれるのか、降りれなかったらヘリに救助してもらうことになるのか、妄想が次々と脳裏をよぎります。
それでも、何とか、本当に何とかレッドクリフゾーンをクリアすると
次のステージは御鉢ゾーンです。レッドクリフがあまりに辛かったので、この御鉢は実はあんまり記憶に残っていません。ただ当日は風も強くなく、私自身が高所恐怖症ではなかったので、むしろ歩きやすいとすら思いました。それでも、途中硫黄の臭いが充満していたのは良く覚えています。活火山であることを体感した瞬間でした。
御鉢を越えると小さな鳥居とお社が鎮座されていて、これがいわゆる霧島神宮の元宮なのでした。
ここでのお願いは、ただただ「天の逆鉾」に辿り着けますように、一択です。
今となってはこれ以外のお願いなどあるはずもなく、まさに命乞いをしたのでした。
そして最後の急勾配。再びざれ石との格闘です。たただ岩肌は赤くなく茶色でしたし、所々鎖がついていたので、その鎖に身を託し(よくもまぁ、あの鎖を信頼したものだと、今となっては呆れるのですが)体力も限界に限りなく近づいて、足が上がらなくなって来ていたので、腕の力に任せるしかありませんでした。
途中私同様に両手両足全身で登山に挑んでいる親子に遭遇。仲間の居る喜びに勇気をいただき、心からホッとしました。
その後何とか無事山頂まで到着する事ができ、天の逆鉾との出会いは感動的でした。
青い空を背景に、青銅は一登山者の苦労など知る由もなく、そこに変わらず鎮座し続けているのでした。
感動。