私のオススメ本【桐島、部活やめるってよ】
覚えていますか?
夕暮れに染まる校舎。グラウンドに響く運動部の掛け声。ブラスバンドの演奏、ボールの跳ねる音。
青春時代には毎日当たり前にあった日常は、今はもう遠い昔。思い出そうとしても記憶のどこか深いところで迷子になっています。
そんな淡い記憶を思い出させてくれる本がありました。今回私が紹介する【桐島、部活やめるってよ】の中には、切なくて苦しくてイライラしたあの頃が見事に描かれています。
これが嫉妬?
キャプテンが部活を辞める、と聞いて喜んでしまった。そんな自分に嫌気がさすし、心は罪悪感でいっぱい。でも心のどこかでほっとしてるし、たぶん喜んでる。
部活って不思議な世界ですね。お金がもらえるわけでもないのに、将来プロになれる可能性なんてないのに頑張ってしまう。もっといい加減にやれたらいいのに。
周りにいるのは友達なのにライバル。仲良くしたいけど、自分より上手なところを見せつけられると苦しい。これが嫉妬なのか?
「部活」というテーマでは、あの頃の心の中の混乱ぶりを久々に思い出しました。
目立つ人と目立ってはいけない人
神様は残酷です。同じ人間のはずなのに、ただそこにいるだけで華やかな人もいれば、人目をひく容姿をしていない人もいます。
面白いことを言って人を笑わせる、スポーツ万能、着こなし上手、賑やかな才能を持った人もいれば、創作など大人しい才能を持つ人もいます。
どんな人もオンリーワンで尊いはずなのですが…華やかな人にだけ許されるものって、教室には確かにありました。
図書委員で吹奏楽部という、典型的な陰キャだった私はこの本を読んで、あの頃の心の痛みを思い出しました。
世界一美しいもの
青春の苦しみといえば、伝統的なものがもうひとつ「失恋」があります。好きな人に彼氏彼女がいたり、密かに好きな人の事を友達も好きだったり...あの頃は天地を揺るがす大問題でした。
放課後のグランドに好きな人の姿を見つけるだけで、世界一美しいものをみたと思えた。
あの時の胸の高鳴りも痛みもすべて、青春の思い出です。
実果の物語
この本には青春の思い出だけがあるのではありません。
実果のストーリーは、本の中にピリッと辛いスパイスをきかせています。
実果は、青春以外にも重い問題を抱えています。しかも一生それを自分ひとりで背負っていく覚悟なのです。
可愛らしい女子高校生の心の中にある、どんよりとした問題は、この本を読む私たちの心をかき乱します。
一瞬の輝き
あの頃の日常も、青春時代の悲しみ、苦しみ、胸の高鳴りも痛みも、すべて今となっては遠い昔のものになってしまいました。
こんなにも懐かしく美しいと思えるのに、実際に自分がその中にいた時には、すべてが鬱陶しくて、逃げ出したかったんですよね。不思議です。
誰にでもあった、そして誰もが失ってしまったあの青春時代の輝きにもう一度触れたい時は、ぜひこの本を読んでみてください。私のオススメ本です。