映像制作者が使うデスクトップパワーアンプ
ぼくはオーディオ好きなので機材の種類が多いほうが選びがいがあって楽しいと思っている。だからアンプ内蔵のアクティブスピーカーは使わないし、そのアンプだって分けちゃうのである。
性能的にはプリメインアンプで十分なのはわかっているが、分けられるものは分けたくなるではないか。つまり、オーディオ好きには当たり前のことであるが、アンプを「プリ」と「メイン」に分けるのである。
メインアンプのことを一般的にパワーアンプと呼ぶ。ぼくはこのパワーアンプにQUADの405という30年以上前のアンプを使っている。
ところでQUADはイギリスのメーカーであるが、日本ではクオードと発音されている。現代ならクアッドと読まれただろうが、その昔はあまり一般的な響きじゃなかったせいか、最初にだれかがクオードと呼んでそれがそのまま読み方になってしまったようだ。
なのでオーディオ界でQUADとあったらクオードである。でないと通じない。
QUAD405は、まずなんといってもこのデザインがいい。前面の柵はヒートシンクであるが、直線を基調として全体の佇まいが非常に好みである。音よりも先にデザインを褒めたが、音は文句なしに良い。オーディオ好きの知人が405を褒めちぎって聴かせてくれて、ぼくもすっかり虜になった。
オーディオ雑誌的な褒め方は得意じゃないが、音量を上げていっても歪みが少ないのでうるさくならない。音は奥行きを感じるような立体感を伴う。初めて聴いたときは感動した。
405の扱いづらいところは入力端子がDIN端子であることだ。これは当時一緒に売っていたプリアンプと合わせることを想定したものであるが、今どきDINなんてまず見ないし、しかも4ピンのDINが特殊中の特殊である。
巷ではこのDINをRCAに改造して売っているひともいる。405も後期のモデルになるとDINをやめてRCA端子を採用しているので、DINの煩わしさから開放されたいひとは後期モデルを探すとよいだろう。
ぼくはどうしたかというと、自作した。4ピンのDINというのがなかなか売っていないのだがあることはある。それを入手して安いRCAケーブルの一端を切り落としてはんだ付けした。安いというのがポイントで、要するに高価で太いケーブルは物理的に入らないのである。
ヴィンテージオーディオというのは、こうした扱いが現行品に比べて面倒な部分があるが、それを乗り越えると想像以上の世界が待っていたりする。そしてオーディオというのは、つくづく枯れた技術の塊なのだなと思うのである。