ほっとする日本の味、蕗の煮物
ふきのとう持っていくかと父が言うのでもらって帰ることにした。
生のあると聞くとあるよというので、それじゃあ生の蕗ちょうだいと言った。
私の煮たのよりも自分で煮たほうが美味しいっていうんでしょと母が冗談めかして言った。
違うよ、煮たのは足が早いから。
正直に言えばぼくが煮たほうが美味い。母のは昔ながらの蕗が真っ黒になるような煮方で、それはそれで美味しいんだけれどもどうしても蕗の爽やかさみたいなものが失われてしまう気がしている。ぼくのやり方はかつて日本料理屋さんの大将に習ったもので、いわば本格的な料亭の味である。出汁を除けば。
それは蕗のグリーンをなるべく残すように作っていて、苦みと風味が生きている。
蕗の煮物は作るのは難しくないが、下処理が面倒くさい。下茹でしてスジを一本一本取り除く作業はなかなかにうんざりするものだ。大量にもらって後悔した。とくに細い蕗ほどスジが取りづらく前日に爪を切ったことも後悔した。
しかしスジ取りが終わってしまえばあとは楽なものである。味付けさえ間違えなければ美味しい蕗の煮物はもう目の前だ。野菜好きな我が子たちは蕗の煮物も大好きで、この苦みがたまらないといってガツガツ食べる。作りがいがあるとはまさにこのことではないか。
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