稜線をゆく。
腕時計の顔といえば当然文字盤だが、竜頭のついている側面をみると文字盤とは違った顔を見ることができて面白い。こんなことを面白いといって通じるひとがどれくらいいるのか知らないが、面白いものは面白いのだからしょうがない。
この時計はロンジンの手巻きである。キャリバーは名機と謳われる12.68ZSだ。手巻きなので竜頭が巻きやすいように大きい。そのかたちはまるで枯山水に置かれた石のようでもあり、ストーンヘンジのようでもある。
ケースにはスクリューバックである証が見えている。この凹みに専用の工具をいれてぐるりと裏蓋を外すのである。この凹みもまた陰影のよいアクセントになっている。
竜頭のほかにもうひとつボタンがついている。これはクロノグラフではなくて、アラーム用のボタンである。このボタンの配置をみればすぐにバルカンのムーブメントが入っていることがわかる。竜頭の切削がシャープで美しい。エッジが立ちすぎて回すときに指が痛いくらいだ。竜頭のことを英語でクラウンと呼ぶが、まさに王冠のようなデザインである。
手巻きであるが竜頭は小さめだ。しかしこれで巻きにくいということはない。ありふれた丸いケースに小さな竜頭がちょこんと座っている。すべてが控え目だが、その押し出しの強さがないことが逆にこの時計の魅力となっている。ケースに竜頭が取ってつけた感がないのはオメガというブランドの実力なのだろう。
ジェンタデザインをおそらくパクったものと思われる。ケースからラグまで流れるように一体化したデザインは多くのメーカーが模倣したようだ。ラグによる妙な段差が生じないのでこの形は横からみたときが一番美しいのではないかと思う。
カシオのいわゆるチプカシである。フタコブラクダのようでもあるし、ロボット的にも見える。基本的に直線で構成されていていかにも人工物といった佇まいだ。デジタルであることを強く主張する形状は横からみてもよく分かる。
クロノスのごく初期のころのモデルである。ラグとケースがなめらかに接続されていて非常に艶めかしく美しい時計である。裏蓋はパッチン式で、余計な溝がないのもまた美しさに寄与している。
所有する時計でもっとも横顔が不細工な時計である。無骨で男らしいといえば男らしいが昭和の時代の男らしさなのだろう。
自動巻きらしく竜頭は時刻合わせ用の小さなものがついている。角型時計であるが、その稜線は以外にも丸みを帯びてなめらかだったのは発見だった。
手巻きなので竜頭は巻きやすいようにケースから浮いている。ラグとケースの継ぎ目はなめらかだがセイコーのクロノスほどなめらかではない。文字盤はたいへん美しい時計であるが、横顔はあんがい実用本位というか荒々しさすら感じる。それはIWCがドイツに近いからであろうか。
というわけで普段あまり見る機会のない腕時計の横顔眺めてみた。時計好きは時刻の一切みえないこんなところまで眺めて喜んでいるのである。
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