暑くなると夏用時計が欲しくなる
特別にアンティークウォッチが好きでアンティークばかりを集めたわけではない。自分の趣向に忠実でいたら自然と年代物ばかりになってしまっただけのことである。アンティークだけが好きとか、現行品が嫌いとかそんなんじゃない。
アンティークウォッチの最大の欠点といえば、非防水につきる。そもそもガスケットなど存在しない時代の時計だったり、あったとしてもとっくの昔にシーリング能力がなくなってしまっているからだ。ちなみにシーリングのための密閉材としてパッキンという言葉がよく用いられる。パッキンとは回転や往復運動など動く者同士を連結する際に使用するもので、静止部分の密閉材として用いられるのはガスケットと呼ぶ、と今ネットで調べたら書いてあった。だから時計の場合はガスケットになる。
オメガのシーマスターは同社の防水時計の代名詞である。現在では冠ブランドになっているが、昔は防水時計ならなんでもシーマスターだった。この写真の時計もジュネーブというシリーズ(オメガの最廉価シリーズ)の防水モデルなのでシーマスターという文字と裏蓋にシーホースの刻印が入っている。もちろんその防水能力があったのは当時の話で今は完全非防水になってしまっている。
さて、水はどこから浸入するかと言えば、汗なら裏蓋の隙間と竜頭である。裏蓋がスクリューバック(ねじ込み式)だからといって安心してはいけない。毛細管現象を侮るなかれだ。また竜頭は内部に通じた唯一の穴であるからここから水分は浸入を計る。したがって汗をかくシーズンが始まると同時にアンティークウォッチのシーズンが終了する。
すると春の終わりから秋の中頃まで使える時計がなくなってしまう。ぼくの所有する時計でたったひとつの防水時計はチプカシF-91Wであるが、腕にチプカシ焼けするのがなんともシャクで子どもと遊ぶとき以外はあまりしたくないのが本音である。
それでこの季節になると夏でも使える現行品の時計を物色するのが毎年の行事になっている。いままでセイコー5やクォーツウォッチなどいくつか試してきたが、どれも満足できなかった。やはりクォーツではなくメカニカルがいい。セイコー5は機械式だが、デイデイト(日付と曜日表示がある)は合わせるのが面倒くさくて駄目だった。本当はカレンダーなどなくてもいいのだが、それだと選択肢が著しく少なくなってしまうからデイト付きまではいいことにしたい。それに夏用は一本になるからそうしょっちゅう日付操作する必要もないはずだ。
夏用時計に求める性能として、最低でも10気圧防水は欲しい。突然のゲリラ豪雨でずぶ濡れになってもへっちゃらである必要がある。ちなみにチプカシF-91Wは10気圧防水である。1000円もしないのに憎らしいほど高性能だ。
夏用時計はあまり高いのはいけない。高い時計はたしかにいいが、同じ金額を出すならアンティークのアレとかアレとかアレが買えるなあと考えてしまう。だから夏用時計はぼくが欲しいと思っているアンティークウォッチの半額以下が妥当だ。それがいくらなのかと言えば、3万〜5万円くらいであると考える。3万以下の時計は、オーバーホールしたときに時計本体価格よりオーバーホール代のほうが高くなってしまう。これはあまり気分がいいものではないし、長く使うことを前提とすればこのくらいの価格帯で探したい。
そんなふうにして毎年探しているが結局決めきれずに季節が移り変わるのであった。
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