オールドデジカメ思い出話 その3 Fujifilm Finepix F700
Finepix黄金時代だった。富士フイルムはセンサーの自社開発をする数少ない企業のひとつである。そして当時はスーパーCCDハニカムという独自センサーによってユニークな立場を作り上げていた。スーパーCCDハニカムは好き嫌いの分かれるセンサーでシャギーが出やすいから嫌いというひとと、独特の絵作りが好きに分かれたものである。ぼくはもちろん後者だった。
F700に搭載されたセンサーはスーパーCCDハニカム SRと名付けられたもので、小さい画素と大きい画素を組み合わせて写真のような広いダイナミックレンジを実現しようとした意欲作だった。したがって実際は600万画素あるのだが、記録画素数は300万画素になる。フィルム会社らしい面白いアイデアだったが、正直いうとあんまり効果なかったと思う。それでもそうしたギミックに惹かれてF700を購入したし、デザイン的には面白味がなくなったが、これもお気に入りの一台だった。
結局SRはあとに続かなかった。時代はまだまだ画素数重視だったから、素直に600万画素にしたほうがセールス的にもよかったのだろう。富士フイルムにもHRというハイレゾリューションタイプもあって、おそらくそちらのほうが売上げが上だったのかもしれない。
ただ、複数の画素をまとめて1画素として扱いダイナミックレンジを稼ぐという方法は今でも行われていて、ソニーのα7S IIIに搭載されているクアッドピクセルセンサーが思い浮かぶ。
さすがに300万画素になるとぐっと写真らしくなる。高画質と呼んでも差し支えないレベルになったのもこのあたりからである。デジカメがいよいよフィルムを駆逐できるレベルになったのである。写りがよくなると不満に感じるのが液晶モニターの小ささである。当時はモニターがやたら小さかったのである。これは富士フイルムだけではなくて、みんな小さかったのである。この非常に見にくいモニターにはずっと不満で、業界が大画面化にかじを切るまでずいぶんとやきもきさせられたものだ。モニターサイズを除けばF700は満点と呼んでもよい出来栄えだった。