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はなたれねこ移住する。第49話 ほぼコロナ

息子が高熱を出して寝込んだ。二日ほどして熱は下がって回復基調に入ったけれどもゴボゴボと咳をしている。そしてしょっぱいものが苦いと言う。ああ、コロナだろうね。それから二三日して息子がだいぶ元気になった頃に娘が高熱を出してそのあとすぐに妻も高熱を出して寝込んでしまった。子どもが風邪をひくと家族に蔓延する。そして最後にひいたひとが一番重くなる法則。
 
案の定妻が寝込んで半日ほどでぼくにも異常が現れて体温はあれよあれよという間に39度を超えて、ぼくはふとんに突っ伏した。二日間39度を切ることがなく、ぼくは夢をうつつのはざまをさまよった。食事を摂ろうと何度か起きた。苦い。甘いものが苦い。三日目の朝、ようやく体温が37度台まで下がったのはいいが、今度は咳が出てきた。それもただの咳ではない。咳をすると肋骨が折れるのではないかという痛みを伴った咳である。さらに喉が腫れてつばを飲み込むのでさえ痛くて仕方がない。
 
この状態で眠れぬ夜を明かしてぼくは耳鼻科へ行った。すると医師が、ねえコロナじゃないの?コロナでしょ?とぼくに聞く。知らんがな。素人の俺がはいコロナですというとでも思ったのだろうか。たぶんコロナに違いないのだろうけど、検査をしていないから確証がない。ただ味覚障害が出たというのはもうほとんどコロナに違いなくって、だからといってわかったからなんだというのだ。インフルならタミフルを処方できようが、コロナでは結局家で寝ているより仕方がない。
 
うちへ帰ってからもらった薬を飲んで寝た。体調は回復基調にあったし、もうこれで病床から脱出できる、そんな淡い期待が浮かぶほどだった。
 
翌日。咳は出るが骨が折れそうな痛みはもうなくなっていた。ところが。ところがである。ここでまさかの薬疹。ぼくの全身を気味の悪い赤黒い斑点が覆った。ぞっとする。アナフィラキシーででる蕁麻疹とはまた違ったボツボツである。
 
たぶん薬疹が出た。ぼくはそう直感して薬を飲むのをやめた。それから翌日皮膚科へ行くと、他の可能性も捨てきれないけどたぶん薬疹だろうという見立てだった。怪しい順に、
1. ロキソニン
2. ムコスタ
3. トラネキサム酸
とのことである。抗アレルギー剤であるタリオンと、アスベリンはおそらく違うであろうということであった。とにかくもうロキソニン絶対飲んじゃだめと言われた。ぼくは頭痛持ちなのでなにかとロキソニンに頼って生きてきたから困ってしまう。でも飲めないんじゃあ仕方がない。
 
それでどうするかといえば患部にステロイドを塗るわけである。ほぼ全身なので太いチューブ1本が一日でなくなる。パワフルなアンテベートのおかげでだいぶボツボツが引いてきた。もう一息というところが今現在である。
 
身体的にはほぼ全快で日常生活も普通に送れるようになった。咳が風邪の名残りのように時々出るがそれもやがて過去のものになろう。しかし今回の風邪は酷かった。ここ数年風邪らしい風邪をひいていなかったからなおさらということもあるが、やっぱりただの風邪じゃなくてコロナだったのが大きかったのではないかなあ。とくに検査はしていないけど、耳鼻科の先生はコロナコロナ言うし、皮膚科の先生もそれコロナだよーって言うし味覚障害も出たしほぼコロナってことで決まりじゃないかと思う。家族全員感染。以前息子がコロナにかかったときはぼくだけ離れたところにいたから事なきを得たが、今回は逃げようがなかった。ちぇ、コロナめ。

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ちいさな島
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