気持ち良さそうに


家にいるので誰とも会わない。


家がわりと音が聞こえやすいつくりで
さらに立地と部屋の位置の関係もあって
同じ建物に出入りするひとが全員通るのがわかる。


そばの道路を歩く人の声も比較的よく聞こえる。


住宅地なのでそんなにたくさんはひといないけど
買い物などに向かうには通るひとが多い道なので
1日を通してぽつぽつと往来が続き
それなりに足音や声なんかの音が聞こえてくる。


家にいながら人の気配はよく感じる。



宅配の人たちの台車なんかの音も
日に何度も往復しているのが聞こえる。


隣人の家には毎日のように、
日によっては複数の配送業者が訪れていて
さすがに来すぎではとぼんやり思いはじめた。




そんななか突然始まった熱唱。



奇声とか衝動的なのではなく
気持ち良さそうに大きな声で歌う男性の声。



たぶん道には誰もいなかったんだと思う。




だから誰も聞いていないだろうと思って
歌いはじめてしまったんだろうと思う。



昼間の陽射しの中誰もいない道を歩いていて
気持ちよくてウキウキしちゃったんだろう。



でも、家にはひといるから
めちゃくちゃ聞かれている。



本人は気づかないのだろうけど。



大きな声だったけど迷惑とは思わなくて
あまりに気持ち良さそうに歌っているので
なんだかちょっと笑えてきた。


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ほんだな。
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