バナナといったら?
今、子ども達の間で【マジカルバナナ】が流行っているらしい。
平成初期の脳トレ系バラエティで一世を風靡した、あの遊びである。
我が家の長男と次男も
「マっジっカっルっバナナ♪バナナといったら♪」
と歌い、キャッキャと笑っている。
しかし次男はまだ3歳。
マジカルバナナのルールが全くわかってないらしい。
さらに絶賛肛門期の彼は、何を言っても「うんこ」につなげてくる。
「バナナといったら」「う・ん・こ!」
「時計といったら」「う・ん・こ!」
「ゴリラといったら」「う・ん・こ!」
うんこの一点突破である。
コレでは困るのが小4の長男だ。
うんこから連想できるものは、そう多くはない(はず)。
【マジカルうんこ】では早々にゲームが終了してしまう。
そう思って聞いていた。
しかし、なかなかにゲームが続いている。
小学生なりに「うんこ」から連想できるものを返しているのか…と思うと、どうやら違うようだ。
「バナナと言ったら」
「う・ん・こ!」
「うんこと言ったらトマト♪トマトと言ったら」
「う・ん・こ!」
「うんこと言ったらライオン♪ライオンと言ったら」
「う・ん・こ!」
「うんこと言ったら…」
…まてまてまて。
うんこ、関係なくない?
もしかして、長男が次男のレベルに合わせているのか?とりあえず言葉をつなげてるだけ?
長男に聞いてみた。
「ねぇ、【マジカルバナナ】のルール知ってる?」
「え、なんかルールとかあるの?」
長男も、どうやらルールを知らなかったらしい。
「【マジカルバナナ】っていうのは、その言葉から連想するものを言っていくゲームなんよ。例えば、バナナと言ったら『黄色』とか『甘い』とか…適当に次の言葉つなげたらアカンねん。」
「でもさ、『バナナみたいなうんこ出た!』とか言うよ?じゃあ『バナナと言ったらうんこ』もアリじゃん!」
「ぬぅぅ…じゃ、100歩譲って『バナナと言ったら、うんこ』はアリやとして、『トマト』と『ライオン』は『うんこ』からは連想せぇへんやろ?」
「えー、そうかな?『トマト』や『ライオン』と『うんこ』って、そんなに関係ないかなぁ?」
ルールを知らなかったから出てきたはずのテキトーな野菜と動物に、うんことの関係性を持たせようとする長男。
とりあえず長男の理屈に乗ってみることにする。
「いや、関係は作ろうと思えば作れると思うよ。
『トマト』は食べたら『うんこ』になるし、『ライオン』だって『うんこ』はするしね。」
「じゃあさ、例えば…『くつした』でもつながる?」
「『靴下』を履く人はみんな絶対『うんこ』するでしょ。」
「おー!すごい!うんこ、なんでもつながるじゃん!」
「違う違う…繋がりゃ良いってもんちゃうねん。
【マジカルバナナ】は、みんなが連想できなあかんの。
『バナナ』って言うたら、多くの人は『うんこ』じゃなくて『黄色』とか『甘い』の方がパッと出てくるやろ?屁理屈じゃなくて、あくまで一般的なイメージしかあかんねんって。」
「イッパンテキって、難しくない?
どこまでならアリなん?それダレが決めるん?
もしかして、ダレかが決めたとしても『それってアナタの感想ですよね?』ってならんの?」
…確かに。
多様性が求められる令和の世において、一般的とはなんなのか。
バナナが黄色いと言うのはまだ一般的だが、国によっては緑の状態で野菜として食すところもあるし、黒いバナナを題材にしたマーケティング本もあった気がする。
全ての名詞に対して個々が思い描くイメージを、「それが一般的か否か」公平にジャッジできる人がはたして存在するのか…?
昭和生まれの板東英二氏には、きっと荷が重いだろう。
【マジカルバナナ】は、まだJ-POPのCDが当たり前にミリオンヒットを連発し、何かが流行れば街中にそのファッションやグッズが溢れかえり
「〇〇といえば、××でしょ」
と簡単に言えた平成の時代に生まれた遊びだ。
今は、「ナンバーワンよりオンリーワン」が、学校で教えられる令和の時代。
「普通はダサい。」と言う人がいて、
人より突き抜けることや逸脱することが成功への道だと信じている人がたくさんいる。
突拍子もない意見も、理不尽なクレームも、裏付けのないトンデモ理論でも、SNSで発信すればどこかの誰かが「いいね」と返してくれる。
もはや【マジカルバナナ】も、【マジカルうんこ】くらいルール無用で良いのかもしれない。
令和の子どもたちは、それでキャッキャと笑っているんだから。