2023年11月の日記
11月1日
気になると思ったお店に行くまで、私は次の日にでもすぐ行くかめちゃくちゃ時間が空くの二択。とても極端だ。そして大抵後者が多い。今日は2年ほど前からInstagramをフォローしていたおにぎり屋さんに訪れた。許可を取ったものの遠慮がちに店内の写真を撮る私に、どこから来たんですか?と尋ねられ、そう遠くない地名を答えるのもなんだか恥ずかしかった。よく晴れて暖かい日だったので、川沿いの石でできたベンチに腰掛けて頬張った。おにぎりは忙しい日に合間を見つけて胃に詰め込むような、普段はあまり味わえない昼食だが、今日は時間を気にせずゆっくり噛み締めながら食べた。お米の粒がしっかり残っているのに、身がぎっしりしていて、海苔の香りも良くて。小さなパックに入った卵焼きもこんにゃくもたくあんも全て美味しかった。また店に戻って美味しかったですと言いに行きたかったくらいだが、面と向かうともごもごするのが目に見えていたので、次に店を訪れた時に伝えることにする。
お店に対して、展示は期間限定ものが多いため衝動で足を運んでしまう。バスを乗り継いで知らない住宅街を抜けて恵文社へ向かう。(本当は1本で行けたはずなのに乗り場を間違えて遠回りした)行く途中で公園があり、大きな銀杏がもうほとんど黄色くなっていた。銀杏の木をしばらく見ずに生活していたので、突然視界にわかりやすく秋が飛び込んできたのが嬉しかった。
展示の存在はたまたまSNSで他の作家の方が足を運んだ投稿を見て知り、展示している様子も含め生で見てみたいと思って訪れた。「いちろう」さんの絵は色鉛筆や水彩絵具で描かれたものが多く、初めて見たのにそうじゃないような安心感がある。小さいカードに描かれた1ヶ月ぶんの絵日記の展示が良く、共感できる話もあり、絵の温かみもあって思わず声に出して笑ってしまった。いちろうさんご本人に、これわかりますと直接伝えられたのもよかった。
帰り道、本屋に寄って自分用とブックサンタ用と1冊ずつ買い、ミスタードーナツに寄って家族にお土産を買う。家に帰って買ってきた本を少し読み、晩ご飯を作った。我ながら理想の休日を過ごせた。こうやって無理のない範囲であちこち寄って、暗くなる前に帰ってくるのを定期的にやりたい。
11月2日
10〜15年くらい前のオタクの話になり、塾のトイレに入ってワンセグで生放送観てたとか、mixiでチケット譲ってもらったとか、懐かしワード連発で机に突っ伏しながら話した。
11月3日
久しぶりに既に酔っ払った人のいる酒場に行き、へべれけってこういうことだったよなと考えながらビールを呑んだ。店に出た時の風が気持ちよかった。
11月4日
昨日へべれけだった人がちゃんと仕事をしに来た。昨日の晩食べ損ねたラーメンを一緒に食べた。
11月5日
電車の中でラジオを聴きながらその瞬間を迎えた。アレのアレ!!!!!家に帰ってテレビをつけ、好きな選手がMVPに選ばれたことを知り、ようやく声を上げて喜べた。
11月6日
恩師に会った。一度担任をしてもらっただけだが色々とお世話になり思い入れのある先生の1人。ひょんなことから最近連絡先を交換し、2人でごはんを食べに行った。
先生という職業は何故こんなに昔のことをよく覚えているのか。私の発言、当時の文化祭や体育祭のこと、私と同じ学年にいた生徒、その兄弟に至るまで、記憶の引き出しが多すぎて驚いた。私は、クラスメイト全員の顔と名前を覚えるのは早かったと思うが、今はもう誰がいつ同じクラスだったかの記憶が朧気だ。言われてみれば何とか名前だけ、顔だけ思い出せる人が大半だ。何をしたかという事実は覚えているが、その時何を言ったとか思ったとか、深いところはもう忘れてしまっているのだ。
そんな話を帰って母に話しているうちに、人間関係で衝突したことも覚えていないのかと聞かれた。教室前の廊下で言い合ったことは覚えているが、私が当時何で悩んでいて、あの子に何を言われて、私が何て言ったのか、もう思い出せなかった。
忘れるというのは、自分自身の悩みの種になることもあるが、傷が癒えることでもあるのかもしれない。良いことも悪いことも、自分が忘れていても周りとの会話などで思い出し、また記憶を上書きすることができる。忘れたくないことは日記に書いておけば、いつか読み返したときに思い出せるかもしれない。
そんな日々の、忘れてしまうけど忘れたくない、ささやかなことを綴れたら良いなと思い、日記を続けていきたい。
11月7日
火曜日の午後はあっという間に過ぎていく。細々した仕事を片付けて、遅めの昼ごはんを食べ、眠たくなってきたら新聞の連載小説を読んでまた休憩して、休憩時間を取り返すように最後追い上げて退勤。
11月8日
ずっとやってみたかった仕事を、すこし割り振ってもらえた。気負い過ぎずやる。でも丁寧にやる。
11月9日
仕事を早く切り上げてずっと行きたかった京都の喫茶店へ。テーブル席が埋まっていてカウンターの隅へ通された。ガスコンロの上のやかんからモウモウと湯気が出ていて、それを間近で見ることができる席。これからずっとこの席がいいと思えるほど気に入ってしまった。コーヒーの味も、うるさ過ぎず静か過ぎない店内も、黄色味がかった店内の照明も好みだった。好きな喫茶店がどんどん増えていくのが嬉しい。
11月10日
来年の手帳を考える。ここ5年ほど、マンスリーで自由なページが多い手帳を使っていたが、仕事の管理のし易さからウィークリータイプもついたものが欲しいと感じた下半期。今まで自由なページに書き込んでいた仕事中のメモを別のノートにして、手帳内は仕事の予定だけ書き込むように使う。今までとは全く違う手帳に乗り換えるという考えにまとまった。
アプリのスケジュールやTodoリストを使ったこともあるが、結局スマホを開くよりもノートを開いてペンを握った方が個人的には早い。
11月11日
映画正欲を見た。小説を読んだ後に映画化の知らせを見たので、新垣結衣さんが桐生夏月を演じること、それを見られることがずっと楽しみだった。映画が始まって夏月のファーストカット、結衣さんのアップが映った瞬間、ごく自然に「あ、夏月だ」と思え、それだけでもう十分だった。文章だけでは伝えきれない、間の取り方だったり目線だったり、風景の美しさが脳裏に焼き付いている。
11月12日
朝1本早い電車に乗っていくつもりをしていたのに、準備にもたつき1本遅い電車に乗ることに。着いてからも段取りを修正できず悪循環。何もかも嫌になって自己嫌悪に陥り、歯を食いしばって必死に涙を堪えながら手を動かす。そんな時後輩の「聖母たちのララバイってマドンナって読むんですか?絶対にセイボでしょ?」という馬鹿真面目な一言が妙に笑えて、気持ちもほぐれて、最終的にいつもより仕事が早く片付いた。仕事は機嫌良くやらないと、そう思わせてくれた出来事だった。あと早く家を出ろ。
お腹いっぱい食べてビールをほどほどに飲んで終電で帰る。
11月13日
ここ数日人に会いすぎていたので今日は引きこもりモード。午前中を棒に振り、少し仕事をしてまた昼寝。
11月14日
仕事がひと段落してボケっとしていたら、予期せぬことを先輩から発表され、息を大きく吸いながら立ちあがった。人間、というか私、驚きすぎたら言葉を失うというより息をめいいっぱい吸うのかと新たな気づき。しゅーー!と言いながら急に立ち上がったの、いま思い返しても不審すぎる。
その後ぎゅうぎゅうと作業を詰め込んだので、夕方には電池が切れた。退勤後はもう何やっても上手くいかない人になってしまった。
11月15日
久しぶりに前々から入れていた予定が予期せぬ仕事で潰れるやつが発生してしまい、へこむ。大丈夫ですか?と聞かれ、大丈夫じゃないです!と思いながら、即大丈夫ですと返事した。何回やっても仕事で予定が流れてしまうのは慣れない。ちゃんと毎回悲しい。
11月16日
好きなおかずは最後にとっておく派。でも欲しいものとかやりたいこととか、そういうのは後にとっとかなくても良いよな、と思えてきた。
11月17日
金原ひとみさんの文章は、息苦しさや閉塞感に対する解像度が凄まじい。痛みって実際に感じないと理解できないことが多い。お腹痛いと言われて心配することや何か手伝うことはできても、実際の痛みは計り知れない感じ。でも、金原さんの文章の中の痛みは手に取るようにわかる、ように思わせてくれる。
11月18日
久しぶりに髪を切る。共感できるところは同意してくれ、違うところは自分はこう思うとはっきり言ってくれる、自分の近況を楽しそうに話してくれる今の美容師さんが好きだ。もう7、8年ほど通い続けている。最近髪を切った職場のひとが、髪を切ってもらったら体調が良くなったと話していたけれど、実際にそういうところはあると思う。悪いものが落ちる感覚。
11月19日
床に爪楊枝をぶちまけて、1人床を見つめて唸る。そういえば度々お米こぼしたとか、ご飯落ちちゃったとか、そういう写真ってSNSで回ってくるよなと思い、1枚記念に撮る。どこにも載せないし誰にも見せないけど。
11月20日
久しぶりに外を長めに歩いた。日が落ちるのがかなり早くなった。イチョウの葉はまだある。
11月21日
赤ちゃんの顔の輪郭って本当に福の神のようだ。ほっぺがぷっくりして、重力で下に落ちている。
11月22日
初めて行った店の本棚をまじまじと見ていたら、本好きなんですか?と聞かれ、好きなものをいくつか羅列すると、じゃあこれも好きだと思います、と一冊渡された。短歌と絵の本で、数ページパラパラと見ただけでドンピシャだったため、「これは、好きなやつです!!」と本を持ったまま叫んだ。1対1で人に本を勧められるのは元々好き。でも最近はそんな機会が無かったから純粋に嬉しかった。その後もたくさん喋った。初めて行った場所だったのに、そのお店が纏う空気も、お店の方も、駅からお店までの道も、丸ごと好きになった。
11月23日
おやつにココアとスノーボール。朝ドラの録画を見て涙が止まらなくなる。お父ちゃんがお母ちゃんのことを「ツヤちゃん」と呼ぶのが好き。
11月24日
昼ごはんを食べ損ね、たっぷり残業してへろへろで退勤。家に帰ったらもうご飯があるだろうなと思いながらも、ブリトーが食べたくてたまらなくてコンビニへ駆け込む。最後の1個になっていたハムチーズを掴んでレジに並ぶと、前の人がおでんを買っていてだいぶ心が揺れた。コンビニを出てすぐ、ブリトーにはふはふ言いながらかぶりついた。うまい。今日はこれが正解だった。次はおでんにする。
11月25日
1日働いてはらぺこで居酒屋に。職場の偉い人が店に着く前にLINEで色々頼んでいてくれたので、ドンドコ料理が運ばれてくる。ビールもドンドコ胃に流し込む。最初から最後までずっとビールを飲んでいるので「ビールの国のお姫様だねえ」と言われた。悪い気はしなかった。
11月26日
寒い夜にはSEKAI NO OWARIを聴きながら歩きたくなる。冬の夜、星を見上げながら聴くのが一番。
11月27日
今年の手帳に使っていたボールペンを無くしてしまい、来年の手帳用に新調した。ほんとうは新しいノートも買いたかったけど、家に新品のまま置いてある野帳と同じものが売り場にあり、家にあるやつを使うか、と思い直す。
11月28日
今日は想定外のことが3つ重なったのでもうだめ。やろうと思っていたことが全然進んでいないのに集中の在庫がすっからかんになったので退勤。
11月29日
2000円分の小銭をICカードにチャージした。
財布のスナップボタンがはち切れるんじないかと思うくらい小銭を溜め込んでいたけど、かなりすっきり。
家に帰ったらトンテキと炊き込みご飯とお鍋。冬のごちそう。鍋に入っている鳥も豚も食べた。牛は食べ損ねたけど、いい肉の日。
11月30日
祖父のオーバーオールを処分した。祖父が亡くなって、遺品を整理していたときに出てきたデニムのもの。裾をたくさん捲って、ダボっとした感じで着る、と言って私のものにした。もう10年くらい着ていた。それからオーバーオールが似合うとか褒めてもらう機会が多く、オーバーオールは自分らしいファッションになった。とりわけ祖父のデニムは長年大切に着てきたけど、肩紐の部分を中心に色褪せて、だいぶへたってきていた。今日思い切って、ありがとうございましたと言いながらゴミ袋に入れた。次も10年くらい着れるような、良いデニムのオーバーオールを購入したい。