カビたマットレスを義母にもらったときの返品の仕方
『たしか、ちいふくちゃん、マットレスが欲しいって言ってたよね。
新しいの買うよりも、わたしが使ってたマットレスがあるから
それを使えばいいよ。』
それは、誰でも知っている、あの言葉を学ぶのに
うってつけのシチュエーションだった。
ありがた迷惑
そう。
義母はいつも、100%の善意で
わたしにあらゆるものをくれるのだ。
使わなくなった古い食器、おいしくなくて食べなかったお菓子、とっておいたら瀕死の状態になった果物、着なくなった服、使わなくなった10年物の床用ワックス・・・
今までもらったものは、「ありがとうございます!」「喜ぶと思う!子どもが!(←笑)」「使う・・・かな?一応もらっておきます」などと言って受け取り、なんとか食べられそうなものは食べたり、なんとか使えそうな物は使ったりしながら、ポイ、ポイ、ポイポイ・・・と残念な末路を辿らせてしまったものも・・・あります、ハイ!正直に!
でも、ここへきて、マットレスだ。
一応ね、義母の親切心は受け取りたい。
だって、義母は、めちゃくちゃいい人なのだ。最初に悪口のようなことを書き連ねておいて、どの口が言うのかと言われかねないが、事実、義母はわたしにとって最高の義母だ。
夫と結婚して10年、義両親+義祖母と同居して3年。大きな揉め事もなく、ありのままの自分で生活してこれたのは、義母の性格によるものが大きい。細かいことを気にせず、干渉しすぎず、いつでもわたしたちの味方でいてくれて、いつでも親切なのだ。それは、もちろん、わたしたちが家族だから、わたしたちに対してそうしてくれている部分もあるとは思うが、義母の良いところは、そのスタンスが相手によって変わることがないところにある。近所の人にも、スーパーの店員さんにも、友達に対しても、義母は親切で、細かいことを気にしない性格なのだ。
それが時にマイナスに働くことがあって、
それが今回の「マットレス事件」を引き起こしている。
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ある日、わたしが、義母にもらした愚痴(?)が全ての始まりだった。うちの家が、湿気が強いのか、3年前に同居するときに義母にもらった布団がかびたのだ。(この引っ越しのときにもらった布団も、新品ではない。今まで義母がお客様用にしまってあった布団で、何年物だったか、定かではない。)それで、カビた布団で寝るのも良くないし、これを機に、布団を処分し、今流行りのマットレスを買おうということになったのだ。
布団がカビていることは伏せ、義母に、
「せっかくいただいた布団なんですけど、子どもがおねしょしたりで汚れて、だんだんへたってきたので、マットレスに買い替えたいと思ってるんです。」
これだ。
この言葉が、義母の親切心に火をつけてしまった。
そして冒頭の義母のこのセリフだ。
『たしか、ちいふくちゃん、マットレスが欲しいって言ってたよね。
新しいの買うよりも、わたしが使ってたマットレスがあるから
それを使えばいいよ。』
うーん。いやな予感である。
「え?お母さんのマットレスをもらうなんて悪いですよ。
だって、お母さんはどうするんですか?」
義母だってマットレスを使っているのだ。
それをわたしたちにくれたら、自分は何に寝るというのだろう。
「あ~、わたしは死んだおじいちゃんのマットレスを使うからいいのよ~。おじいちゃんのマットレスもいいやつだし、わたしのも10年前くらいに買ったやつだけど、まだまだ使えるから、持っていきなよ。」
断れるわけない。
「あーー、あーーりがとうございます・・」
ってな感じで、義母のマットレスは2階のわたしたちの寝室に来た。
義母のマットレスは、確かにそんなに悪くはなく、コイルもしっかりしていて、ちょっと硬いけど、問題なく使えた。
しかし、2日目の夕方、締め切った寝室を開けたときに、したのだ。
ぷーーーーーーーーんと香る・・・カビ臭!!!
カビテルヤン!マットレス!!
パット見はわからないけれど、おそらく中がカビてる。
夫に言ったら、「確かに臭う」と。この臭いに気づいてしまったからには、使い続けることはできないな、と思った。
恐るべし義母。
親切で、細かいことを気にしない。
カビ、、、気づいてなかったかーーー!!!
そこから、わたしと夫は連日、どんな言い訳をして義母にマットレスを返品するかを考えた。優しい義母の親切心を傷つけるわけにはいかないからだ。
『ちょっと、このマットレスはわたしには硬くて、腰が痛くなっちゃったので、、、すみませんがお返しします。そんで、やっぱ、新しいマットレスを買います。』
『マットレス、ありがたいのですが、寝具は、毎日ずっと使うものなので、新しい物を買おうかな、と夫と決めました。』
ここらへんの言い訳が、角が立たなくて良いのではないか、と思ったんだけど、なんとなく、嘘をぺらぺら話す勇気もない・・・。それに、『新しい物を買うまでの間、これを使ってたらいいじゃない」とか、「そのマットレスになにか乗せれば柔らかくなるから工夫して使えばいいじゃない」などのお返事が返ってきたら、また嘘を重ねないといけない。
夫は、それっぽい嘘をついて返せばいいじゃないか、と言ったけれど、わたしはなんだか乗り気にはなれなくて。でも、一刻も早く返したくて。でも、うまいことやらないと、せっかくお互いに持ちつ持たれつ築いてきたわたしと義母の関係も崩れてしまいかねない。
そこで、わたしは、一番誠実な方法で返品するのが一番だと気づいた。本当のことを話すのだ。なんでわたしがこのマットレスを返品したいのか。本当のことを自分の口で伝えるのだ。
そうと決まれば、わたしは夫を引き連れて、義母のところに行った。誠実に、自分の口で、と言いながら、わたし一人ではなく、夫も一緒に行ってもらうところがミソである。
母親は息子に甘い。
「お母さん、すみません、せっかくいただいたマットレスなんですけど
なんか臭う・・・」
「え・・?」
「たぶんカビ・・てる・・?かな?」
「え?くんくん。ほんとだ。んじゃ、やめときな。」
ーーーーーーー終了ーーーーーーーー
一瞬で終わった。
これが、わたしの
カビたマットレスを義母にもらったときの返品の仕方。
わたしと義母は、今でも更に仲良しだ。