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推しだって変わっていく
私は学生時代、狂ったように[Alexandros]を推していた。
曲を聴き始めたのは高校3年生。
新しいアルバムを買ったり、
少ないお小遣いを捻出して雑誌を買うに連れて
彼らの夢の大きさ、そして成し遂げてきた
その姿に心を奪われていった。
ライブにも当選して、人生初のフルスタンディングを経験したのも[Alexandros]だった。
これがロックバンド………!
めちゃくちゃかっこいい………!!
そのライブを経験してから、
ファンクラブに入会して
行けるライブにはほぼ通い、
新曲はラジオで世界初放送で聴き、
出演する番組はすべてマーク。
カウントダウンフェスで
年越しのタイムテーブルにぶつかった年は、
死に物狂いでチケットを取った。
こうして必死に推してきたのだが、
あるときを境に推し活の最前線から身を引いた。
やはり、人気のバンドということもあり、
マウント競争はつきもの。
ボーカルの川上さんが
塩顔イケメンということもあり、
ちょっと女優さんと仲良くした写真が
公式でアップされると影で大バッシング。
え……別に、あの人たちアイドルじゃなくない?
[Alexandros]は好きだけど、こんなことで疲弊なんかしたくないな……。
そういうわけで、
徐々に音源だけ聴くファンへ降格していった。
その後、就活やら仕事やら一人暮らしやらで
手一杯になっているうちに、
[Alexandros]からも疎遠になってしまった。
そして最近、公式LINEから
「小田急線相模大野駅の発着音にワタリドリが使われるようになりました!」
とのアナウンスが。
あ……れ………??
私が大好きだった、
世界を目指すロックバンドが、
いつの間にか地元密着バンドになっている……??
私が見ていない間に、
何があったかは知らないが、
私が推していたあの頃と
変わってしまったのか…?
と、何とも言えない気持ちになってしまったのだ。
そりゃ、推しだって人間だし、
私だって人間だから、
変わっていくのは当たり前っちゃ当たり前。
学生のときはあんなに好きだったのに、
同窓会で再開したら全然気持ちがなくなった
初恋の人みたいな感じだ。
複雑なのは、燃えるように愛していた
あの頃の記憶が、あまりにも夢物語として
鮮明に生きているからだ。
私が愛しているのは、あの頃の私が
推していた推しなのだ。
そう理解するのにしばし苦しんだし、
は?っていう気持ちをぶつけそうになったが
人生のひとつの思い出として
あの頃を綺麗な記憶のまま残すことにした。