君と出会った奇跡
よわ虫。なき虫。うじうじ虫。
夜になるとたくさん虫が鳴いてるよ。
ぼくもそのうちのひとりなんだ。
今日もずっと泣いてる。
ひとりでね。
「ねえ?」
見上げた先には、キレイな羽をひろげたちょうちょさん。
凛とした姿にドキッとして
なぜか慌てて涙をふいた。
キラキラした目で見つけられたぼくは、
うじうじ。
どうしよう。
言葉を探す。
「ねえ?
羽ばたけるのに、羽ばたこうとしないのね」
急になにを言ってるのだろう。
羽なんかないのに。からかってるのかな?
まだ春じゃないから飛べないはずだし。
「春じゃないと飛べないって、誰が決めたの?」
そしてちょっぴりせっかちさんみたいだ。
「そっか。知らないのね。
飛びかたを教えてあげる。よく見ていてね」
そう言ってぼくの周りをふわふわ飛び回ったと思ったら
すぐに消えて。
いなくなってしまった。
ぼくはまたひとりだ。
あれ?
涙でできた水たまりを、そっと覗き込む。
ぼくが消えた。
「これって?」
映っていたのは
見えたのは、きれいな羽の色を持ったちょうちょさんだった。
ずっと虫のままだと思っていたのに。
おかしいね。
いつかぼくに言ってくれた言葉を思い出す。
どうして今まで忘れていたんだろう。
いちばん大切な。
だいすきな君の、言葉。
おしまい。
お気持ちを大切にします。