ゴールデンウィークに怪レい集会に行ってみた
出会い
ゴールデンウィークが終わった。たくさん休めて有意義な日々であった。申し訳程度にしかタスクの進捗ができなかったが、休めた自覚は確かにある。
遡ること4月下旬、私はインターネットでとあるイベントへの参加者を募るツイートを見かけた。田母神俊雄氏と西村眞悟氏による講演会を開催するとのことであった。政治に関心のない方のために説明すると、田母神俊雄氏は航空幕僚長を務めた人(ざっくり言うと「元自衛隊の偉い人」)であり、西村眞悟氏は右派的な立場で、野党において長く国会議員を務めた人物である(なお、民主党から除籍され、日本維新の会から除名された経験も持つ)。田母神俊雄氏については「軍事ツイートはマトモ(歴史観のツイートは以下ry)」との印象があったので、若干の恐れはありつつも行ってみたいと感じた。主催者が比較的若い方で、若者に参加してほしいとのツイートがあったことも私をイベントに向かわせた。
ドキッ!初めての右派集会
イベントに到着すると、参加者の中には頭に白いものが混じっていたり頭が光っていたりする者が目立ち、お年寄りが多いと感じた。私は昨年まちづくりとアートをテーマにしたトークセッションにも何回か参加しており、そこも中高年が多かったが、今回の集会はそことも客層が違う感じがした。「河村は名古屋城再建とか言っとるでいかんぎゃ〜」「日本に生まれて良かったで〜」などとネット右翼のツイートをなぞるような名古屋弁(尾張弁かもしれない)の話し声が聞こえてくる。なぜか休みなのにスーツ姿の参加者も前の方にいる。なんだこれ。
まず驚いたのは、集会の前に君が代の斉唱があったことである。右派系の集会なのでよくよく考えてみると国歌斉唱があるのは自然なのだが、入学式や卒業式でもない式典での国歌斉唱はやや奇異に見えた。
講演会は「熱い西村、おもしろの田母神」という印象だった。西村眞悟氏は、国会の中には中身がガーシーのような議員が多くいるのではないかと述べ、私もそこに関してはとても共感した。ジェンダーの観点からは少々、いやかなり聞き捨てならない発言もあったりはしたが、神話や歴史を織り交ぜた教養深い話を聞くことができた。感極まり語気が強くなる場面も見られ、熱い男だと感じた。
田母神氏からは、冗談を織り交ぜた東北訛が残る話を聞くことができた。ただ、DS(ディープステート)論が露骨に見える話もあって危うさを感じたところもあった。DS論とは、世界は米国を中心にしたディープステートによって操られているとする陰謀論の一種である。「(元駐ウクライナ日本大使であり、日本における代表的なDS論者である)馬渕さんはある程度正しいことを言ってるのではないかと感じる」という発言したときはやや会場がざわついた。
主催者からの言葉では、主催者の方が涙で言葉を詰まらせながら感謝を述べていた。個人のプライベートな部分に関する話なので詳細は控えるが、苦労されている方だと感じた。
異形の異業種交流会
講演会後は、会場は今回のために特別に作られた雑誌のサイン会と化していた。私は、とある所で入手した田母神氏の著作2冊にサインをもらった。「こいつ分かってるな」と思われるように選書を工夫したつもりであったが、田母神氏は思ったよりドライな反応であった(※ただ、人と接する際の基本的な配慮はしてくださってはいた)。
講演会のあとの懇親会にも参加した(若者が参加するにはやや勇気が要る額だった…)。
懇親会で席をご一緒した方々は、公務系や金融系のひとかどの職に就かれている方たちだった。いわゆる「限界右翼」系の活動家然とした人とは程遠い印象だった。一人からは田母神氏の著作にマーカーで線を引いて仕事に役立てているとのお話を伺い、どんな人の話でも、人の上に立ったことのある人の話はある程度役に立つのだと興味深く思った。
質問!ニシえもん
懇親会では、西村氏に質問をした。ざっくり次のようなやりとりをした。
僕「西村先生は元々民社党でしたが、どうして民社党には愛国・保守系の議員さんが多いんですか?」
西村氏「労働組合系の流れと、天皇をいただく勤労者の流れがあってだな、GHQが来たときに自民党の連中はコロッと意見を変えたが、天皇をいただく勤労者は万世一系の天皇のもとで働いてるんだ!とGHQをはねのけたんだ」
僕「なるほど!もう一つ聞きたいんですが、西村先生は一貫して自民党に入られなかったじゃないですか、どうしてなんですか?やはりGHQ云々の話が関係してるんですか?」
西「そういうわけではなくて、結果的に自民党からお呼びがかからなかっただけの話だ」
僕「そうなんですね、貴重なお話いただいてありがとうございました!!」
西「兄ちゃん、質問したら質問し返される覚悟を持てよ」
僕「はい、うまく返しができるようにします、、、」
西村氏はお酒を飲み顔を真っ赤にして上機嫌の様子であり、お口も滑りがちであった(発言内容を記事にするとかなり問題があるので、ここでは省略する)。楽しそうであったことは確かである。
立ち上がれニッポン
最後は皆で記念写真を撮った。すると、西村氏が突如
「日本よ、✕✕せよ!」
(「立ち上がれ」という意味の下ネタであると想像していただきたい)
と叫んだ。会場からはそれに呼応するような「✕✕せよ!」コールが何人かから聞こえてきた。自分の祖父ほどの年齢の人が「✕✕(伏せ字にしていることから分かる通り、ド下ネタである)」と嬉しそうに叫んでいる姿は見慣れないものだったため、私は終始困惑してしまった。
マグロノの感想
今回の集会に参加して、知への窓口について考えさせられた。作家・近現代史研究者の辻田真佐憲氏は、度々専門知と一般層をつなぐ「総合知」の必要性について言及している。田母神氏も、渡部昇一氏(英語学者であり、上智大学名誉教授でもあった右派論客)の著作から影響を受けているのだとWeb上のインタビューで語っていた。田母神氏の著作にマーカーを引いていた懇親会の参加者の姿も見かけた。個々の論客の言動については毀誉褒貶もあるかと思うが、人々と専門知をつなぐ方法とは何かについてこれからも考えていきたい。
また、若者層の取り込みについてもつい考えてしまった。昨今は右派YouTubeが隆盛のように見える。また、西村博之(ひろゆき)氏や成田悠輔氏、落合陽一氏のような新たな論客がメディアを彩っている。しかし、今回の集会に参加する若者は少なかった。SEALDsがメディアを賑わせたのも今は昔、今は社会問題に関心のある若者自体が少なく、絶滅危惧種なのかもしれない。私もツイッタースペースで政治関連の話をしようとすると露骨に嫌がられる。しかし、選挙権が18歳に引き下げられた今、社会について少しでもいいので思索を深める時間はあってもいいのではないかと感じる(勿論、今回の集会がそうした社会に対して関心を深める場とは違うのではないかといった指摘もあるだろう。思想の左右に関わらず、骨のある若者と話す機会があったら、是非とも参加したい。)。
ウクライナ・ロシア戦争が長引き、中国や北朝鮮も着々と軍事力を増強する現状において、安全保障の議論は活発に行われるべきであると感じる。しかし、こと安全保障は、イデオロギーに基づいた議論に堕しがちである。田母神氏には、イデオロギーとは距離を置いた安全保障の専門家として活動すると活躍の場が広がるのではないかと感じる。私がこうした集会にこれからも足を運ぶかは悩むところではあるが、興味のある方向にこれからも突き進んでいきたい。
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