オペラの記録:バイロイト・ワーグナー祭、開幕プレミエ《トリスタンとイゾルデ》(7月25日)
7月25日、バイロイト・ワーグナー祭の開幕プレミエ、《トリスタンとイゾルデ》新制作を観ました。
以前はチケット入手に10年待ちと言われましたが、最近は緩和されたようです。
しかし相変わらず『狭き門』で、チケット入手が世界一難しいのは変わらないようです。
バイロイト祭については、以下の私の投稿をどうぞ。
なお、カタリーナ・ワーグナーは上記の記事を書いた時点から数ヶ月後、退院しました。『免疫不全』で数回の手術をしたそうです。当時は見た目も様変わりしていましたが、現在は以前に戻ったようでした。
今年はコロナ感染拡大後、初めての「通常開催」でした。
「通常開催」というのは、コロナ規制がないという意味です。
つまり、座席制限もなし、マスク着用は推奨されるものの義務ではない、扇子の使用もOKです。
ただ、《ニーベルングの指環》新制作指揮予定だったピエタリ・インキネンがコロナ罹患し、準備不可能になり、代わりにコルネリウス・マイスター(シュトゥットガルト・オペラ音楽総監督)が飛び込み、マイスターが予定していた《トリスタンとイゾルデ》指揮にはマルクス・ポシュナーが飛び込みました。
インキネンは来年の《ニーベルングの指環》の指揮予定です。
ワーグナー祭直前にはプレスがいろいろ取り上げますが、今年は『Sexismus』(性差別)スキャンダルに見舞われました。
オーケストラのヴィオラ奏者の女性二人が指揮者クリスティアン・ティーレマンに性差別を受けたというものです。
しかしワーグナー祭トップは7月23日に行った記者会見で、「調査したが、そのような事実はない」としました。この時、カタリーナ・ワーグナーは「これまで私自身も胸を掴まれるなど、セクハラを受けたことがある。何かあったら躊躇することなく申し出てほしい。徹底的に調査する」と発言していました。
またこの日の記者会見では、猛暑対策としての冷房装置について「特別な音響を守るため、冷房の導入は考えていない。改修は続けているが、内容はエレヴェーターの設置、スプリンクラー、ケータリング関係」と明言していました。
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中央の道の下りきったところにはパトカーが待機していて、車は入れません。
右側のテントでは警察による持ち物検査が行われます。
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レッド・カーペットの向こうではバイエルン州首相ゼーダーがプレスのインタヴューを受けています。
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この夜はドイツの全国ニュースで開幕の報道があります。バイロイトの社会的意味は特別です。
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バイロイトでは今世紀に入り、警戒がとても厳しくなっています。
特にこの日は著名人が集まるので、殊更厳しかったのだと思います。
通常でもまず、
①敷地内に入る際、警察による持ち物チェックがある。
②劇場建物に入る際、チケットと身分証明書のチェックがある。ここで大きすぎるバッグはクロークに預けるように言われる。
③客席に入る際、チケットと身分証明書のチェックがある。
つまり、一般道から客席まで、3回のチェックを受けることになります。
90年代にはチケットの高額転売が問題になり(10倍ほどの価格での転売もあったそうです)、チケットの持ち主がその当人であるかが厳しくチェックされるようになりました。
ところで、この日、ホテルから劇場へのバスで、前連邦文化・メディア大臣のモニカ・グリュッタースとその友人たちがいました。バスを降りて、警察によるチェックが見えたところ、私の前を歩いていた上記のグループのご婦人の一人が「オー・ゴット!身分証明書を忘れたわ」と。そうしたら他の連れが「モニカ(・グリュッタース)がいれば大丈夫よ」と言っていました。
ちなみに持ち物も制限されます。A4版より大きなバッグは劇場建物外のコインロッカーに入れるか、クロークに預けるしかありません。
ですから、荷物を極力制限しなければならないのです。
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水は5€。でも荷物持ち込み制限もあるので、水の瓶をバッグに入れることも簡単ではありません。
猛暑のため、水分補給は死活問題、買うしかありません。
暑さにはかなわず、ワーグナーを観るには体力も必要なので、冷たく甘いものには手が出ます。
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ちなみに劇場向かって右側には食堂、トイレなどを擁した建物があるのですが、この日は開幕のため、著名人のために貸切でした。
一般人はこのテントか、反対側にあるキオスク状の屋台で飲み物やソーセージを挟んだパンを調達します。
これは今年初めに出たパンフレット。
従ってキャスティングは変更前のものです。
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これは劇場内に掲げられた座席表。全席で1974席。
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この日の《トリスタンとイゾルデ》のプログラム。
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劇場の中です。
マスク着用は奨励されていますが、義務ではありません。
ただ、この日は外気温35度。劇場には冷房がないため、暑い!!!
コロナか熱中症か・・・熱中症になるリスクの方がコロナ感染より高そうです。
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私の後方4列目の後ろからは賓客のためのロージェ。
バイエルン州首相ゼーダーがいました。
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ゼーダー首相の隣にメルケル前首相が入ってきました。慌てて撮ったのでぶれてしまいましたが、わかるでしょう。
メルケル前首相は昨年秋の引退以来、公にほとんど姿を見せていません。
もっともバイロイトには首相在任中にもよく来ていて、何度も見かけました。
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オーケストラ・ピットには「屋根」が被っているのが見えます。
劇場と客席入り口のチケット・チェック係は「Blaue Mädchen」(青い女の子)と呼ばれていました。彼女たちは青く長いスカートの(ダサい)制服を着ていました。
2009年からグレーの制服になり、2018年からは紺色のズボンになりました。
この係は以前、「未婚女性」で、バイロイトとその近郊出身者だったのですが、現在は各地からの学生がメインになっています。
また2015年からは男性もいます。
胸にはその人ができる言語を示すバッジをつけています。
現在、ドイツの劇場やコンサート・ホールの入り口でチケットをチェックする係やクローク係は年齢性別を問いません。
以前、あるホールで、素敵なネールをした髪の長い綺麗な人がクロークでコートを預かってくれたのですが、その時、「こんばんは」と言われたその声が男性だったこともあります。
そんな中で、バイロイトが女性だけだったことにずっと疑問を持っていました。
そもそも成人した女性に対し「Mädchen」と呼ぶこともおかしい。
カタリーナ・ワーグナーの時代、こんなことも変えていくのは歓迎です。
公演終了後のカーテンコール。
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この夜は最後の音が消えないうちに拍手が起きました。
普通なら考えられないことです(あまりに暑いので一刻も早く出たかった?!)。
それに、歌手にも指揮者にも演出チームにも大ブラボー。
以前なら、特に演出チームには(どうであっても)大ブーが容赦なく飛びました。
また、2018年に《パルジファル》を観た時、通常であればバイロイトではそれまで、第一幕終了後には拍手をせず、黙って客席を後にしたものですが、その時は大拍手が起き、めんくらいました。
客も変わり、慣習も変わっていくのでしょう。
これはバイロイト駅のプラットフォームから。劇場上部が見えます。
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FOTO:©️Kishi