音楽ニュース:オペラ演出家コスキーのピアノ伴奏と司会、ベルリン・コーミッシェ・オーパーのストリーミング
コロナ・ウィルス感染拡大防止のため閉鎖されたオペラ劇場の多くがインターネットで公演を配信しています。配信のほとんどがそれまでの公演ですが、ベルリン・コーミッシェ・オーパー(KOB)は公演の他に、興味深い配信をしています。
それは同劇場支配人兼主席演出家バリー・コスキーのピアノ伴奏と司会によるミニ・リーダー・アーベントです。
上記のサイトにアクセスすると『Online-Schedule』が出てきます。そこをクリックすると現在観ることができる『Online now』の一覧が出てきます。その中の『+++Celebrations+++Drei Kunstlieder mit Günter Papendell+++Berliner Jazz-Operette mit Dagmar Manzel』がそれに該当します。
(ただし、配信公演にはそれぞれ視聴期限があります。)
まず最初の『Drei Kunstlieder...』は「Celebration 4」、同オペラ専属バリトン歌手ギュンター・パーペンデル(Günter Papendell)とのミニ・リーダー・アーベントです。ちなみにパーペンデルは上記一覧の中で、たとえば≪ラ・ボエーム≫、≪エヴゲーニ・オネーギン≫でも胸が痛くなるような歌唱と演技を見せています。
『Berliner Jazz-Operette...』は「Celebration 3」、ドイツの有名な女優(演劇、オペレッタ、ミュージカル、映画、テレビに出演)ダグマー・マンツェル(Dagmar Manzel)と、ワイマール共和国時代にベルリンで大ヒットした曲を紹介しています。
コスキーは5月27日、28日にもご紹介したザルツブルク・フェスティヴァル2019≪天国と地獄≫の演出を手がけました。
コスキーはこのストリーミングで司会進行役を務めていますが、彼の英語の語りで、5月28日にも紹介したとおり、とてもエネルギッシュ、彼のキャラクターの一端がわかるかと思います。
コスキーの祖父母はユダヤ人、ヨーロッパからオーストラリアに逃れたそうです。コスキーはメルボルン大学でピアノと音楽史を学びました。しかし『劇』を深く敬愛し、自身、俳優としてステージに立ったこともあるそうです。
ちなみにコスキーが最も敬愛する、そして最高だと思う『劇芸術』は日本の『文楽』だそうです。
さて、素晴らしいピアノの腕前を持つコスキーですが、人前でピアノを弾くことを避けてきました。しかし、コロナ時代、特別出演となりました。
ピアノが達者なオペラ演出家はほとんどいないと思います。演出家だけではありません。最近はピアノが弾けない指揮者もいます。
スコアも読めず、テキスト・ブックを片手に仕事をするオペラ演出家は少なくありません。スコアがきちんと読めるオペラ演出家はペーター・コンヴィチュニィなどわずかな人に限られます。
その中で、スコアも読め、ピアノも弾けるコスキーは稀有な存在です。
からっぽの劇場のステージで、Tシャツにジャージ(作業ズボン)、スニーカーでピアノを弾くオペラ演出家が司会・進行するリーダー・アーベントはなかなか経験できません。これもコロナ時代の副産物と言えるでしょう。
マンツェルがビデオの最後で「観客がいない劇場は哀しい。誰も笑ったりしない。反応がない・・・早く観客が劇場に戻ってきてほしい」と言っていました。
本当に心からそう願います。