美術:ヨーゼフ・カール・シュティーラーの家
ヨーゼフ・カール・シュティーラー(Joseph Karl Stieler、1781 - 1858)と聞いて、「あぁ、あの人ね」という人はそう多くはないかと思います。
ですが、クラシック音楽愛好家でなくても、下の絵を知っている人は多いでしょう。
そう、ベートーヴェンです。これはシュティーラーが1820年に書いたものです。手にしているのは《ミサ・ソレムニス》の楽譜。
以下の投稿をご覧ください。少しだけ説明しています。→
ミュンヘンのニュンフェンブルク城に行ったことのある人なら知っていると思いますが、ここには「美人画廊」があります。
この中に『傾城の美女』ならぬ『王を退位させた女』ローラ・モンテスの絵もあります。1848年、モンテスはバイエルン王ルートヴィヒ1世退位の原因になりました。
これは宮廷画家シュティーラーがルートヴィヒ1世の命を受けて、描いたものですが、ただ、シュティーラーは彼女を描くことは不承不承だったようです。
下記はシュティーラーが1826年に描いたルートヴィヒ1世(1786年8月25日〜1868年2月29日、バイエルン王在位1825年〜1848年)。
ルートヴィヒ1世は、超有名なノイシュヴァンシュタイン城などを建築させたルートヴィヒ2世(1845年8月25日 - 1886年6月13日)の祖父です。
ちなみにルートヴィヒ2世の誕生日は祖父であるルートヴィヒ1世と同じです。
顔も似ていると思いますが・・・
こちらはヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749〜1832)。ミュンヘンのシャック・コレクション(美術館)で撮りました。
シュティーラーはルートヴィヒ1世の命を受けて1828年に描きました。
つまりゲーテはこの時79歳。ちょっとビミョーではありませんか?つまりもう少しおじいさんでもよいはず。それにこの視線・・・何か言いたげです。
ちなみにゲーテが手にしているのはルートヴィヒ1世の詩。
他にもフンボルトなどシュティーラー作の肖像画はたくさんあります。
シュティーラーは19世紀前半の大スター肖像画家でした。
シュティーラーは人物に集中して背景にはほとんど何も描いていません。
また、人物の美点を最大限にひきだして描いたと言われています。
たとえば、ローラ・モンテスは写真と比べると、絵の方がはるかに美形です。
シュティーラーは1855年、バイエルンのテーガーンゼー、湖畔の別荘に引退します。写真技術の発達により、肖像画の価値が薄れていくのを予感したのかもしれませんが、目が弱ったのも大きな原因らしいです。
その別荘が残っており、1年半ほど前にレストランが開店しました(それ以前はカフェでした)。それが冒頭の写真「Pasquale」です。
ちなみにシュティーラーの息子カールは詩人として名をなしたので、冒頭の写真の建物の壁には右側に絵描きのヨーゼフ・カール、左側に詩人のカールの絵が描かれています。
ところでテーガーンゼー近辺は現在、有名人が居を構えていることでも有名です。
たとえば、
・フリートリヒ・メルツ(政治家、CDU、来年の連邦議会選挙での首相候補)
・ユリアン・ナーゲルスマン(サッカー、ナショナル・チーム監督)
・マヌエル・ノイヤー(サッカー)
・フィリップ・ラーム(サッカー)
・ウリ・へネス(バイエルン・ミュンヘン名誉会長)
などなど枚挙に暇がありません。
さて、話を戻すと、シュティーラー・ハウスのレストランに行きました。
テーガーンゼーでは有名なイタリア人が元の店をたたみ、ここに新規開店したそうです。以前からの顧客も含め、有名人たちが集まるそうです。
入ろうとすると、身なりのきちんとした人品いやしからぬ男性ばかり12人ほどでしょうか、長テーブルを囲んで会食をしているのが外から見えたので、少しだけ気が引けたのですが、そこはずうずうしく。後で聞くところによると、地元の名士の誕生日パーティーだったそうです。なるほど。
食事を終えて、お勘定の際にチップを多めに渡し、店の人に「ここシュティーラーの家でしたよね。何か残っていますか?」と尋ねたら、その人が実は店の主人で、「あ、今、この家の持ち主のDr.グライターさんがいるので、案内させます」というのです。遠慮なく見せてもらいました。ちなみに、一般公開はしていません。
店のある1階から2階に上がると、
すぐ広間があります。ここはアトリエだったそうです。
目が弱かったシュティーラーは壁をクリーム色にさせたそうで、それをいまだに踏襲しています。
美味しかったし、「また来ます!」と言って後にしました。
目の前に広がるテーガーンゼー。
上記写真の右側に見えるのはテーガーンゼー修道院。
以前ここで聴いたコンサートはこちら→
FOTO : (c)Kishi
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