Oper Frankfurt 26.12.23 オペラの記録:フランクフルト・オペラ、ヴェルディ《アイーダ》
12月26日、フランクフルト・オペラの新制作《アイーダ》を観ました。
プレミエ初日は12月3日で、この日は7回目の上演でした。
チケットは完売。
私は基本、プレミエ初日を観ることにしているのですが、12月3日は日本にいたので、やっとこの日に観ることができました。
フランクフルト・オペラは『最優秀オペラハウス』のみならず、他の部門でも最優秀に選ばれる、超優秀オペラ・カンパニーです。
劇場入口にも《アイーダ》と並んで『2023年最優秀オペラハウス』のポスターが。ちなみに色はウクライナ国旗の2色です。
ステージのプロセニアム上部にも「ウクライナ支持」が。
フォワイエの壁。
2022年は『オペラハウス』、『コーラス』、『上演』で最優秀に。
2023年は『オペラハウス』、『コーラス』、『発掘上演』、『世界初演』で最優秀に選ばれました。
フォワイエ。
オーケストラ・ピット。
プログラム。
この後、劇場提供の写真を掲載して、少し説明をしたいと思いますが、その前に、この写真・・・
ここまでのFOTO:(c)Kishi
さて、フランクフルト・オペラが《アイーダ》を新制作するのは実に42年ぶり。
1981年に新制作された《アイーダ》は大スキャンダル(演出はハンス・ノイエンフェルツ、指揮はミヒャエル・ギーレン)になりました。《アイーダ》を大掛かりな祝祭オペラとしてではなく、登場人物たちの心理的葛藤を描いたもので、ピラミッドや象、大掛かりなステージを想像していた人たちの期待を裏切ったのです。
しかし、この『フランクフルト《アイーダ》』はその後のレジーテアター、ムジークテアター史に金字塔を打ち立て、オペラ演出のお手本となりました。
その後の《アイーダ》演出ではグラーツ・オペラで新制作されたペーター・コンヴィチュニィのものが素晴らしい。美術装置はソファーひとつというこのプロダクションは2008年に日本で上演され、つい最近までライプツィヒ・オペラで上演されていたので、ご存知の方も多いかと思います。
以下はPIPERSのオペラ辞典に掲載された《アイーダ》第2幕第2場の写真。
上は1994年グラーツ・オペラでのコンヴィチュニィ演出、下は1963年ミラノ・スカラでのフランコ・ゼッフィレッリ演出。
さて、下記はフランクフルト・オペラのHPに出ているトレイラーです。
以下は劇場提供の写真(c)Barbara Aumüller
第1幕第1場、《清きアイーダ》を歌うラダメス。左はアムネリス。
第2幕第1場。アイーダとラダメスの恋に気がついたアムネリスは嫉妬と憎悪に燃えます。右はアムネリス、左はアイーダ。
ウィッグが並んでいるのは、アムネリスが色々なウィッグでヘアスタイルを楽しんでいるという意味でしょう。しかし、捕虜になった女たちは髪を切られ、全員が同じ髪型の奴隷にされています。つまり、このウィッグを被った人形の首は犠牲になった多くの女たちの首と見る方が近いと思います。
この写真のシーンの直前、アムネリスは彼女の髪をセット中に誤って髪を一部切ってしまった女奴隷に激怒して女奴隷の目をつぶします。その女奴隷を庇おうとした他の女奴隷に対してアムネリスはさらに激怒してナイフを振り上げ、刺殺します。アイーダは殺された女奴隷に駆け寄ります。
最近は、最後の幕でアムネリスが「反省」することが理由でしょうか、アムネリスに対し、割と『好意的に』演出することも多いようですが、この演出ではアムネリスの残酷さを徹底的に描いていました。
有名な第2幕第2場、凱旋シーン。上階にはアイーダ、アムネリス、王がいます。
捕虜たちは飲み物を与えられますが、飲み物の一つには毒が入っており、『ロシアン・ルーレット』となっていました。
戦争の勝者を讃える凱旋シーンは残酷極まりないものです。
最後のシーン。
アイーダと地下牢で鎖に繋がれたラダメス。
手前はアイーダの父アモナスロの死骸とアムネリス。このステージ中央部には水がはられていました。ナイル河の意味です。
アムネリスはこの場面で死んでいるわけではなく、ステージ右側の上部で最後、「Pace」(平和)と唱え、神官に後ろから注射を刺されて殺されます。残酷なアムネリスも、残酷な神官に殺されるわけです。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
カルチャー・コンサルティングについてのお尋ね、ご連絡は以下までどうぞ。
Kishi Culture & Media Consulting Companie UG
代表:来住 千保美(Chihomi Kishi)
ご興味のある方は以下の投稿をご覧ください。