美術:ラッヘル・ロイス展(ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク)3/3
絵のモデルはラッヘル・ロイスと夫、子供。
絵の全体は以下です。これも今回の特別展で見ることができます。
ロイスの夫ユリアン・ポール(1666〜1745)も画家でした。
この『一家の肖像』の絵には大きなメッセージがあります。
当時、女性はアカデミーで絵画の勉強をすることを許されていませんでした。
ロイスも例外ではありませんでした。ロイスは、女性であるというだけで、アカデミーで専門教育を受けて芸術家になる道を閉ざされたのです。
なぜ画家の勉強ができたかということについては後述します。
なお、ロイスは後年、画家組合(ギルド)に入ることはできました。
同時代の、ほかの優秀な女性の画家たちはギルドにも入れなかったのに、ロイスは例外的に許されました。
さて、頬杖をつく姿勢は「鬱」を表現する典型的なポーズです。
古代から「鬱」は天才、芸術家の特質とされました。
そして天才は男性だけで、女性に天才はいないとされたのです。
この絵で、ロイスは(女性なのに)天才であり、芸術家であることを示しています。
子供の名には彼女を庇護したヤン・ヴェレム選帝侯の名前が入っています。
この子が生まれた時、ヤン・ヴェレム選帝侯夫妻はデュッセルドルフからわざわざアムステルダムに赴き、名付け親になっています。
子供が手にしているのはヤン・ヴェレム選帝侯からのメダル。
ロイスは選帝侯からも認められていることを示しています。
夫は妻の肩に手をかけ、右後方の画架の絵にも手を伸ばして「ほら、どう!」というように、今の言葉で言うなら『ドヤ顔』です。
ロイスは優れた出自で、家族に恵まれ、才能に恵まれ、良き指導者に恵まれ、幸せな恋愛結婚をして10人の子供に恵まれ、素晴らしいパトロンがいて、そして晩年には驚くべき幸運を手にしました。
ここまでラッキーを集めた画家、芸術家は他に類を見ないように思います。
では、ここで画家ロイスの生涯を紹介しましょう。
ラッヘルの父親フレデリク 〜 ロシアのピョートル大帝
少女時代、絵画の勉強
結婚
妹アンナ
パトロン
自然科学と技術の発展 〜 顕微鏡と保存技術
オランダの外国貿易と植民地
晩年の大幸運
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【参考文献は主に『ラッヘル・ロイス展』のパンフレットなどです。またアルテ・ピナコテークで行われた有料の案内・説明コースに参加した時の情報も元にしています】
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