コンサートの記録:テオドール・クルレンツィス指揮ムジカ・エテルナ(11月20日、バーデン=バーデン)、クルレンツィスとウクライナ問題
11月18日、バーデン=バーデンのフェストシュピールハウスでクルレンツィス指揮ムジカエテルナのコンサートを聴きました。
フェストシュピールハウスは1998年4月開場、2500席を備えます。
バーデン駅の跡地を利用してつくられました。
現在のチケット売り場は当時の汽車のチケット売り場を踏襲しています。
フォワイエのバー。
客席。
客席部分の天井。
演奏終了後。
クルレンツィスはウクライナ問題で難しい立場に立たされています。
ゲルギエフと違い、クルレンツィスとプーチン大統領との親密さは公になってはいません。
しかし、クルレンツィスはウクライナ問題に関し、これまで、自分の意志と立場を明確にしていません。
侵攻直後の混乱状況ならまだしも、9カ月も経つのに沈黙を通していることに批判の声が高まっています。
さらに、クルレンツィスが作ったオーケストラ、合唱団ムジカエテルナの団員の一部がSNSでロシア政権支持を明確にしており、トップのクルレンツィスにもその責任が問われています。
クルレンツィスとムジカエテルナはロシアの銀行VTB Bankから多大な支援を受けていることは有名です。
この銀行は、EUの『ウクライナ問題に関する経済制裁リスト』に挙げられています。
こんな中、クルレンツィスは新オーケストラ『ユートピア』を設立しました。このオーケストラは28カ国から112人の音楽家で構成されており、ロシアとウクライナ出身者も含まれているとされています。
今年の夏前から活動を始めましたが、これについても両手を挙げて歓迎されている雰囲気ではありません。
これまで、ロシアのウクライナ侵攻以前に決定していたクルレンツィス指揮のコンサートは実施されることも多いのですが、キャンセルも続いています。
大きな決定は23年1月末にケルンのフィルハルモニーで予定されていたSWR響(南西ドイツ放送響)とのコンサートを、主催者のケルン・フィルハルモニーがキャンセルしたことです。発表文の中には「SWR響との共同作業は今後も継続する」という一文がありました。
つまり、ムジカエテルナではなく、クルレンツィス個人の責任を将来にわたって問うたことになるわけです。
さらにSWR響はクルレンツィスの首席指揮契約を21年、3年間延長したばかりでしたが、今年9月、それ以上契約せずに次期首席指揮者にフランソワ=クサフィエ・ロートを決定したことを発表しました。
このバーデン=バーデンでのコンサートも当初はワーグナー《トリスタンとイゾルデ》のコンチェルタンテ上演の予定でしたが、「歌手の都合がつかない」ことを理由にヴェルディ《レクイエム》に変更されました。これも必ずしも説得力のある理由とは言えないと思います。
プログラム。
FOTO:©️Kishi